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2021年2月24日公開

十亀剣投手が再び二桁勝利を挙げるために34歳となる今必要なこと

十亀剣

怪我が少ないことも高評価につながっている十亀剣投手

11勝7敗という好成績を残した2015年以来、かつてのドラフト1位十亀剣投手の低迷が続いている。ただ、低迷と言ってもまったく仕事をしていないわけではない。

3年契約1年目の昨季に関してはわずか8試合の登板で1勝2敗という数字に終わってしまったが、それ以外の年は4〜8勝を挙げている。そして十亀投手に関し最も高く評価できるのは怪我の少なさだろう。2014年に一度股関節を痛めて戦列を離れているが、それ以外ではシーズンを棒に振るような怪我はしていない。

2020年にしても1軍での登板数はわずか8試合で終わっているが、ファームでも8試合に投げて3勝3敗という数字を残している。渡辺久信GMも、野球に対する姿勢だけではなく、怪我の少なさも考慮し3年契約を提示したのだろう。これがもしもう少し成績が良くても、怪我が多ければ3年契約は怖くて結ぶことはできない。

打たれる時はストライク率が高くなり過ぎる傾向がある十亀剣投手

近年はなかなか二桁勝利に近づくことができていないが、十亀投手はもうこれ以上の成績は残せないのだろうか?いや、そんなことはない。体はまだまだ元気だし、ボールにも力がある。十亀投手はストライクゾーンの使い方さえ変えれば、まだまだ勝つことのできるピッチャーだ。

十亀投手は四球で自滅するようなタイプではない。とは言え制球力で勝負できるほど精密なコントロールを持っているわけでもない。十亀投手が打ち崩される時は、多くのケースでストライク率が非常に高くなるのが特徴だ。高い時では8割近くになることもある。これは11勝を挙げたシーズンにも同じことが言えた。

十亀投手が今後ベテラン投手として二桁勝利を目指していくためには、ストライクゾーンを広く使う投球術が必須になってくる。力強いボールはまだまだ健在だが、しかし今季34歳という年齢で球威で勝負をしに行っても返り討ちに遭うだけだ。

十亀投手はスライダーとシンカーを武器にしているわけだが、このふたつの球種を精度高く内外の低めに集めていく制球力が今後のピッチングを左右する。だがもちろん内外の低めに変化球を集めるだけで勝てるほどパ・リーグは甘くはない。変化球で打ち取りにいく前に、まずは速いボールを胸元に見せておくことが重要だ。

十亀投手はホークスの松田選手を大の苦手にしているわけだが、松田選手が安心して踏み込んで十亀投手のボールを打ちにいける背景には、十亀投手の制球力では崩れない安定感と、ボール半個分の出し入れをできるわけではない程度の制球力、という要素が絡み合っている。

松田選手からすれば、十亀投手が相手ならば踏み込んでも死球はないという安心感があるのだ。だからこそまるでフリーバッティングをしているかのように松田選手は気持ち良く十亀投手を相手にしている。

ストライク率が高過ぎると、このような弊害が起こってくる。これがアマチュア野球であればストライク率が8割前後でも問題ないわけだが、プロ野球の場合はストライク率のベストは6割だ。6割を大きく下回れば四球を出しやすくなるし、6割を大きく越えれば狙い打ちされてしまう。

下位打線に対しては7割くらいのストライク率でも良いのだろう。だがクリーンナップが相手の時は5割少々のストライク率で十分だ。そうすれば平均して6割程度のストライク率になる。

東尾修投手を見るならば、十亀剣投手はまだまだ勝ち星を増やせる!

外国人先発投手であるニール投手とダーモディ投手は開幕には間に合わないことがほぼ確実になってきている。そうなるとかつて11勝を挙げているベテラン十亀投手にチャンスが回ってくるし、期待値も高くなる。

数字だけを見ると、3年契約を結んだ途端に1勝で終えてしまったと見られることもあるだろう。十亀投手自身そう思われているであろうと感じる悔しさが今年は強いはずだ。だが3年契約の2年目、3年目でそれを取り返せば良い。体がまだまだ元気である十亀投手であれば、ストライクゾーンの使い方さえベテランらしくなっていけば、今季・来季ともに二桁勝利を目指していくことができるはずだ。

ライオンズの背番号21番はかつてケンカ投法で名を馳せた東尾修投手が背負っていた番号だ。十亀投手は東尾投手にように与死球を厭わずにどんどん内角を抉っていくピッチングを見せて欲しい。11勝を挙げた時のように「自分の良いボールさえ投げられれば勝てる」という年齢はもうとっくに過ぎている。今はいかに打者が嫌がるボールを投げられるかが勝ち星を増やすための鍵だ。

今季は39歳となる内海哲也投手が非常に元気だ。体の状態も良さそうで、開幕ローテーションに入ってくる可能性も低くはない。39歳の内海投手がそれだけ元気なのだから、34歳の十亀投手が老け込んでいる場合ではない。ちなみに東尾投手は35歳で17勝3敗という好成績を残している。

大ベテラン内海投手を上回るためにも、かつて大エースが背負った21番を汚さないためにも、十亀投手はこのままフェードアウトしていてはいけない。東尾投手は34歳以降の晩年で64勝46敗という成績を残している。この数字を見れば十亀投手は現在通算52勝となるわけだが、将来的には通算100勝を目指すことだってまだまだ十分に可能だ。

21番という栄光の背番号を背負っている限りこのまま終わって欲しくはない。十亀投手にはニール投手やダーモディ投手が入る余地がなくなるようなピッチングを今季は見せてもらいたい。そしてベテランらしくストライクゾーンを広く使えるようになれば、十亀投手のボールであれば十分にそれが可能であると筆者は確信している。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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