2022年11月 5日公開
予想通りと言っては失礼かもしれないが、オグレディ選手とジャンセン選手の1年限りでの退団が正式に決まった。オグレディ選手に関しては123試合に出場して15本塁打を打ちはしたが打率は.213で、得点圏打率も.221という低さだった。一方ジャンセン選手は僅か35試合の出場で打率.192で2本塁打という成績だった。
2選手とも退団となっても不思議ではない成績で、離日する際もすでにその覚悟はあったはずだ。それでも帰国する際には日本に対する好意的な言葉を残してくれている。残念ながら退団となってしまったわけだが、しかし日本や日本野球に対するリスペクトを持ってくれたという意味では、素晴らしい人柄の選手たちだったと思う。二人には是非ともまたアメリカで活躍する姿を見せてもらいたい。
ダルビッシュ有投手がオグレディ選手の日本での活躍に太鼓判を押していた一方で、筆者は一年前に書いた記事『西武の新外国人選手として調査されているブライアン・オグレディ選手』で、オグレディ選手は恐らくは良い成績を残すことはできないだろうと予測したわけだが、その通りになってしまったことは非常に残念だった。できれば筆者の予想を裏切り活躍してもらいたかったのだが、しかし実際には一年前に書いた記事の内容その通りになってしまった。
オグレディ選手とジャンセン選手という、共にユーティリティー性に富んだ選手を辻発彦監督が望んだのかは筆者には分からない。だが右打ち左打ちの違いはあれど、このようにやや似た個性を持った選手を2人獲得したことは筆者には理解し難かった。渡辺久信GMとしてはもしかしたら外野を固定できていない状況と、サードを守る中村剛也選手がもうフルシーズンを戦える年齢ではないことを踏まえ、オグレディ選手かジャンセン選手のどちらか一方でも成功してくれればという考えで、似た個性の選手を2人連れて来たのかもしれない。
だが繰り返し書くことになるが、筆者は外国人助っ人に対してユーティリティー性は求めるべきではないと考えている。外国人選手にはバッティングという特性を求めるべきだ。例えばエルネスト・メヒア選手のような選手を連れてくるべきだと思うのだが、スパンジェンバーグ選手あたりから、ライオンズの外国人選手は中距離砲タイプのユーティリティー性に富んだ選手を連れてくるケースが多くなっていた。そのため外国人選手がクリーンナップを打つ機会もかなり減って来ている。このようなケースが続いていたことを考えると、やはりこれは辻監督の要望だったのだろうか。
メヒア選手は辻監督になってから出場機会がどんどん減っていった。もちろん成績がやや下降し、三振数も多かったということも理由にあったわけだが、しかしメヒア選手が持つ能力を考えれば、1試合で4打席しっかり立たせてあげればもっと打っていたはずだ。仮に打率が.250前後を行ったり来たりしていたとしても、30本塁打以上は打っていただろう。そのため筆者は辻監督がなぜメヒア選手を起用しないのかが不思議だった。
相手バッテリーからしても、仮に多少不調だったとしてもメヒア選手が打線に加わっていればそれだけでも十分脅威だったはずだ。高い打率を残すことはできなかったとしても、30本塁打以上打てる外国人選手に対してはバッテリーも神経を使う。そのため相手バッテリーを消耗させるという意味でももっとメヒア選手の出場機会を増やすべきだったと思う。
ただしメヒア選手は基本的には一塁しか守ることができない。そして辻政権以降、その一塁でメキメキと頭角を現してきたのが山川穂高選手だった。ポジションが被ることでメヒア選手は代打に甘んじるようになっていったわけだが、これに関しても当時の山川選手の年齢であれば中村剛也選手の後釜として三塁へのコンバートは可能だったと思う。
もし山川選手を三塁にコンバートさせていれば3番森友哉捕手(捕)、4番山川選手(三)、5番メヒア選手(一)、6番中村選手・栗山巧選手(DH)というオーダーを組むこともでき、相手バッテリーとしてはかなり脅威となっていたはずだ。
これでライオンズの外国人打者は二年連続で総入れ替えという形になる(育成選手は除く)。これはこれでかなりリスキーであるわけだが、しかし松井稼頭央監督に代わるこのタイミングで、もう少ししっかりと打てる外国人打者を呼ぶことを選んだ方が来季へのリスクは小さくて済むだろう。単純に考えてオグレディ選手とジャンセン選手が2年目以降で急に打てるようになるとは、今季の内容を見ると考えにくいからだ。その理由は日本の緩急にほとんど対応することができていなかったからだ。
