2023年8月 4日公開
1軍に復帰してからのマーク・ペイトン選手の状態は、登録を抹消された直前の4月時点よりもずっと良いように見える。数字自体はオールスター明けに復帰し7月はまだ11打数1安打となっているが、8月に入ってからは少しずつ日本人投手の攻め方に対応し始めているようにも見える。
このコラムを書いている日の試合でもペイトン選手はレフト前ヒット、レフトへの二塁打と反対方向に2本のヒットを打ち打点も挙げている。数字的にはまだまだ低空飛行だと言えるが、しかし状態は上がってきていると見て間違いないだろう。
ペイトン選手は一発の魅力も持つとは言え、ホームランバッターではない。どちらかと言えばコンタクトヒッターで、センターから逆方向に打つことによって打率を上げていくタイプの選手だ。
そのペイトン選手が今季序盤は、変化球を引っ掛けてライト方向に凡打を積み重ねることが非常に多かった。ペイトン選手のようなタイプの場合、仮にアウトになっていたとしても、センターからレフト方向に良い打球が飛んでいる時は状態が良い時だ。
逆にライト側への凡打が多い時は、ボールが得意ゾーンに来るまで待ち切れていない時で、泳がされる可能性が非常に高い。だがオールスター明けのペイトン選手の打球を見ていると、凡打も含め、反対方向に飛んでいる割合が4月よりも少しずつだが増えて来ている。
恐らくはファームで日本人投手と対戦することにより、日本人投手の攻め方を学んできたのだろう。もともと実力は備わっているペイトン選手であるため、日本の野球に対応できるようになれば、打率.300を目指すことだって現実的な目標となるはずだ。
相手チームからすると、好調のペイトン選手が1番に座っているのは非常に嫌だと思う。コンタクト力があるし、気を抜けばスタンドまで持っていかれる危険もある。そして安打や四球で塁に出せば瞬足を飛ばしてあっという間に次の塁を奪われてしまう。
そういう意味ではペイトン選手はリードオフマンとしては理想的だと思うのだが、残念ながらシーズンの序盤に関しては日本人投手の攻め方に苦しむ場面が多かった。
ペイトン選手は4月29日の守備で足を怪我をしての登録抹消となっていたのだが、この抹消はペイトン選手が日本野球を学ぶためには必要な期間だったのかもしれない。
これが仮にバリバリのメジャーリーガーだった場合、どんな理由であっても1軍登録を抹消されるとそこで腐ってしまうケースも多い。だがペイトン選手は怪我が治ってしばらく1軍に上がれなくてもそこで決して腐ることなく、日々若獅子たちとファームで汗を流し続けた。
1軍復帰後のペイトン選手を見ていると、その甲斐もあり日本野球に対応し始めているように見える。数字的にはまだまだ目立った変化があるわけではないのだが、この感じであれば、8月は.300前後の月間打率を残す可能性もあるのではないだろうか。少なくとも8月のペイトン選手は、4月のペイトン選手とは別人であることは間違いない。
ペイトン選手が出塁し、盗塁で二塁を陥れ、源田壮亮主将がバントやエンドランで三塁まで進めて、3・4番で返していく。シンプルにこのスタイルを確立することができれば、ライオンズの得点力は飛躍的に向上していくはずだ。
やはり野球というスポーツはベースボールとは異なり、リードオフマンの出塁率が得点力に直結していく。そういう意味では秋山翔吾選手を欠いて、リードオフマンを長年固定することができなかったライオンズの得点力がずっと低かったこともまったく不思議ではない。
リードオフマンとしても魅力的だし、二死で走者がいなければ一発を狙っていくこともできる。そういう意味では実はペイトン選手は非常に魅力的な打者であり、今季成績が奮わなかったとしても、一年で解雇してしまうのはもったいない。成長に期待し、少なくともあと一年はプレーを見たいと思っているライオンズファンは、果たして筆者だけだろうか。
もちろん森友哉捕手のファンにとっては、森捕手退団後すぐに背番号10を背負ったペイトン選手を見るのは少し複雑な思いもあるかもしれない。
だがペイトン選手がリードオフマンとして機能していけば、森捕手のファンもきっとペイトン選手の背番号10を完全に受け入れてくれるはずだ。そして一日でも早くその日が来るよう、筆者はもう少し長い目を持ってペイトン選手の活躍を見守っていきたいと思う。