2023年12月 2日公開
やはり理想としては近い将来、渡部健人選手が四番サードに定着するのがベストだと思う。抜群の長打力を持っているし、何よりもドラフト1位指名を受けている期待値の高さがある。
渡部選手はバッティングそのものにも普段の練習態度にも素直さが見られるため、1軍でしっかりと経験を積むことができれば、ちゃんと安定した成績を残せるようになるだろう。だがそのためにはまずは怪我しない体づくりを徹底して行く必要がある。
渡部選手は今季3年目を終えたわけだが、ここまでは毎年のように怪我をしている。選手生命を揺るがすほどの怪我ではないが、特に下半身に小さな怪我を抱えることが多く、今季も好調の中怪我で離脱し、復帰後はフォームをやや崩し調子を取り戻せないままシーズンを終えてしまっている。
さて、渡部選手のコメントで非常に気になったのが、ウェートトレーニングを増やして怪我を予防するという言葉だ。ウェートトレーニングは確かに重要なトレーニングではあるが、しかし怪我予防になるかと言えばそんなことはない。
極端な話、柔軟性が乏しければいくら筋肉を増やしても怪我はするし、筋肉を増やしても投げ方が悪ければ肩肘を痛めてしまう。つまり怪我をしないために重要なのは筋肉を増やす前に、まずは柔軟性を含めた筋肉のコンディションを改善し、なおかつ怪我のリスクを高めずにパフォーマンスが上がるフォームの再現性を高めることだ。
そして筋肉の質、体全体のコンディションを改善させるためにまず必要なのは食生活の改善だ。球団が用意してくれる食事のみであれば安心して食べていいと思うのだが、問題は外食時や、部屋に買い込んだ食品だ。
例えばライオンズには以前、坂田遼選手という期待のスラッガーがいたのだが、大好物のペヤングソース焼きそばを食べすぎたことにより怪我をしやすい体になってしまい、本当に毎年のように怪我に苦しみそのままユニフォームを脱いで行った。
プロ野球選手は自分の体が商売道具となるわけだから、やはりそれを作って行く食べ物には十分注意が必要だろう。もちろんたまにスナックやジャンクフードを食べる程度ならまったく問題ないわけだが、もし日常的に週に何回も食べてしまったとしたら、栄養学的には確実に体は強さを失ってしまう。
渡部選手が普段どのような食生活をしているのかは分からないが、しかし3年間ですでに複数回怪我をしていることを考えると、食生活から見直して行く余地は十分あるように思える。
ウェイトトレーニングで作った筋肉は、ある程度であれば怪我を防ぐためのプロテクターとして使うこともできる。例えば肘周辺の筋肉を鍛えておけば、肘の靭帯をある程度守ることができるのは事実だ。
だがそれはあくまでも短期的な話であり、長期的な話になった場合、それだけで怪我を防ぐことは非常に難しい。特にプロ野球選手のように毎日のように試合に出続ける場合はなおさらで、プレーを続ければ続けるほど疲労などの要素により、筋肉のプロテクターが上手く機能しなくなる。
だからこそ怪我予防を目的としたウェイトトレーニングは良い考えではないと筆者は常々クライアントである選手たちには伝えている。ちなみに怪我予防になるウェイトトレーニングもある。厳密にはウェイトトレーニングとは言えないのだが、初動負荷トレーニングというのは筋肉の柔軟性を高めながら質の良い筋肉を作っていけるため、これに関しては十分怪我予防になると断言できる。
初動負荷トレーニングというのは、イチロー選手が取り組んでいるトレーニングとして有名になったメソッドなのだが、渡部選手も怪我を防ぎパフォーマンスをアップさせるためにも、一般的なウェイトトレーニングだけではなく、初動負荷トレーニングにも取り組んでいくと良いだろう。
できれば来季からでもすぐに、渡部選手は四番を打てるようになる必要がある。これだけパワーがある選手が一年間四番に座り続けることができれば、相手投手に対して大きなプレッシャーをかけながら攻撃していけるようになる。
来季の理想的な打順としては、三番蛭間拓哉選手(左)、四番渡部健人選手(右)、五番新外国人選手(左)という並びではないだろうか。ちなみに新外国人選手候補としては現在、抜群の長打力を誇る左打ちの外野手、コルデロ選手の名前が挙がっている。
このような左右ジグザグのクリーンナップを組み、相手投手が投げにくさを感じる並びを機能させるためにも、まずは渡部健人選手が怪我することなく四番に座り続ける必要がある。
ちなみに2023年、怪我をするまでは26試合に出場して打率.275、本塁打4、打点14というそこそこ良い成績を残していた。このように渡部選手は、怪我さえなければ1軍でやっていけるだけの力を付け始めている。だからこそ渡部選手自身も自覚しているように、今オフは怪我をしない体づくりを徹底していく必要がある。
ライオンズは今年のドラフトでは7人中6人が投手だったわけだが、しかしだからと言って野手陣が安定しているわけではないし、野手陣が安心できるわけでもない。
ライオンズには下位指名の野手を上手く育成できる土壌がある。例えば今年はドラフト6位で、レオのガリバーこと村田怜音選手という内野手が入団したわけだが、万が一でも渡部選手がのんびりやっていた場合、あっという間にこのガリバーに追い抜かれてしまうだろう。
村田選手がどれだけ怪我に耐性を持っているかはまだ未知数であるわけだが、身長196cm、体重110kg、靴30cmという規格外の体の大きさは、プロの水に慣れたらまるで外国人スラッガーのような存在になって行くだろう。
ちなみに村田選手は196cmで110kgだが、渡部選手は176cmで115kgだ。身長は20cmも渡部選手の方が低いのに、体重は渡部選手の方が5kgも重い。
この重さが下半身に大きな負荷をかけていることは間違いないため、渡部選手は少し体重を落とすべきだと思う。もちろんほっそりするまで絞る必要はないわけだが、115kgを100kg程度まで絞ってもスケール感はほとんど変わらないはずだ。そして15kg絞ることができれば動きがよりシャープになるだけではなく、確実に下半身の細かい怪我を防げるようになるだろう。
渡部選手は来年は26歳になる。一般的にはプロ野球の世界では27〜30歳までが全盛期と言われるため、今後渡部選手が打撃主要タイトルを獲得していくためには、来季は非常に重要なシーズンとなってくる。
もし来季怪我をせず、一年間フルで戦うことにより自信を深めることができたなら、渡部選手はきっと近い将来ホームランキングとしてチームを優勝に導くことができる選手になれるだろう。そのためにも重要なのが怪我をしない体づくりであると再度書き、このコラムを締めたいと思う。