2021年3月31日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | ||
西武 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 5 | 2 | |
日本ハム | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 7 | 1 |
【継投】
今井達也〜伊藤翔〜吉川光夫〜Hギャレット〜H平良海馬〜増田達至
【ホームラン】
呉念庭(1号)
観衆:12,083人、試合時間:3時間38分
開幕5戦目の先発マウンドに登ったのは今井達也投手だった。結果としては5イニングスで117球を投げて被安打2、奪三振8、四死球7、失点0という内容で、引き分けのため勝ち負けこそ付かなかったが、とりあえず5回無失点というある程度の結果は見せてくれた。
立ち上がりから二者連続で四球を出したり、5回には四死球で満塁のピンチを作ったりと、かなりヒヤヒヤさせられる内容ではあったが、今季初登板ということを考えれば、この試合はこれで良かったのではないだろうか。制球を気にするあまりにこじんまりとしたピッチング内容になってしまうよりは、三振か四球かという思い切った結果の方が、少なくとも今井投手の「らしさ」を出すことはできると思う。
球質としては、低めのボールはシュート回転が多く、高めのボールは僅かにスライダー回転しているようにも見えた。これはやはり今日が今井投手の開幕日ということで、力みがあったせいだろう。この力みのせいでリリースポイントが前後にずれてしまい、ストレートにわずかな横回転が加わっているように見えた。
しかし今井投手のこれまでの実績や経験値を踏まえて考えればまだ、開幕日に力むなという方が酷だろう。この試合ではとりあえず無失点に抑え、しかも5回で8奪三振を取ったという結果に自信を持てば良いと思う。6四球出してしまったことよりも、まずは8三振奪ったことを自信としていった方が、2戦目以降のピッチングにも繋がっていくはずだ。
ピッチングを見ていれば専門家じゃなくても分かるように、現状の今井投手にはまだ、制球力で勝負できるだけの制球力はない。そのため今は、例えば若き日の石井一久投手のように、制球力に安定感はないけど三振の奪り方を心得ている、という道をまずは歩いていけば良いのではないだろうか。
確かに球数は5イニングスで117球と非常に多くなり、どうしてもリリーバーに頼らざるを得なくなってしまうが、しかし先発五番手という今の立場を考えれば、無理をして常時完投を目指す必要はない。今はまだリリーバー達の力を借りながら、少しずつ完投できる投手に進化していけば良いのではないだろうか。今下手に完投を意識して、球数を減らすためにコースを狙い過ぎてしまうと、球威という魅力が大幅に低下してしまう。
今井投手のストレートは、中田翔選手でさえも空振りしてしまうほどの球威があるのだ。今はこの球威を殺してしまうようなアプローチは避けるべきだ。制球力が不安定ならば、それを逆手に取れば良い。
例えばかつて制球難でベイスターズの2軍で燻っていたデニー友利投手は、ライオンズに移籍してからはブルペンには欠かせない名セットアッパーとして活躍した。だがライオンズに来て急に制球力が安定したわけではない。当時の東尾監督は「ど真ん中を狙って投げていれば、自然と良いコースにボールが散らばってくれる」とデニー投手に話し、制球力の悪さを逆に利用する形でデニー投手を1軍の主戦投手へと成長させた。
今井投手もそれで良いのではないだろうか。制球力が安定している日は別として、この試合のように四球を連発してしまうような日は、その制球力の悪さを逆に利用してしまえば良い。森友哉捕手もそのあたりのことを意識しながらリードしていけば、苦しい状況でも必要以上に配球に悩まずに済むはずだ。
例えばスライダーの要求のしかたには2つのパターンがあり、どちらのパターンが良いのかはピッチャーによって異なる。1つ目はスライダーが曲がった先にキャッチャーミットを構える受け方、そして2つ目はスライダーが曲がるポイントにキャッチャーミットを構える受け方だ。今井投手のように制球がアバウトなピッチャーの場合は、後者の受け方に変えてあげることで四球を減らせるケースが多い。
つまり森捕手はキャッチャーミットをど真ん中に構えて、今井投手はスライダーの握りでストレートをど真ん中に決めるつもりで投げるのだ。そうすると程よく真ん中から外角低めにスライダーが決まりやすくなり、下手に始めから外角低めを意識して投げるよりも、バッターが手を出してくれやすいコースにスライダーを曲げていきやすくなる。
今井投手と森捕手は、あらかじめこの2つのスライダーの投げ方を相談しておくべきだろう。制球力が安定している時は、もちろん始めから外角低めを狙ってスライダーを投げ切れた方が配球の質を高めることはできる。だが制球力がどうにも安定しない時にこれをやっても無駄に四球を増やすばかりだ。今日の試合のように四球で走者を溜めても切り抜けられれば良いのだが、いつもこの試合のように行くとは限らない。
制球力が不安定の日の対処法としてこのような引き出しを持っておけば、今井投手も昨季のように独り相撲で試合を壊してしまうことも減るだろう。今井投手にはやはり、師と仰ぐダルビッシュ投手の次元へと少しでも近づいていってほしい。そしてそこを目指せるだけのポテンシャルは十分に持っているのだ。あとは経験を積み、もっと自分のボールに自信を持ち、上手くいかない日の対処法をあらかじめ増やしておくことができれば、先発の五番手に甘んじているようなレベルのピッチャーではない。
一週間後はメットライフドームにイーグルスを迎えての先発マウンドとなることが濃厚だ。今井投手としてもやはり、札幌ドームよりもメットライフドームで投げられた方がリラックスできるはずだし、良いピッチングを見せやすいはずだ。今日の内容は今日の内容として自信を持ち、まずはその自信を次戦に繋げられるように筆者は、今井投手にはさらなる期待を寄せていきたい。