HOME > ニュース (89記事) > 西武球団批判をしたことで韓国以外では生きる道を失ってしまったマキノン選手

2024年3月 5日公開

西武球団批判をしたことで韓国以外では生きる道を失ってしまったマキノン選手

2023年は外国人打者最高となるWAR2.1を記録したマキノン選手だったが

デビッド・マキノン選手

デビッド・マキノン選手のコメントが波紋を呼んでいる。マキノン選手本人のコメントを要約すると「西武のチームメイト、コーチ、ファンは自分をリスペクトしてくれたが、フロントはそうではなかった」ということを言っている。つまりマキノン選手は公に堂々と西武球団のフロント批判をしたということだ。

西武球団編成部のトップは渡辺久信GMとなるわけだが、マキノン選手は渡辺GMの決断がリスペクトに欠けていたと言っているということになる。ではどのようにリスペクトに欠けていたのか?当然だが渡辺GMは、マキノン選手を批判するような言動は一切取っていないし、公になっていない部分でもそれは変わらないはずだ。なぜなら渡辺GMは選手ファーストでチーム作りをすると評判のGMであるからだ。

マキノン選手がリスペクトに欠けていたと言っているポイント、つまり西武球団には自分に対する誠意がなかった、と西武球団批判をしているのは、恐らくは金銭面でのことなのだろう。

マキノン選手の昨季の西武での年俸は9000万円で、成績は127試合に出場して打率.259、本塁打15、打点50という内容だった。そしてマキノン選手を語るのによく用いられるセイバーメトリクスの要素、WARの数値は2.1で、これは2023年NPBの外国人打者の中では最も高い数値だった。

ちなみにWARというのは、平たく言うとどれだけチームの勝利に貢献したかというデータになる。算出方法に関しては厳密には定義されておらず、計算するデータサイエンス会社によってその計算方法は異なるようだ。

そしてWAR2.1という数字はレギュラー9人の中には入ることができる、ということを意味している。この数値が1.0を下回ると控え選手クラスとなり、0に近づくほど放出されやすいということを意味する。逆に4.0〜5.0になってくるとオールスターに選ばれるレベルで、6.0に近づいてくるとMVPを獲得できるレベルの選手ということになる。

恐らくマキノン選手としては、2023年の外国人打者の中ではトップとなるWAR2.1をマークしたのだから年俸を上げろということだったのだろう。だがいくら海外からやって来た助っ人選手とは言え、WAR2.1程度の選手に億を超える年俸を出すのは現実的とは言えない。

また、打率.259、本塁打15、打点50という数字を見ても、果たして9000万円という年俸に相応しかったかと言えばそうではない。これらは日本人選手であれば年俸5000万円を大きく下回る若手選手でもマークできる可能性がある数字だ。となると西武球団としても、WAR2.1レベルの選手に年俸1億円以上出すくらいなら、もう少しホームランを打てる外国人選手を探そうという判断になるのも当然だ。

WAR2.1という数字は外国人打者の数字としては史上最低値

確かにマキノン選手は2023年の外国人打者の中ではトップとなるWAR2.1を記録した。しかし西武球団の保留者名簿からマキノン選手の名前が消え、12球団すべてと交渉できる状況になっても、西武球団以外でマキノン選手との契約を望む球団は一切現れなかった。この状況もマキノン選手を多少なりとも苛立たせたのではないだろうか。

西武球団の保留者名簿から外れた後、僅か二週間後にマキノン選手は韓国のサムスン・ライオンズと年俸1億4000万円で1年契約を結んだ。ライオンズファンはこのニュースにガッカリさせられてしまったわけだが、しかし多くの野球通のファンはマキノン選手に1億円以上出すのは現実的ではないという印象を持っていたはずだ。

仮にマキノン選手の成績が打率.270、25本塁打、70打点程度の水準であれば、サムスン同様1億4000万円を支払う価値はあったと思う。だが打率.259で、.260にさえ届かなかった打者に対しては1億円どころか、9000万円でも高いように感じられる。

そしてWAR2.1という数値だが、WAR値が測定され始めた2014年では、外国人打者のその年の最高値2.1という数値は史上最低の数値となっている。それまでの最低値は2015年レアード選手(日本ハム)の2.6だっただけに、この2.1という数字が助っ人選手としてはいかに低いものだったかがよく分かる。逆に助っ人打者の最高値は2015年のビシエド選手(中日)の5.0となっている。

こうしてデータを見ていくと、確かにマキノン選手は2023年にNPBでプレーした外国人打者の中ではトップとなるWAR2.1を記録した。しかしこの2.1という数字は決して自慢できるものではなく、外国人助っ人としては期待外れだったと言われても仕方のない数値だと言える。逆に2014年にホームラン王に輝いたエルネスト・メヒア選手のWARは、シーズン途中加入だったのにも関わらず3.6という高さだった。

球団批判によりもはや韓国でしか生きる道がなくなってしまったマキノン選手

さて、西武球団のフロント批判を公にし始めてしまったマキノン選手は、今後NPBに呼ばれる可能性はほとんどなくなってしまったと言える。ちなみに近年のライオンズの打者としては、オグレディ選手も西武退団後に韓国プロ野球入りを果たしている。

韓国のプロ野球は日本であまり活躍できなかった選手を、日本以上の年俸で迎えることもよくあるわけだが、逆に日本以上に早期契約解除をすることが多い。例えばオグレディ選手に関しても開幕から低空飛行が続いてしまうと、僅か22試合の出場で5月31日の時点でウェーバー公示されてしまっている。

つまりマキノン選手も韓国野球に万が一上手く対応できなかったとなれば、夏前に契約解除されてしまうという可能性もあるということだ。一方NPBの場合はよほど素行に問題がない限りは、外国人選手をシーズン途中で契約解除するケースは多くはない。事実昨季に関してもシーズンを通して不振を極めたペイトン選手を、西武球団がリリースすることは最後までなかった。

ちなみに一般的に韓国では、反日コメントをするとウケが良いという傾向がある。そのため韓国の以前の大統領たちは支持率が下がってくると決まって日本批判を繰り返していた。マキノン選手はもしかしたらそのような事情を汲んだのかもしれない。日本球団の批判をすることにより、韓国で受け入れられやすくなるというようにしたたかに考えた可能性も完全に否定することはできない。

だが球団批判はどの世界でもタブーだ。英語でX(旧Twitter)上に西武球団の批判を残している限り、それを目にしているアメリカのスポーツメディアも多いことを意味する。そしてそれはマキノン選手自身が「この選手は球団批判をする可能性がある」というレッテルを貼られてしまうことを意味し、そうなるとアメリカ球界でもマキノン選手との契約を嫌厭するGMが増えることになる。

要するにいくら退団した後とは言え、球団批判は百害あって一利なしというのが相場なのだ。そしてマキノン選手は韓国でよほどの好成績を上げて韓国でプレーし続けない限り、今後アメリカに戻っても高額年俸を得られる可能性は考えにくく、マイナー契約どころか、独立リーグとしか契約を結べない状況にもなりかねないだろう。

確かにマキノン選手は「西武のチームメイト、コーチ、ファンは自分をリスペクトしてくれた」と語っているが、しかし球団批判をしたことでそれらの言葉がすべて台無しになってしまった。日本には立つ鳥跡を濁さずという諺があるわけだが、どうやらマキノン選手は僅か一年では日本文化への理解を深めることは難しかったと思われる。

関連記事

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
🐦 筆者カズのTwitter(現X)

Latest Articles - 最新記事