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2023年12月 3日公開

安樂智大投手投手のパワハラ事件によって崩壊してしまった山川穂高選手の思惑

FA宣言すれば獲得球団が現れると自信を持っていたであろう山川穂高選手

山川穂高

一週間ほど前、イーグルスの安樂智大投手によるパワハラが一斉に報じられた。これにより楽天球団は、来季は安樂投手とは契約を結ばないという決断を下した。この事件によりイーグルスが長年優勝から遠ざかっている理由は分かったわけだが、ライオンズとしてもこれは対岸の火事とは言い切れない。

ライオンズ側では山川穂高選手による女性に対する性暴行事件があった。この事件は起訴こそされなかったものの、示談されていないという現状において、まだ解決したとは言えない状況だ。

その状況であるにも関わらず山川選手はFA宣言をしたわけだが、これは西武球団にとっては渡りに船だったとも言える。起訴されていないのに山川選手を簡単に解雇してしまった場合、一部の人間がかなり騒ぎ立てることが予想された。

そのため西武球団は今オフ、無期限公式戦出場禁止処分を課している山川選手に対し、年俸大幅ダウンの1年契約を提示した。一部では複数年契約の提示だったとも報じられているが、公式な発表はないため真実は分からない。だが少なくとも来季の契約を提示したことに間違いはない。

西武球団としては、球団側から山川選手を無情にリリースすることは避け、その代わり「この金額に不満でしたらどうぞFAで出ていってください」という無言のメッセージを送った。これにより西武球団が悪者にされる心配はなくなったわけだが、山川選手自身も今回事件を起こしたとは言え、FA宣言すればどこかが獲得してくれるというある程度の自信はあったはずだ。

FA宣言は、自信がなければなかなかできるものではない。メジャーのように契約が満了すれば自動的にFAとなるシステムは日本にはないため、FA移籍そのものが活発ではない。そのためFA宣言をしても獲得球団が現れない可能性もある。数年前に広島カープからFA宣言したものの、どこも獲得してくれず、最終的にはテスト入団としてライオンズ入りした木村昇吾選手のように。

今回、山川選手もこの木村選手のケースに似た結果になるのではないかと筆者は考えている。

山川選手に対する大義名分が通用しなくなったソフトバンク球団

山川選手がFA宣言した直後に飛び出てきたニュースが安樂智大投手投手のパワハラで、安樂投手は来季無所属になることがすでに確定している。このニュースは山川選手にとって大きなマイナスとなるだろう。

まず事実として楽天球団は、チームメイトに対しパワハラを行なった安樂投手を、法的に有罪になっていないにも関わらず自由契約とした。一方山川選手も起訴はされなかったが問題は解決していない状態でFA宣言した。

山川選手としては何らかの繋がりから、最終的にはソフトバンク球団などが手を差し伸べてくれるという情報を得ていたはずだ。もしそうじゃなければこの状況でFA宣言などできるはずはない。

だがその状況は安樂投手のニュースによって悪化してしまう。世間体上、楽天球団が安樂投手を自由契約にしたのに、ソフトバンク球団が山川選手に対し大金を払うということになれば、ソフトバンク球団はかなり世間から叩かれることになるだろう。

安樂投手のニュースがなければ、もしかしたらソフトバンク球団も「本人もすごく反省しているようだし、手を差し伸べてあげよう」というニュアンスで契約をする腹づもりだったかもしれない。だが安樂投手のニュースにより、ソフトバンク球団は山川選手を非常に獲得しにくくなってしまった。

つまり安樂投手のパワハラニュースは、山川選手にとってもソフトバンク球団にとっても大きな誤算だったと言える。そして安樂投手の来季無所属が決まってしまったことから、もし山川選手が来季12球団のユニフォームを着てプレーした場合、世間は「なんで山川は良くて安樂はダメなんだ?!」と不審の目を向けるようになるだろう。

ソフトバンク球団としては、反省しているけど居場所を失ってしまった山川選手にチャンスを与える、という大義名分があってこその山川選手の獲得になるはずが、その大義名分が通用しなくなった今、ソフトバンク球団が山川選手を獲得する可能性は大幅に下がったと言わざるを得ない。

山川穂高選手に必要なのはFA移籍ではなく、被害者からの赦し

今山川選手は、きっと苦虫を噛み潰したような顔で安樂投手のニュースを見ているはずだ。ちなみに山川選手を獲得する可能性がある球団としてはソフトバンクと中日の2球団が挙がっていたわけだが、中日は中田翔選手を獲得したため、これで山川選手を獲得する可能性はほぼなくなった。

するとソフトバンク一択になるわけだが、しかし来季から指揮を執る小久保裕紀新監督は、チームに対し美しさと美意識を求めている。新監督が美意識と高らかに宣言したのに山川選手を獲得した場合、これは整合性に欠けることとなり、小久保監督の求心力が低下してしまう恐れもあるだろう。

そうならないように「反省している山川選手に手を差し伸べる」という演出が必要だったわけだが、安樂投手のニュースによって、すべては泡沫となってしまった。

山川選手自身はもしかしたら「社会的制裁は受けた」とすでに自分を許しているのかもしれない。だが世間はそうは見ないだろう。第一、傷を負わせた相手女性の赦しさえもまだ得ていない山川選手だ。自分を許すにはまだ早すぎる。

どこかが獲得してくれるというある程度の確信があったからこそ山川選手はFA宣言したのだろうが、山川選手の思惑は、安樂投手のニュースによってすべて崩壊してしまった。

ちなみに西武球団は山川選手に対し、球団の弁護士と相談しながら強く示談を勧めていた。示談金は1億円とも報道されていたが、山川選手はこの西武球団の提案を完全に拒否し、球団とは無関係の弁護士を雇って勝手に行動を起こしていった。

西武球団としては「示談をするなら示談金の一部を助けてあげても良い」という気持ちもあったと思う。だが山川選手自身に示談をするという選択肢はなかった。これにより問題はさらに長期化し、刑事事件として起訴はされなかったものの、まだまだ民事訴訟を起こされる可能性が十分にあり、民事訴訟ともなれば問題解決まではさらに長引くことになってしまう。

安樂投手のニュースを目にし、山川選手はきっと大きく後悔しているはずだ。「あの時球団のアドバイスに従って示談しておくべきだった」と。それくらい安樂投手のニュースは、山川選手にとって影響が大きいニュースとなった。

中日は中田選手を獲得し、ソフトバンクも山川選手を獲りにくくなった。ましてや西武球団はすでに数億円の年俸を払って助っ人強打者を獲得しようとしており、もはや山川選手に戻る場所などない。

来季は安樂投手だけではなく、山川選手も無所属ということになるのではないかと筆者は今考えている。将来的にNPBと再度契約できたとしても、来季無所属となっても文句は言えないことをしているのだから、山川選手も来季は無所属となり、まずは被害者女性から赦しを得て、その後で2025年以降のNPB復帰を目指すのが倫理的順番なのではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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