日本でしっかりとした打撃成績を残せる助っ人を呼ぶためには、ステイバックで打っているかどうかが鍵となる。例えばメヒア選手然り、カブレラ選手然り、打てる打者はステイバックで打っている。ただし技術レベルで言えばメヒア選手よりもカブレラ選手の方が圧倒的に高く、その技術レベルは当時の金森栄治コーチの功績だと言える。カブレラ選手も金森コーチには全幅の信頼を寄せており、西武球団が金森コーチをリリースしたい際にはカブレラ選手がそれに猛反対したというエピソードも残っている。
もちろん再度アレックス・カブレラ選手のようなスラッガーを連れて来れれば最高であるわけだが、しかしそんな選手は探したってなかなかいない。ちなみに今季はカブレラ選手の息子、ラモン・カブレラ選手が福岡北九州フェニックスでプレーしていた。.332を打ち首位打者に輝いたわけだが、すでに一年限りでのフェニックスの退団が発表されている。このラモン・カブレラ選手の獲得は、話題性から言えばかなり面白いのではないだろうか。
守備に関しては捕手がメインで、一塁を守ることもできる。森友哉捕手のバックアップ要員としても期待できるラモン・カブレラ選手だけに、高額年俸を要しない今、彼を獲得することはライオンズにとってマイナスにはならないと思う。そしてアスリートとしてのメンタルも非常に高く評価されているため、短期決戦でのメンタルの弱さが顕著となっているライオンズにとって、ラモン・カブレラ選手は大きな助力となってくれるはずだ。
だがいずれにしても長距離砲の獲得は不可避だ。山川選手の四番の座を脅かすような外国人打者を連れて来なければ、山川選手をもう一段飛躍させることも難しいだろう。強かった頃のライオンズには常にチーム内での競走があった。例えばAKD砲然り、松井稼頭央選手・大友進選手・高木大成選手・小関竜也選手による俊足カルテット然り、伊東勤捕手と中島聡捕手の併用然り、その他数限りないチーム内競走が存在していた。
もし辻監督ががスパンジェンバーグ選手、オグレディ選手、ジャンセン選手のようなユーティリティープレイヤーではなく、メヒア選手をもっと多用するなり、もしくはメヒア選手に匹敵するスラッガーを連れて来ていたならば、山川選手にももっと必死さを出させることができていたかもしれない。
今季はオグレディ選手の推定年俸が8000万円、ジャンセン選手が4000万円だった。もちろん今の西武球団にメジャーレベルの助っ人を呼べる経営体力がないことは理解している。だが中途半端な成績の2選手に対し年間合計1億2000万円を使うのであれば、年俸1億2000万円で1人のスラッガーを連れて来た方が良いと思う。
来季は松井稼頭央監督の1年目であることから、ご祝儀的な意味合いも込めて、例年以上にある程度しっかりした補強をするとは思う。だが育成選手を除き、外国人助っ人を日本で育てようという考えは捨てるべきだ。もちろんマルちゃんことドミンゴ・マルティネス選手のように、打てたとしても走れない守れないでは困るわけだが、しかし中途半端な助っ人を連れてくるくらいならば、マルちゃんのように打撃という一芸に秀でた選手を連れて来る方がよほど戦力になると思う。
来季の助っ人は恐らくは年内には発表されると思うが、打者に関してはとにかく確実にクリーンナップを任せられる打者、投手に関してはストレートに日本人投手にないパワーがある投手を連れて来てもらいたい。先発投手に関してはディートリック・エンス投手が来季もしっかりとローテーションで回ってくるはずだ。となるとあとはやはり確実にクリーンナップを打てる打者と、安心してセットアッパーを任せられるリリーバーを連れて来れるかが来季のライオンズの順位を占うことになるだろう。
かつての打者で言えばカブレラ選手とまでは行かなくても、スコット・マクレーン選手、ホセ・フェルナンデス選手、エルネスト・メヒア選手のような強打者。投手で言えばブライアン・シコースキー投手やデニス・サファテ投手のようなパワーピッチャーが必要だ。ただしこの中で西武球団がダイレクトで連れて来たのはマクレーン選手とメヒア選手だけだ。あとの選手はNPBの他球団でプレーした後のライオンズ入りとなっている。
そう考えると西武球団は渉外担当にやや弱点を抱えていると言わざるをえない。これまで西武球団の渉外担当としては土肥義弘氏、ケビン・ホッジス氏、フェルナンド・セギノール氏の名前が挙がっているわけだが、助っ人の成功率はちょっと低いのが現状だ。
この成功率を上げるためにはやはり目をつけたいのはユーティリティー性ではなく、打撃面での特性だ。駐米渉外担当者たちは日々マイナーリーグや独立リーグを奔走してくれていたと思うのだが、今オフはこのあたりの戦略を見直し、来季は是非ともしっかりとクリーンナップを任せられるスラッガーを連れて来て欲しいと筆者は願っている。そうすれば山川選手との相乗効果も生まれ、今季のような低い得点力に喘ぐこともなくなるはずだ。