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2023年8月 2日公開

来季のマキノン選手はかつてのバークレオ選手のような爆発力を秘めている

ライオンズの状況をしっかり理解しているマキノン選手

埼玉西武ライオンズ・マキノン選手

今季、ライオンズは本当に良い外国人選手を獲得したと思う。デビッド・マキノン選手の2023年8月2日時点での成績は打率.264、本塁打11、打点36という数字に留まっている。もちろんこの数字は助っ人選手としては非常に物足りない。だが筆者は、マキノン選手とは来季以降も契約を結ぶべきだと考えている。

まず近年のライオンズの助っ人選手全般に言えることではあるのだが、人柄がとても良い。日本の野球を見下しているような選手は一人もいない。もちろんマキノン選手、ペイトン選手、エンス投手ら、現在ライオンズに所属しているすべての外国人選手が同様だ。

日本を見下している選手の場合、仮に数字を残していたとしてもチーム内で孤立してしまい、それによってメンタルのコンディションが徐々に低下していき、ホームシックのような状態になってしまい、成績が下降線を辿ってしまうケースがライオンズだけではなく、他球団でも過去幾度もあった。

そういう意味ではマキノン選手はすっかりライオンズに馴染んでいるし、チームの状況もしっかりと理解しているようだ。象徴的だったのは、ある試合で活躍した後に受けたインタビューでのマキノン選手の言葉だった。

すでに山川事件が公になったあとだったのだが、マキノン選手は「ライオンズの四番はナカムラさんだから、彼が戻ってくるまで何とかみんなで頑張る」という趣旨のコメントを残している。もちろん通訳の方から情報を得てのことだとは思うが、チーム状況を的確に把握し、それに合ったコメントを即座に出せるというのはさすがだと思う。

かつてのバークレオ選手と被るマキノン選手のひたむきさ

マキノン選手自身、自らを長距離バッターだとは見做していない。中距離バッターとして走者を返すクラッチヒッターだと自認している。しかし、だからと言ってホームランを打てないわけではない。事実ライオンズでもここまで91試合で11本塁打をマークしている。

さらにマキノン選手は昨季はマイナーリーグでの75試合で15本塁打をマークしており、昨季の長打率は.585だった。ちなみに2008年に46本のホームランを打った時の中村剛也選手の長打率は.569だった。

もちろん試合数にしろホームラン数にしろ、2008年の中村選手と昨年のマキノン選手を純粋に比較することはできないわけだが、しかしハマったらしっかりと長打を打っていくこともできるのがマキノン選手だ。

筆者のイメージの中では、マキノン選手はかつてライオンズで大活躍したバークレオ選手によく似ている。バークレオ選手はライオンズ入りした1年目は外国人選手枠の都合で1軍入りすることはできなかったが、2年目の1988年には38本塁打を記録している。

打席の左右の違いはあれど、長身で細身、そして端正なマスクというのは、筆者の中ではマキノン選手はバークレオ選手とよく被る。ちなみにバークレオ選手のマイナーリーグ時代の成績は、マキノン選手に似通っていた。ホームランはだいたい15本前後程度で、打率は.280前後が多かった。

バークレオ選手も勉強熱心で、ライオンズ1年目のシーズンは日本の投手の配球をよく勉強していたという。そして一家揃って来日した姿は、家族みんなで日本で成功するんだという意欲を感じさせてくれた。

そしてマキノン選手も勉強熱心で、配球はもちろん、自らの打撃フォームも日本の野球に合わせて少しずつマイナーチェンジを重ねている。その結果一時はなかなかヒットが出ないこともあったのだが、暑くなって来るとどんどん調子を上げて来て、7月の月間打率は.319、得点圏打率も.350と非常に勝負強いバッティングを見せてくれている。

今季しっかりと日本の野球に慣れていければ、マキノン選手は来季、バークレオ選手のように大化けする可能性を秘めていると筆者は感じている。そしてさらに、爆発が1年で終わってしまったバークレオ選手とは異なり、数年間活躍し続けてくれるのではないだろうかとも考えている。

そういう意味でもマキノン選手には今季ここから始まる夏攻勢だけではなく、来季以降にも大きな期待を寄せていきたい。

マキノン選手爆発の鍵は右投手のアウトロー対策

来季以降、マキノン選手が爆発するために必要なのが右投手のアウトロー対策だ。マキノン選手は左投手は.354と非常に良く打っているのだが、右投手が相手だとその数字が.236まで低下してしまう。

現状ここまでのマキノン選手のバッティングを見ていくと、やはりまずインサイドを見せられ、最後は日本人投手特有の、抜群の制球力でアウトローに逃げていく変化球で打ち取られているケースが多い。そして長身のマキノン選手の場合リーチが長いため、外角低めにも容易にバットが届いてしまう。

そこでバットが届かずに空振りをしていれば、もしかしたらカウントによっては打ち直せた場面も増えていたかもしれない。つまりマキノン選手が今後爆発していくのに必要なのは、このアウトローの変化球をどう上手く見極めていくかが鍵となるのではないだろうか。

マキノン選手が調子を落としている時は、早いカウントの甘いボールを簡単に見逃してカウントを稼がれ、常に追い込まれた状態から難しいボールに手を出し打ち取られるケースが目立っていた。

逆に調子が上がっている時はファーストストライクから積極的に打ちに行く姿が増えて来ていたため、やはりあまり考えすぎて消極的になるのではなく、7月の好成績を自信にしてこれからもどんどん積極的にバットを振りに行ってもらいたい。

積極性を失わずアグレッシヴにバットを振り続けられれば、マキノン選手の好成績は8月、9月もずっと続いていくはずだ。

だが心配なのは日本の夏だ。マキノン選手はマサチューセッツという夏でもそれほど暑くはない地域に生まれ、プロとしてのプレーは主にLA近辺で、暑かったとしてもカラッとしていて心地良い地域だった。

一方のベルーナドームの8月は湿度が100%近くになり、ドーム内がもやることさえある。この暑さ+湿度の悪環境に耐えることができれば、マキノン選手の成績はこれからも上がり続けるだろう。

とにかくマキノン選手は、決して安全牌としてキープしておくのではなく、来季の爆発が大いに期待できるため、その爆発に賭けて西武球団には契約を延長してもらいたい。

そして四番という打線の軸が安定し、マキノン選手が常時5〜6番を打てるような状況になれば、それこそマキノン選手の魅力を最大限生かしていけるとも思う。だが四番を打っている今も四番というポジションにこだわることなく、とにかく今まで通り、走者を一つでも先の塁に進め、そして返していくことだけに集中して頑張ってもらいたい。

結果を求めて大振りすることなく、マキノン選手らしさをずっと出し続けていけば、8月9月はきっと7月以上の活躍を見せてくれるはずだ。少なくとも筆者はそれを確信している。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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