2021年12月23日公開
楽天イーグルスを戦力外になった牧田和久投手が、どうやら所属先が決まらないまま年越しを迎えてしまいそうだ。選手としてはまだ1軍での働き場があるとは思うのだが、しかしこの時期までに所属先が決まらなければ、今後もかなり厳しい状況が続くことになるだろう。
西武復帰はないのか、とも思ってしまうところだが、冷静に考えるともうこの可能性は限りなく0に近いと思う。まずライオンズには1軍への定着を狙っているアンダーハンドスローの與座海人投手がおり、流石にチームに二人も同じタイプのアンダーハンドスローの投手は必要ないと思う。
また、與座投手を育成するためだけに牧田投手を獲得することも考えにくいし、年齢的に育成契約という可能性もまずないだろう。そう考えると牧田投手が来季もNPBでプレーするということは、かなり難しい状況だと思う。
仮に牧田投手が、ライオンズ時代の弱点を克服していたならば渡辺久信GMも考えたかもしれない。だがライオンズ時代同様に左打者には滅法弱く、今季も被打率は対右打者の.182に対し、対左打者は.324と打ち込まれた。今なおストレートの割合がかなり高く、投球スタイルに変化がなく、弱点も克服できていない状態では、このタイミングでライオンズが獲得に動くことはまずあり得ないと思う。
ただ、牧田投手は日本通運時代のピッチングを見た当時の渡辺久信監督が惚れ込みドラフト指名したという経緯があるだけに、牧田投手の出方次第では渡辺GMが考えを変えるという可能性も0ではないのかもしれない。
しかし一番大きいのは牧田投手が日本に戻ってくる際、再獲得を目指したライオンズではなく、楽天イーグルスを選んでしまったことだろう。牧田投手は入団から3年間、石井一久投手と共にプレーをしたのだが、牧田投手は2019年のオフ、恩師である渡辺GMよりも、石井一久GMを選んでしまった。
もちろんそれが悪いことだったとは言わない。もし契約条件がライオンズよりもイーグルスの方がずっと良かったのであれば、これはプロとしてイーグルスを選ぶべきだと思う。だがもし提示条件に余程の差がなかったのであれば、ここで渡辺GMはメジャー移籍時と合わせ、二度牧田投手を失ったことになる。となると、やはり三度目はないのだろう。
牧田投手のストレートにはまだまだ力があり、今季はファームで27回2/3を投げて防御率は0.33という格違いの数字を残している。だがそれでも1軍からあまり声がかからなかったのは、やはり対左打者の被打率が悪すぎたせいだろう。
MLBではすでに採用されているが、日本ではまだワインポイントリリーフは禁止されていない。だがワンポイントリリーフは通常左打者を抑えるために出されるケースが多く、牧田投手のように対左打者の被打率がここまで悪いとなると、ショートリリーフとしては非常に起用しにくくなる。
また、ライオンズには伸び盛りの若手リリーバーも多いため、日本に戻って2年が経ち、もはや牧田投手がライオンズでは必要とはされなくなってしまったというのが現実でもある。
もし2年前にイーグルスではなくライオンズを選んでいれば、今季の数字で僅か2年で戦力外になることはなかっただろう。むしろその逆で、メジャー帰りのノウハウを若手投手たちに伝授してもらうため、指南役として重宝されていたかもしれない。
牧田投手にとってイーグルスを選んでしまったこの2年の代償はあまりにも大きかった。ライオンズであればフランチャイズプレイヤーとしてもう少し長く現役を続けられていただろうが、しかしイーグルスでは、元ライオンズの選手に対する風当たりには厳しいものがある。
このまま引退してしまうのか、それともNPBの他球団が声をかけるのか。もしくは独立リーグや台湾、韓国に活躍の場を求めるのか。来季牧田投手がどのユニフォームを着ているのかはまだ誰にも分からないわけだが、しかしいずれにせよ牧田投手の今年の冬は厳しい寒さとなりそうだ。