2021年12月22日公開
辻発彦監督は2022年の1・2番コンビについて、1番若林楽人選手、2番森友哉捕手という可能性もあるとコメントされていた。だが筆者個人としてはこのオーダーはベストだとは思わない。
確かに単純に考えると、若林選手が出塁して二塁に盗塁し、森捕手のヒット1本で生還すればあっという間に先制点が取れるという理想的展開にもなる。だがこれが文字通り上手く行くことなどそうそうあることではない。
しかしそう言ってしまうと身も蓋もないわけで、それを理由に筆者はこの1・2番コンビはベストではないと言っているわけではない。2番が森友哉捕手じゃなかったとしても、無死二塁で2番のヒットで1点という攻撃は理想的だ。
ではなぜ筆者が2番森友哉捕手がベストではないと言っているかと言うと、森友哉捕手の走者一塁での打率が.437なのに対し、走者二塁の打率が.298と、通算打率の.309を下回っているからなのだ。
森捕手の走者一塁での打率が.437と非常に高いことを考えると、心情的に一塁走者の若林選手を走らせにくくなる。そして若林選手がせっかく盗塁で二塁に行ったとしても、走者が二塁だと森捕手の打率は大きく下がってしまう。これでは戦術とデータがチグハグになってしまい、采配と打線が噛み合わなくなってしまうのだ。
一方森捕手は3番で、二塁に盗塁した若林選手を源田壮亮主将が送りバントで三塁に進めてあげると、森捕手の打率は.308まで上がる。だが悩ましいのが、これが三塁一塁となってしまうと森捕手の打率は.167まで急降下してしまうのだ。ただしこの.167という数字は6打数1安打という少ない打席しかなく、これが仮に6打数2安打だったら打率は.333となっていた。
森捕手はただでさえ捕手として頭を使わなければならない。その上2番打者という最も頭を使わなければならない打順を打たせるのは酷だと思う。捕手業は本当に大変なのだから、バッティングに関しては3番打者としてどっしり構えさせ、落ち着いて打たせてあげた方がタイトルに近付いていけると思う。
攻撃的2番というのはデレク・ジーター選手らの影響から日本でも取り入れられるようになったが、しかしアメリカ野球と日本野球はまったく異質であるため、メジャーリーグの2番最強論をそのまま日本に持ち込むことはできない。
アメリカの野球は一般的には、1〜9番までの全員がスラッガーであり、メジャーリーグの8番打者は、日本では間違いなく4番打者になれてしまう。そのため1番でサッとチャンスを作り、2番でササッとを生還させるという野球も通用することが多い。
だが日本のプロ野球の場合は、クリーンナップを打てる打者がよほど余っていない限り、強打者を2番に置くのはベストではない。つまりいわゆる3番打者を2番に据えてしまうと、クリーンナップが手薄になってしまうし、日本野球の3番打者タイプの打者に2番を打たせても、打線を繋いでいく器用なチームバッティングを求めることは難しい。そして森捕手の場合は若林選手が盗塁したあとの走者二塁だと打率が下がってしまうという特徴がある。
もし仮に辻監督が1番若林選手、2番森捕手という打順を本気で考えているのであれば、これは山賊打線を変形させただけの、打線の繋がりと言うよりは破壊力重視の戦略であると言える。そして若林選手を活かした後の森捕手のデータ的にも、上述のように戦略とマッチしない。
もちろん来季やってくる外国人打者が2人以上クリーンナップで大暴れしてくれるような状況であれば、森捕手を2番に据えても良いとは思う。だが外国人打者は来てみなければ数字を読むことができないため、やはり3番森捕手という打線の核は変えるべきではないと思う。
そして4番の中村剛也選手にしても、打率.280で30本前後のホームランを打てるのであれば、最初から4番で固定してしまった方が良いと思う。
中村選手自身は今は4番には拘っていないし、「自分が4番を打っているようではダメ」だとも言っている。だが現実として今安心して4番を任せられるのは中村剛也選手だ。体が元気であるならば、この3・4番の大阪桐蔭コンビは固定してしまった方が良いのではないだろうか。その方が本人たちもやることが明確化され、気が楽になると思う。
やはり打線は1〜6番はできるだけ固定した方が打線に繋がりが生まれやすい。オーダーが固定されていれば、各打者が前後の打者と上手くコンビネーションを取りやすくなるからだ。
打線を線として繋げていくためには1番若林選手、2番源田主将、3番森捕手、4番中村剛也選手、5番左打ちの助っ人選手という上位打線は固定して、下手に組み換えない方が打線の繋がりも安定的になっていくと思うのだが、しかし一ファンとしては「2番森友哉」というオーダーも見てみたい気もしているのである。