2021年11月11日公開
今年2021年、埼玉西武ライオンズは1979年以来の最下位に沈んだ。ファンとしては最下位に沈んだことばかりに目がいってしまうが、しかし1980年〜2020年まで一度も最下位に転落することがなかったというのは、これは本当に素晴らしい戦績だと思う。
今季の最下位という成績は悲嘆する必要はないだろう。敗因が明確だったし、これまでウィークポイントだった面の底上げも着実に進んできている。チーム防御率はここ数年変わらずリーグ最低数値だったわけだが、涌井秀章投手、岸孝之投手、菊池雄星投手、野上亮磨投手ら、エース級やローテーション投手を次々と失ってきたのだから決して不思議な数字ではない。これは渡辺久信GMの頭にもあったはずだ。
現状のライオンズのウィークポイントといえば先発投手、先発左腕、4番打者、外国人選手というところだろう。先発投手陣に関しては年々成長を感じさせてくれているのが髙橋光成投手、松本航投手、今井達也投手の若き三本柱だ。彼らの全盛期はまだまだこれからであるため、先発投手陣に関してはこの3人を軸に今後も着実に底上げされていくだろう。
しかしその中でなかなか解消できなかったのが先発左腕不足だった。理想を言えば表ローテと裏ローテに一人ずつ左腕を入れられるのが望ましい。今年のドラフトでは左腕を3人指名したし、恐らくは外国人投手からも先発左腕を補強していくことになろうだろう。サウスポーの頭数に関しては揃ってきているため、あとは内海哲也兼任コーチらのサポートにより、彼らがマウンドで実際に好成績を挙げていけるようになれば、他の先発右腕との相乗効果も高まっていくだろう。
一方目下の最大のウィークポイントは4番打者だ。近年は毎年のように山川穂高選手が不調により4番の座を剥奪され、代役4番を大ベテランである中村剛也選手が務めている。しかし中村選手に4番を任せているようではダメだ。中村選手と栗山巧選手には下位打線で楽に打ってもらう必要がある。
年齢的にも全試合出場は難しい中村・栗山両選手だが、この二人にクリーンナップを任せなければならないとなると、このベテラン二人を休ませにくくなってしまう。そんな状況であっても辻発彦監督は二人と休ませながら起用していった。だがその弊害としてクリーンナップを固定できな戦いを強いられている。
もちろん山川選手が安定して4番打者としての仕事を果たしてくれれば良いのだが、しかしこう何年も不振が続いてしまうと、「4番山川」ありきでオーダーを考えることは難しい。そうなるとやはり4番を打てる右の大砲を助っ人に任せるというのが現状ではベターだと言える。アレックス・カブレラ選手のような助っ人を見つけられれば最高だが、しかしそこまで行かなくても、打率3割前後で本塁打30〜40本、そしてとにかく得点圏打率が高い外国人選手を発掘してくる必要がある。
ライオンズはこのオフから、フェルナンド・セギノール氏を渉外担当として招聘した。セギノール氏はオリックス、日本ハム、楽天で活躍した名助っ人で、日本野球を熟知している。そしてセギノール氏は北米南米共にパイプを持っているようで、来季4番を任せられる外国人選手を発掘してもらうには最適の人物であるようだ。
近年のライオンズはメヒア選手がホームラン王に輝いた2014年以降、外国人打者の目立った活躍がない。だが山川選手の不振が続いている状況もあり、来季は4番を任せられる外国人選手の獲得は最重要事項の1つだと言える。そういう意味でも筆者はセギノール氏の手腕に大きな期待を抱いている。
さて、ライオンズの弱点としてもう一点、1番打者を固定できなかったというのも大きかったのだが、しかし来季は若林楽人選手が怪我から戻ってくるため、この弱点に関しては解消される見込みが立っている。
本来であれば金子侑司選手に期待したいところではあるが、金子選手も幾度となくチャンスを貰いながら、なかなかバッティングで貢献できないというシーズンを続けている。金子選手に関しても山川選手同様、「1番金子」ありきで考えることはできない。そう考えると年齢的にも将来的にも、今季は怪我をするまではハイペースで盗塁を決めた若林選手を次世代の1番打者として育成していくことがチームにとってはベストだろう。
チーム力を安定させるためにはエース、正捕手、4番打者、センターラインの安定感が不可欠だ。エースと正捕手に関しては来季も問題はないだろう。4番打者に関しては外国人に期待し、センターラインに関しても若林選手が怪我から戻り、外崎修汰選手もセカンドとして一年間プレーし続けられれば、源田壮亮主将も含めてかなり安定させられるはずだ。
こうして改めて今季のライオンズを振り返ってみると、目下最大の穴は4番打者だと言える。セギノール氏が素晴らしい助っ人を連れてきてくれれば、山川選手にも火が付き、相乗効果が生まれるかもしれない。そういう意味でもセギノール氏の手腕には大きな期待を寄せたい。そして一年後は、セギノール氏の招聘こそが今オフ最高の補強だったと言えるようになっていれば良いと、筆者は今思うのである。