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2022年10月 1日公開

通算53勝の十亀剣投手もついに引退、だが21番に相応しい投手だった

十亀剣引退

去りゆく好投手、引退を決意した十亀剣投手

また素晴らしい選手が一人ユニフォームを脱ぐことになった。2011年のドラフト1位でJR東日本からライオンズ入りした十亀剣投手だ。大卒社会人出身ということもあり、十亀投手は1年目からバリバリ1軍で投げ始め、ルーキーイヤーにいきなり6勝を挙げるという大活躍をしてみせた。

プロ通算は11年となったが、実は今季の十亀投手は2軍では2勝4敗で、防御率は7.15という数字に沈んでいた。そして1軍では12試合登板して15イニングスを投げ、防御率は2.40だった。この数字だけを見ると「まだまだやれる!」と思いたいところだが、失点は11で、自責が4という内容だったのだ。

15イニングスで被安打15、与四球8、WHIPは1.53となり、常に走者を背負っての投球が続いていた。まだ34歳であるため来季の復活に賭けることもできたわけだが、十亀投手自身、今季は登録を抹消された5月30日以降、打者を抑えられる自信を失くしてしまったと言う。

潮崎哲也投手も引退をする際には似たことを話していた。抑える自信がなくなり、マウンドに登るのが苦痛だったと話していた。もしかしたら十亀投手も球威の衰えをカバーすることができず、ファームでも自信を失くした状態のまま投げていたのかもしれない。

21番というエースナンバーに相応しかった十亀剣投手

筆者は十亀投手のどんどんストライクゾーンを攻めていくピッチングスタイルが好きだった。投手としてのストライク率はかなり高く、全盛期にはそのストライク率が高いが故に失点してしまうケースも目立った。

打たれた試合のストライク率は70%になることも多く、さらにイニングごとで見ていくと80%を越えることもあった。プロ野球でこれだけストライク率を高めてしまうと的を絞られやすくなり、さすがに打たれてしまう。そのためプロの理想のストライク率は60%だとされている。

十亀投手の場合、ストライクゾーンでどんどん攻めていくピッチングスタイルがベースにあるため、それが通用しなくなってしまったという実感が気持ちを引退という文字に走らせてしまったのだろう。

十亀投手は9月に入ってから西武球団と進退について話し合ったと言う。十亀投手から申し入れをしたのか、それとも球団側から持ちかけたのかは分からないが、しかし功労者である十亀投手だけに、球団としても最善を尽くしたに違いない。

十亀投手の今季の年俸は推定7,000万円で、この金額を考えると来季以降は契約更新したとしても大幅減俸は免れなかっただろう。そして十亀投手自身、3年契約を結んだ3年間で2勝しか挙げられなかった罪悪感もあったかもしれない。十亀投手は男気のある選手であるため、そのような思いのもと、ずっと罪悪感を感じていたとしても不思議ではないと思う。

そして責任感の強い十亀投手は、そのような罪悪感を抱えながらユニフォームを着続けることなどできなかったのだろう。だがもし着続けたとすれば、復活できた可能性だってまだあったと思う。例えば新たに筋トレを取り入れたことでかつて復活した西口文也投手のように。

十亀剣投手は21番に相応しい投手だったと思う。もちろん東尾修投手や西崎幸広投手には数字的には及ばないわけだが、しかし21番を継承するのに相応しい投手だったと思う。このエースナンバーに相応しい爽快なピッチングを、十亀投手は幾度となく見せてくれた。

十亀投手、11年間本当にお疲れさまでした。まずはゆっくりと肩を癒してもらい、第二の人生でもストライクゾーンでどんどん勝負していく生き方をなさってください。そしてたくさんのナイスピッチングを見せてくれて本当にありがとう!

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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