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2023年8月 3日公開

【山川事件】西武球団はどうすれば今後のトラブルを未然に防げるのか?

素行不良によって渡部健人選手の獲得を見送ったDeNA球団

山川事件

西武球団は12球団で最もコンプライアンスに厳しい球団として知られるが、しかし同時に選手の問題行動も多い球団として知られる。そして本来は重大事案であったはずのコーチによる以前発覚した窃盗が、山川事件発覚後は些細な出来事だったかのように感じられるほど、山川事件は事が重大化している。

では山川事件は防ぐことはできなかったのだろうか?いや、そんなことはない。筆者個人としては山川事件も含め、過去ライオンズの中で起きた問題の多くは未然に防げたと考えている。

例えば渡部健人選手についてだが、地元横浜DeNAベイスターズも獲得を検討していた。だがスカウトマンが身辺調査を行なっていると、渡部選手が女性に対し不適切な言動を繰り返している事実が発覚し、それを理由にDeNA球団は渡部選手の獲得を見送っている。

一方の西武球団は未来の大砲候補として、多少の性格の難には目を瞑って渡部選手をドラフト1位で獲得した。もちろん西武球団も渡部選手の言動に関しては把握していたようなのだが、決して法を犯すようなものではなかったこともあり、プロ入り後に襟を正せば良いという方針で獲得を決めている。

だがこの渡部選手が山川事件発覚後、女性に対する不適切な言動をスクープされている。もちろんこれに関しては法を犯すというレベルのものではない。だがSNSを通じて女性に対し何度も性的なメッセージを送り、まるで売春婦を誘うかのような言葉はプロ野球選手としては愚か、良識のある大人としても適切だったとは言えない。

「お金はすべて払うからホテルに来て欲しい」というメッセージは、親密な相手に送るようなメッセージではない。恋人や婚約者など大切な相手に対し、金銭をチラつかせて誘うようなことは決してしないはずだ。

もちろんこれは渡部選手だけの問題ではない。まだ表面化していないだけで、プロ野球選手という地位を利用してSNS上で不特定多数の女性をナンパしている選手はひとりやふたりではなさそうだ。

ただ、繰り返し言うがこれは決して法的に問題がある行動ではない。もちろん話がこじれた場合はストーカー規制法などに引っかかってくるわけだが、渡部選手の場合、どうやら知らない相手ではなかったようだし、恐らくはしつこく誘えば相手が折れてくれるとでも考えたのだろう。だとすれば思考があまりにも稚拙だ。

それにしても、近年のプロ野球ではこのようなことを球団側が指導しなければ分からない選手が増えているということがとても悲しい。もちろん野球界に限った話ではないわけだが、SNSが良からぬ形で使われてしまっているケースが非常に多い。

プロ候補選手の素行調査は簡単に行える

このような問題を未然に防ぐためには、やはり性格に難がある選手の獲得は見送ることが一番手っ取り早いと思う。例えばスカウトマンが学校周辺で声をかければ、噂好きの生徒たちが喜んで対象選手の普段の素行を教えてくれる。

実際筆者もあるスカウトマンに同行して、ある選手の素行を少し調べたことがあるのだが、グラウンドを見物しに来る他の生徒たちに話しかけると、「自分はプロ野球に注目されている選手と友だち」というアピールをしたいのか、お礼など包まなくても喜んで色々と教えてくれる。

選手の素行調査は本当に簡単に行えるため、やはり問題を起こす可能性のある行動を取ったことのある選手に関しては、いくら野球が上手かったとしても獲得は見送るべきだろう。

そういう意味では学生時代の山川穂高選手は、決して周囲の手本となれるような生徒ではなかったようだ。確かにホームラン王に三度輝いているスター選手にはのし上がったが、しかし山川事件が球団イメージに付けた傷はあまりにも深い。

