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2023年8月 6日公開

四十代に差し掛かりますます野球に集中していけるであろう中村剛也選手

復帰直後から頼りになり存在感抜群の中村剛也選手

不惑のシーズンに突入する中村剛也選手

やはり中村剛也選手は困った時に本当に頼れる男だ。8月4日は1点を追う8回裏、起死回生の同点ホームランを放ち岸選手のサヨナラホームランを演出すると、翌日の試合でも1点ビハインドの終盤でヒットを打ち、還れば同点という状況を作って見せた。

8月5日の試合は残念ながら勝利には結び付かなかったわけだが、しかしただでは終わらないという勝利への執念を見せることはできた。この粘りはもちろん翌日以降の試合に良い流れを繋げていってくれるはずだ。

オールスター前後から、ライオンズの負け方が良くなって来た。完全な敗色ムードの中でそのまま敗れてしまうのではなく、負けてしまった試合でも、「もしかしたらまた逆転するのか?!」とファンに期待を抱かせてくれる。これはチーム状況が良く、ベンチの雰囲気も良くなって来ている証拠だ。

中村選手はオールスター1戦目では活躍したのだが、2戦目で体調を崩してしまい、レギュラーシーズンでもそのまま登録が抹消されていた。だが8月に入りようやく戻ってくると、その存在感はやはり抜群だ。

マキノン選手も「西武の四番はナカムラさん」と言うように、中村選手は四番というポジションがよく似合う。だが中村選手が抹消されていた間、四番としてチームを引っ張り続けたのはマキノン選手だった。

それによってチームも勝っていたため、松井稼頭央監督としてもその流れを変えたくなかったのだろう。中村選手が体調不良から戻って来てもすぐに四番には戻さず、六番というポジションでスタメンに戻した。

もちろんここには中村選手にいきなり無理をさせたくはないという首脳陣の親心もあると思うが、それと同時に、休むことなくチームを牽引し続けているマキノン選手へのリスペクトも含まれていると思う。

中村選手の次を担う日本人四番打者は一体誰になるのか?

これからのチームを考えれば、これ以上中村選手に四番を任せることは決してプラスにはならない。今月15日が来れば中村選手も不惑の四十代に突入することになり、もはや「おかわり君」というよりは「おかわりさん」といった印象だ。そして体力的にもここからさらに上がっていくことは考えにくく、今後はますます出場試合数が減っていく可能性もある。

そんな時代に差し掛かっている中、やはりいつまでも中村選手におんぶに抱っこではチームが育たない。今後松井稼頭央監督が長い目で強いチームを作っていくためにも、まず着手しなければならないのが軸となる四番打者の早期育成だ。

そこで名前が挙がってくるのはもちろん渡部健人選手であるわけなのだが、しかし渡部選手は怪我に弱すぎる。毎年のように下半身に不調を訴えているため、現状では一年間戦える体力は持っていないと判断するのが賢明だろう。

筆者個人としては高木渉選手ブランドン選手にもう少し1軍で経験を積ませながら長い目で育成していくことも必要なのでは、とも思うわけだが、現状ではふたりも怪我がないわけではなく、なかなか多くのチャンスを得られるような状況ではなさそうだ。

蛭間拓哉選手も将来的には四番候補だと言えるが、しかし今季はまだまだ1年目で、1軍でプレーをしていても常に手探りの状態だ。だが対応力はあるし、体力的にも渡部健人選手以上に優れており、怪我にも強そうだ(怪我をしにくい)。そのためこの選手はぜひ下位打線で使い続けてできるだけ早く一人前にしてあげて欲しいところだ。

だが若手の成長を待っていられるほど、今のライオンズには余裕はない。まずBクラスを脱出するためにも、ライオンズは勝ち続けなければならないのだが、勝ちながら選手を育成することは監督業の中で最も難しい仕事の一つだと言える。

そう考えるとやはり現状では、怪我なく試合に出続け、打撃成績でも多くの面でチーム内トップの数字を挙げているマキノン選手を打線の軸にしていくが最善なのだろう。

打線の軸である四番打者はコロコロ変えるべきではない。然るべき人が悠然と構えていなければならないのが四番というポジションだ。

マキノン選手自身、まだ日本1年目ということもあり手探りの部分も多いだろう。だが日本野球に対しかなりアジャストして来ているし、何よりもチームによく馴染んでいることが素晴らしいと思う。今後マキノン選手が、WBC日本代表のヌートバー選手のような存在感を示してくれたら、ライオンズもさらに加速していけるだろう。

これからますます野球に集中していくことができる中村剛也選手

中村選手には四番というポジションがよく似合う。だが中村選手自身も時々口にしているように、中村選手が四番を打つべき時代はすでに終わっている。だが中村選手の野球人生はまだまだ続く。

今後中村選手に目指して行って欲しいのは、四十代に入っても年間30本塁打以上を放った、故門田博光選手の姿だ。門田選手は40歳で44本を打ちホームラン王となり、41歳では33本、42歳になっても31本打っている。中村選手には門田選手以上の「中年の星」になってもらいたい。

現時点での中村選手の通算本塁打数は464本で、門田選手は567本。中村選手の本塁打数は門田選手よりもまだ100本以上少ないわけだが、しかし中村選手が6番あたりである程度固定されて起用され続ければ、引退までにあと100本以上打つことは不可能ではないはずだ。

もちろん近年減少して来た中村選手の本塁打数を踏まえると非常に難しい数字となるわけだが、しかしそれほどプレッシャーのかからない6〜7番で固定していければ、四番を打っている時は負担も少なくプレーし続けられると思う。そして出場試合数がまた増えていけば、本塁打数を25〜30本に乗せていくことも可能だろう。

松井稼頭央監督には、中村選手が四十代だから「休ませなければならない」と考えるよりは、中村選手が行ける限りは無茶のない範囲で起用し続けてもらいたい。相手チームからしても、中村選手が6〜7番に座っていたらこれほど嫌な下位打線はないはずだ。

孔子は『論語』に「四十にして惑わず(四十而不惑)」と書き記した。これが不惑の語源であるわけだが、四十代になった中村選手の中からはさらに迷いが消え、これからはますます野球に集中していけるのではないだろうか。

そして現在中学野球で活躍されている息子さんに負けないような活躍を、中村選手はこれからもベルーナドームで見せ続けてくれるはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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