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2021年12月13日公開

佐々木健投手にとっての2022年は雨降って地固まる年

佐々木健

球速よりも球質にこだわることで勝てるようになる佐々木健投手

社会人上がりの25歳ルーキーとしては、もう少し1軍で活躍したいところだったが、今季佐々木健投手は1軍でも2軍でも首脳陣を満足させるピッチングを見せることはできなかった。だが筆者は、投球フォームを少しだけマイナーチェンジさせれば1軍でも十分な戦力になれると見ている。

佐々木投手は肩肘にやや負荷がかかりそうな左腕の使い方をしている。恐らくは数年以内に肩か肘、もしくは両方を痛めてしまうのではないだろうか。現時点で肩肘に不安がなかったとしても、今後プロで投げ続けたり、球速がさらに上がった時には十分注意してもらいたい。

だが今回は佐々木投手の肩肘に関する詳しい話は横に置いておき、投球フォームそのものを見ていきたい。ストレートの最速は152km/hであるようだが、ストレートで押すというよりは、どちらかと言えば内海哲也投手や和田毅投手のように、配球のバランスで打者を翻弄していくタイプだと思う。

現時点では調子が良いと手がつけられないようなピッチングを見せたり、調子が良くないと簡単に走者を出してしまったりと、好不調の波が大きい。その原因はボールリリースと運動軸との距離が遠いことが影響している。だが、そのメカニクスに関する話をし出すと長くなるため、今回はこれについて話すのもやめておこうと思う。

実は佐々木投手は、途中までは打者からボールがすごく見にくいフォームをしている。だが腕を上げてボールを加速させていく段階までくると、そのボールがバッターに丸見えになってしまうのだ。ボールリリースと運動軸の距離が遠い投手の典型的な特徴なのだが、右腕のスクロールをもっと強くし、体軸を運動軸よりももっと右腕側に引き寄せられるようになると、佐々木投手のボールはリリース付近まで打者からは見えなくなるはずだ。

そうすれば140km/h程度のアヴェレージでも十分に勝てるピッチャーになれる。そう、まさに内海哲也投手や和田毅投手のように。佐々木投手には彼らのような息の長い選手になっていってもらいたい。

そのためにも現在のフォームでは力強さがまったく感じられないリーディングアーム(グラブをはめた腕)によるスクロールというモーションを、もっと力強くしていく必要がある。力強くとはつまり、力を使う割合をスローイングアームよりも、リーディングアームの方に多く割くということだ。これができるようになるだけでも、佐々木投手の初速と終速差は大幅に縮まり、球質も飛躍的に向上していくはずだ。

球速そのものをアップさせるためには左膝によるディッピングというモーションも直したいところなのだが、しかし佐々木投手の場合は球速よりも球質にこだわるべきだと思う。140km/h程度でも空振りを取れる伸びのあるストレートをまずは作っていって欲しい。

球速というのは重要そうで実はそれほど重要ではない。例えばアメリカには160km/hを投げられるピッチャーはいくらでもいるわけだが、そんな速いボールを投げられる投手でも四隅やコースを使えないピッチャーはまるで勝つことができない。

上述したように、佐々木投手の左腕の使い方は故障をしにくい使い方になっているわけではない。だからこそ怪我のリスクを高めないためにも球速アップよりも、球質アップを目指した方が良いと、筆者は動作改善の専門家としてそう考えている。

佐々木健投手は野球脳を鍛えることですぐにでも勝てるようになる

来季3年目の浜屋将太投手、2年目の佐々木健投手が1軍で勝てるピッチャーになっていくためには、配球を捕手任せにしない投手に進化していく必要がある。

現代の投手はほとんどの投手が捕手のサイン通りに投げることに努めている。時々は平良海馬投手のように自分を持っている投手もいるわけだが、自信を持って捕手のサインに首を振ることができる投手は少ない。

だが佐々木投手にしろ、浜屋投手にしろ、これから一段も二段もレベルアップしていくためには体だけではなく、野球脳をもっと鍛えていった方が良い。つまりまるでチェスをするかのように、4〜5球先に投げるボールまでイメージしながら次の1球を投げていくというスキルだ。ストレートで押し切れない投手の場合は、球質に合わせこのような野球脳をレベルアップさせることにより1軍で安定して勝てるようになる。

ルーキーイヤーだった今季は野球以外の面で注目を集めてしまった佐々木投手だったが、来季は野球の成績で注目を集められるようになってもらいたい。

投手のタイプ的にも、来季26歳という年齢的にも、今年と同じことをやっていても来年も同じ結果になってしまう。佐々木投手が来季1軍で勝てる投手になれるかどうかは、このオフの間に、今季佐々木投手の中に足りていなかったものをどれだけ補えるかという点にかかっている。

それはもちろん、ちびっ子ファンたちに示しをつけられる姿勢というものも含まれてくるだろう。そしてそれと合わせて必要なのが野球脳のレベルアップだ。

来季、佐々木投手のアヴェレージ(ストレートの平均速度)がいきなり150km/h以上になることは絶対にない。100%とは言わないが、99%ないと言うことはできるだろう。変化球にしても、来季いきなり新たなウィニングショットを投げられるようになる可能性だって高くはない。

球速や球種がそれほど変わらないのであれば、やはりすぐにでも変えられるのは野球脳だ。佐々木投手は今現在持っているスキルだけでも十分1軍で勝てる投手になれる。だがそのためには捕手のサイン通りに投げるだけではなく、自分自身でも配球をデザインしながら投げられるようになっていく必要がある。

そうすれば自分のボールにももっと責任を持つようになるだろう。例えば捕手のサイン通りにしっかり投げていれば、打たれたあとに「捕手のサイン通りに投げた」という言い訳をすることもできてしまう。しかし自分のボールに対し今まで以上に責任感を持てるようになれば、打たれた後に言い訳を考えるという発想自体が頭の中から消えていくだろう。

打たれたならば、次はどのような配球をすればその打者を抑えられるのか、ということを言い訳の代わりに考えられる投手になっていける、もし野球脳を今まで以上にレベルアップさせることができたならば。

そしてその方法を知っている百戦錬磨の兼任コーチがライオンズにはいる。同じサウスポーである内海投手から、佐々木投手はどんどんスキルを盗むべきだ。

佐々木投手にとっての2022年は、雨降って地固まる年

佐々木投手の今季は0勝0敗、防御率は8.31という冴えない数字で終わってしまった。ファームでも1勝2敗で5.23という数字で首脳陣の期待に応えることはできなかった。しかもシーズン途中には1ヵ月間の対外試合出場禁止処分も受けてしまった。

佐々木投手にとって来季は汚名返上となるシーズンだ。万が一でも来年も数字を上げられなければ、佐々木投手は隅田投手や佐藤投手という今年のドラフト1位2位コンビの踏み台とされてしまうだろう。そうならないためにも、佐々木投手には来季は是が非でも1軍でのローテーションに食い込んでいってもらいたい。

佐々木投手は野球脳を鍛えればすぐにでも勝てるようになれるし、スローイングアームの使い方を今後時間をかけてマイナーチェンジしていければ、10年15年と投げ続けられる息の長い投手になっていくこともできるだろう。

そして佐々木投手にはそうなっていけるだけの資質がすでに備わっている。実際のところドラフト1位指名だったとしても不思議はない投手だったと筆者は考えていた。それだけの資質があるのだから、佐々木投手にとっての来季は、まさに雨降って地固まるような年になってもらいたいと筆者は願っているのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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