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2021年12月12日公開

期待したいのは内海哲也兼任コーチと先発左腕4人衆のシナジー

期待したいのは内海哲也兼任コーチと先発左腕4人衆のシナジー

ローテーションに左腕が不可欠な理由

菊池雄星投手がメジャーリーグに移籍して以来、ライオンズの先発左腕不足は深刻だ。今季は浜屋将太投手、佐々木健投手、ダーモディ投手内海哲也投手らに期待が寄せられていたが、この4人で今季挙げた勝利は僅かに2勝だった。

浜屋投手と内海投手が1勝ずつだったわけだが、大ベテランの内海投手を除けば、3人で僅かに1勝だったということが最下位転落の一つの大きな原因だったと言えるだろう。

ではなぜ先発ローテーションに左腕が必要なのか?まず単純に先発左腕の絶対数が少ないため、左腕を打つ練習がしにくく、それにより右投手よりは打ちにくいという考え方がある。

もう一点は、ローテーションに左腕を挟むことにより、相手打線に目を慣れさせないという効果がある。今季ライオンズで先発した左腕で、最も先発登板が多かったのは浜屋投手の8試合だった。ちなみに一番多いのは高橋光成投手の26試合だ。

左腕が先発する試合がこれだけ少ないということは、ローテーションはほとんど右投手ばかりで回ることになる。相手チームからするとこの状況はとても嬉しい。3連戦の先発が3人とも右投手であれば、打者は右投手に対ししっかりと目を慣らすことができる。すると1戦目よりも2戦目、2戦目よりも3戦目で対応しやすくなり、一般的に最も力が劣る三番手投手が相手打線の餌食になりやすいし、この状況がチーム防御率の向上を妨げている。

しかしここで3連戦の2戦目に左腕が入ってくると、相手打線は右投手にも左投手にも目を慣らすことができなくなる。すると一番手よりは多少力が劣る二番手、三番手の投手であっても、試合を組み立てやすくなる。このような効果を得るためにも、ローテーションに左腕を2人入れることが理想なのだ。つまり表ローテに1人、裏ローテにもう1人だ。

ちなみにこれはサブマリンでも効果がある。左腕に加え與座海人投手がローテーションに食い込むことができれば、これも打者に目を慣れさせないためには効果が大きい。例えば黄金時代のローテーションに左腕の工藤公康投手と、アンダーハンドスローの松沼博久投手がいたように。

左腕を集めるだけではなく、左腕を育てる環境も整った

今季のドラフト以外での新戦力の補強に関しては、どちらかと言えば失敗だった。ダーモディ投手、吉川光夫投手は共に戦力になることができなかった。途中日本ハムから加入した公文克彦投手はリリーバーとしてまずまずの数字を残してくれたが、ライオンズでは最後の2ヵ月で14試合にしか投げられなかった。だが11回1/3を投げて失点は僅かに1点とナイスリリーフを見せてくれたため、来季には大きな期待を寄せられそうだ。小川龍也投手が意外と早く戦力外になったのも、この公文投手の活躍が無関係ではなかったはずだ。

さて、話を先発左腕に戻すと、このオフはまずドラフトで隅田知一郎投手と佐藤隼輔投手という二人の先発タイプの左腕を獲得した。そしてさらにはハングリー精神に燃えたぎるエンス投手も獲得した。兼任コーチの内海投手を除けば、浜屋投手と佐々木投手に加え、5人の先発ができる左腕が集まったことになる。

ドラフトで隅田投手と佐藤投手を指名したことにより、浜屋投手と佐々木投手の尻にも火が着いたのではないだろうか。この二人の更なる飛躍も来季は期待できそうな気がする。

しかしもちろん、ただ先発左腕を5人集めるだけでは仕方がない。彼らを如何にして競争させ、如何にして伸ばしていくかが課題だ。そこで登場するのが内海哲也兼任コーチというわけだ。内海兼任コーチは来季は1・2軍の垣根なく、臨機応変に若手投手たちの指導に当たるようだ。

渡辺久信GMの手腕は本当に鮮やかだ。補強の成否は当然出てくるとしても、補強の仕方が理に適っていて、ファンが見ていても納得できる補強策を当ててくることが多い。今回も左腕を集めるだけではなく、その左腕を上手く育て上げる状況まで作るという念の入れようだった。

期待したいのは内海兼任コーチと左腕四人衆とのシナジー

ところで、筆者には一つ解せないことがある。それは清川栄治コーチの存在だ。もちろん左腕を育成したいという意味も込めての清川コーチの続投なのだろうが、これまで清川コーチのコーチングスキルによる実績が、ライオンズファンまでほとんど届いて来ないのだ。もちろん筆者が気付いていないだけなのかもしれないが、監督コーチを育成しようとしている今、ファームに60歳の清川コーチを配置し続ける必要性があまり感じられない。

清川コーチは以前、なかなか開花しない中崎雄太投手を大きなクロスステップによるサイドハンドスローに転向させたのだが、その後中崎投手は肩か肘を悪化させてしまうという出来事があった。この一件以来、なぜ清川コーチが2014年以降ライオンズでコーチを続けているのかが筆者にはどうしても解せないのだ。

恐らくは筆者が知らない何かコーチとしての功績があるのだろうが、もしどなたかご存知であればそれを筆者にご指南にただければ幸いです。

清川コーチよりも若手を育てるのに適任のコーチは他にもいると思う。例えば菊池雄星投手を開花させた理論派の土肥義弘コーチなどは、選手に寄り添って対話をしながらコーチングできる有能なコーチだったと思う。

だが土肥コーチに関しては2020年、ライオンズとパートナーシップを結んでいるニューヨークメッツに編成部門スタッフとして研修派遣されたところを見ると、今後は渡辺久信GMの補佐的存在になっていくのかもしれない。確かな理論を持つ良いコーチだと思っていただけに、筆者個人としてはもう少し土肥コーチにはユニフォームを着ていてもらいたかった。

だが来季は内海哲也兼任コーチの存在がある。内海兼任コーチには、もちろんまずは選手として戦力になってもらいたいわけだが、しかし百戦錬磨の経験値をライオンズの若き左腕たちにどんどん注入してもらいたいというのも本音だ。来季は内海兼任コーチの選手・コーチとしての活躍により、ライオンズの若き先発左腕たちは大いに飛躍していくだろう。

近年は左腕不足に苦しみ続けたライオンズだが、来季は逆に他球団も羨む左腕王国になっているのではないだろうか。そしてそれを可能にするのは浜屋投手・佐々木投手・隅田投手・佐藤投手という若き先発左腕4人衆と、内海哲也兼任コーチとのシナジー効果に筆者は大きな期待を寄せている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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