もちろん過去のホームラン王としての記録が取り消されることはないわけだが、しかしその功績が帳消しになるほどの事件を山川選手は起こしてしまった。しかも我々ファンに対し深く反省している姿を見せるどころか、週刊誌のインタビューでは挑発的とも取られかねないコメントさえ残している。

おそらく山川事件が仮に不起訴になったとしても、山川選手を再び応援するファンは多くはないだろう。ごく一部の「勝てば何でも良い」と考えるような人しか、今後の山川選手を素直に応援するファンはいないはずだ。

不起訴であれば何らかのペナルティーを受けるだけで西武球団を解雇されない可能性もあり、起訴された場合は即解雇という可能性も高い。いずれにせよ、起訴・不起訴問わずこの事件は本当に重大であると言わざるを得ない。

今ライオンズに必要なのは選手の重しになれる鬼軍曹

ひと昔、いや、ふた昔前であればチームには必ず一人二人の重しになってくれる先輩選手がいた。例えばいくら清原和博選手がちやほやされて、どんどん天狗になり門限を破ろうが、東尾修投手という先輩がいる限りは流石の清原選手でも羽目を外し切ることはできなかった。

また、コーチ陣にも土井正博コーチや伊原春樹コーチといった、清原選手を気兼ねすることなく叱ることができる鬼軍曹的コーチがいた。そのためライオンズ時代の清原選手は、多少やんちゃな行動をしたとしても最終的にはしっかりとプロ野球選手としての務めを果たしていた。

だが今のライオンズを見渡すと、まずホームラン王を三度も獲っている山川選手に厳しく接することのできるコーチなどいないのではないだろうか。例えば筆者の耳には山川選手にアドバイスをしていたコーチが、山川選手から「自分は選手時代に打ててたんですか?」的な挑発的な言葉を浴びたという話が入っている。

これまでの山川選手の言動を踏まえれば、彼は完全に天狗になっているとも思えるし、それを上から押さえつけられる存在もチーム内にはいないようだ。本来であれば中村剛也選手がそのような存在になるべきだが、しかし中村選手はあの通りのんびりした性格で、他人のことをとやかく言うタイプの性格ではない。

となると期待したいのは平石ヘッドコーチだろうか。もちろん選手としての実績は平石選手は山川選手には到底及ばない。だが仮に山川選手から何か口答えされたなら、「じゃあお前はプロで監督経験あるのか?」「プロで日本一を経験したことはあるのか?」とでも言ってやれば良いと思う。

もしライオンズがこれからも放任主義を続けるようであれば、大小問わずまたライオンズから何らかの問題が起きるだろう。それを防ぐためにも、「こんなことしたら絶対平石コーチにめっちゃくちゃ叱られる!」というように、何らかの重しを選手に実感させておく必要がある。

野球ファンに「SNSナンパなんかに労力使ってるからいつまでもレギュラーになれないんだよ」と言われないように、プロ野球選手ならまずは結果を出さなければならない。

しかし結果を出した後で天狗にならないように、打者陣は平石コーチ、投手陣は豊田清コーチがしっかりと引き締め役を務めていかなければならないだろう。選手目線に立つだけでは、選手にとって都合の良いコーチにしかなれない。選手をプロとしてしっかりと育てていくためには、やはり選手目線に立ちながらも厳しさを失ってはいけない。

ライオンズファンは、ライオンズが勝利や優勝以外のことでスクープされることには本当にもううんざりしている。未成年の喫煙飲酒、道交法違反、SNS上での不適切行動、そして今度は性犯罪疑惑。こんなことを繰り返していてはいつまで経っても日本一になることなどできないだろう。

ファンが聞きたいのは山川選手の起訴・不起訴などというニュースではなく、ライオンズが日本一になったという一報のみだ。そしてファンは今なおそれを信じているからこそ、山川事件が起きた今でもベルーナドームに足を運んでくれている。ライオンズにはぜひ、そのファンの切なる思いに応えてもらいたいと願うばかりだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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