2021年1月11日公開
今年の育成ドラフト3位の宮本ジョセフ拳外野手が元気いっぱいだ。ドラフト1位の渡部健人選手がラントレーニングに苦戦している中、同学年であるジョセフ選手は渡部選手を大声で激励する余裕まで見せてくれた。
同学年と言ってもドラフト1位と育成ドラフト3位とでは、その立場も待遇もまったく異なる。そして何よりも3桁の背番号では1軍の試合に出場することはできない。まずは支配下登録を目指さなければならず、同学年とは言え、渡部選手とはスタートラインがまったく異なる。
それでも持ち前の明るさでルーキーの中でも際立って来ているジョセフ選手は、育成の星になりうる可能性を秘めている。ガーナと日本のミクスド(mixed)というアイデンティティも、そのポテンシャルを無限に拡大してくれる要素になるかもしれない。
ちなみに余談ではあるが、日本で使われる「ハーフ」という言葉は、ミクスドの方達はあまり好まない。「半人前」と言われているようだ、というのがその理由なのだが、筆者もここではハーフという言葉は用いず、国際スタンダードに倣いミクスドという言葉を使いたい。
ジョセフ選手のグラブにはガーナと日本の国旗が刺繍されている。これはもちろんジョセフ選手のアイデンティティに対する誇りの象徴だ。だが公式戦ではこのグラブは確か使えないのではないだろうか。
基本的にはナショナルチーム(日本代表)でプレーする時以外は、試合で日の丸を使うことは許されていないはずだ。ファームの試合ではどうなのかは分からないが、アマチュアでも正式な試合ではこのルールが適用されるはずなので、もしかしたらこのグラブは練習専用なのかもしれない。
ジョセフ選手は50mを5.9秒で走る脚力を持っているのだが、この脚力で守備力が向上し打率も上がっていけば、1軍の大きな戦力になるはずだ。しかし実際にはまだまだかなり荒削りで、守備の逆シングルハンドキャッチも足の位置がまだ逆で、クロスして捕ってしまっている。
守備でも打撃でもこのような荒さが少しずつ減っていけば、支配下選手登録される日は遠くはないだろう。個人的にはドラフト1位の渡部選手が霞むような活躍をして、渡部選手よりも先に1軍でプレーするようになってもらいたい。
ジョセフ選手は以前は足は速くなかったようなのだが、腸腰筋群を鍛えるようになってからどんどん速くなっていったらしい。これは非常に理に適った結果であり、アスリートとして腸腰筋群を鍛えることは必須だと言える。
ちなみにこれは腸腰筋という筋肉があるわけではなく、大腰筋・小腰筋・腸骨筋などを総称して腸腰筋群と呼ぶ。
この腸腰筋群は運動能力の高さに直結し、アフリカ系の人たちは生まれながらに強く、そのため陸上のスプリントではアフリカ系のメダリストが多い。そういう意味でもガーナの血を引くジョセフ選手のポテンシャルは計り知れない。
今はまだまだ荒削りの打撃や守備をコーチたちが理論的指導によって向上させてあげられれば、ジョセフ選手を1軍のグラウンドで見る日もそう遠くはないだろう。
今はまだルーキーの中では渡部健人選手ばかりが注目を集めているが、しかし筆者は今年のルーキーたちの中では、このジョセフ選手に出世頭になってもらいたいと大きな期待を寄せている。