山川穂高選手を名指しし改善を求めた松井稼頭央監督の聖域なきチーム改革

2022年11月 4日公開

以前西武球団から記事の非公開化を依頼された筆者

山川穂高選手を名指しし改善を求めた松井稼頭央監督のチーム改革

松井稼頭央監督の言葉を聞いていると、近年ライオンズに足りていなかったことがよく見えてくるし、筆者がこの場に書き残してきた、ライオンズに対する数々の厳しい内容の記事も間違っていなかったと確信することができる。やはり近年のライオンズは、CSやペナントレースで負けるべくして負けていたと言って過言ではない。

ところで、各紙スポーツ紙が必要以上にチームや選手に対して厳しい記事を書くことはない。例えば有名どころでいえば日刊スポーツ、SANSPO、スポニチなど多数のスポーツ紙が存在しているわけだが、必要以上に厳しい記事を記事を書いてしまうと球場を出禁にされたり、球団から情報を最速で受け取れなくなる可能性があるため、基本的には球団が提供した情報内からしか記事は書かないし、そこには確実に忖度が存在している。

実は筆者は以前Baseball Times(BT)でライオンズに関するコラムを連載していた際、球団が公式には認めていないある真実について書いたことがあった。しかしそれは今流行りの暴露など悪意ある内容ではなく、当時のライオンズについての真実を冷静な文脈で書き記したもので、ライオンズ愛あるが故の記事であり、その記事は当時他の筆者の連載記事と比較し、桁外れのアクセス数を記録していたようだ。

だが西武球団からその記事に対してNGが入ってしまい、残念ながらその記事は公開間もなくお蔵入りとなってしまった。ただしその記事に書かれていた内容に対して西武球団から否定は入らなかった。

筆者はこのような経験をしているため、真実だからと言ってあまり必要以上書くことには気をつけている。そのため筆者が知る選手に関する情報も、差し障りのないもの以外は公になっていること以外は書かないようにしている。だがプレースタイルに関してはその限りではないと考えているため、特に主砲山川穂高選手に対しては厳しい記事を多数書いてきた。

読者の中には「この筆者は山川選手が嫌いなのかな?」と思われた方もいたかもしれない。だがそうではない。ライオンズの主砲として心から応援しているからこその記事だった。それをよく理解していただきメッセージをくださる読者もいらっしゃったことは書き手冥利に尽きる。

さて、ここまでは何となく言い訳がましく書いてきたわけだが、すべては筆者が多くの記事で山川選手に対し指摘してきたことを、松井稼頭央監督が正式に口にしてくれたことを伝えるための前置きだった。

主砲山川穂高選手にも容赦しない松井稼頭央監督のチーム改革

松井稼頭央監督は山川穂高選手に対し、気を抜くべきではない段階では決して気を抜かないことや、チームプレーを重視することを指摘し続ける旨を宣告した。これはまさに筆者がこのサイト内で山川選手に対し指摘し続けていたことだ。

松井稼頭央監督はそのようなことを山川選手に対しても「しつこく言い続ける」と仰っている。その話題の中で出てきた個人名が山川選手の名だけであることから、松井稼頭央ヘッドコーチが如何に主砲に対して物足りなさを感じていたかがよく分かる。

山川選手はライオンズの主砲で、チームの顔でもある。その山川選手に対し松井稼頭央監督は「走り切る」「最後までやり切る」ことを求めている。つまりこれは、山川選手がこれまでグラウンド上で気を抜いたプレーを度々見せていたということに他ならない。

ライオンズには、とにかく最後までしっかりとプレーし切るという伝統があった。栗山巧選手中村剛也選手まではその伝統が続いていたのだが、世代が山川選手へと移り変わっていくと、いつの間にかその良き伝統が薄れていってしまった。

ライオンズにあった良き伝統を再興させようとしている松井稼頭央監督

栗山巧選手と中村剛也選手はまったく異なる個性を持っている。中村剛也選手に関しては非常にマイペースに見えるし、時として抜いているように見えることもあるのだが、実際にはそうではない。中村選手の場合、その時々で自分がやるべきことと、自分の体に必要なことがしっかりと分かっているのだ。そのためやる時はやるし、やるべきではない時には周囲からはペースが落ちているように見えることもある。つまりこれはオンオフにメリハリがあるということだ。

一方の栗山選手はとにかく練習の虫だ。誰よりも早く練習場に現れ、誰よりも遅くまでバットを振り続けている。本人は否定するが、本当にストイックという言葉がよく似合う選手だ。ユニフォームを着ている限り決して気を抜くことがなく、だからこそマウンドから遠いレフトを守りながらもかつては主将を任されていた。

栗山選手と中村選手はまさに他の選手にとってお手本となる存在であり、松井稼頭央監督は山川選手に対してもそのような姿を見せるよう求めている。そして松井稼頭央監督と一心同体とも言える平石洋介ヘッドコーチも「今までのライオンズとガラッと変えていかないと来季も苦戦する」と仰っている。

秋季練習から秋季キャンプにかけての松井監督・平石コーチの言葉を聞いていると、これまでのライオンズを引き継いでいくのではなく、しばらく勝てていないライオンズを根本から変えようとしていることがよく分かる。

ウォームアップ一つを取っても、全体でのウォームアップでその日初めて体を温めるのではなく、全体でウォームアップする際にはもうしっかりと体が出来上がっていて、ウォームアップの段階からキビキビと動いている姿をファンに見せられるよう、毎日準備しておくことも同時に求めている。

一部では、今季ヘッドコーチを務めていた松井稼頭央監督は、ある程度の指揮を任されていたと囁かれていることもあったが、筆者はそうは思っていなかったし、松井監督や平石コーチもそれを完全に否定している。だがどうやら松井監督と平石コーチは今季1軍ベンチ中で、ライオンズがなぜしばらく勝てていないのかという原因を一年かけて洗い出していたようだ。

そのため監督就任と同時に、松井監督の口からは次々と具体的な改革案が飛び出してくる。山川選手に対する物足りなさや、チームプレーが足りていなかったチーム状況もまさにそうで、松井監督は今、ライオンズがしばらく勝てていなかった原因をしらみ潰しにしていっているように見える。

森友哉捕手の残留に対してもプラスに働くであろう松井稼頭央監督のチーム改革

森友哉捕手に関しても当然そんな松井稼頭央監督の新たなやり方を目の当たりにしているはずだ。近くで山川選手が松井監督に何かを言われている姿も見ているだろう。そして筆者は思うのである、森捕手がそこに来季への手応えを感じているのではないだろうかと。

大阪出身で、かつてオリックスジュニアとしてプレーしていた森捕手が、大阪の球団でプレーする希望を持っていることは周知の事実だ。だが同時に抱えているのもライオンズ愛であり、今森捕手は松井監督のやり方を目の当たりにし、この監督について行けば優勝できると感じて始めているのではないだろうか。

プロ野球選手にとって最も重要なのは、やはり所属球団が優勝できるか否かだ。仮に大阪でのプレーを希望していたとしても、オリックスがかつてのように最下位の常連のままであれば、森捕手もFA移籍先としてオリックスに魅力を感じることはなかっただろう。

だがこの2年のオリックスはリーグ二連覇を達成し、今季は26年振りの日本一も達成している。しかもそのバファローズを率いるのはかつての名捕手中嶋聡監督だ。そのためこのチームが現在森捕手にとって非常に魅力的に映っていることはよく理解できる。

しかしライオンズには森捕手が慕う岡田雅利捕手もいるし、自宅もご近所同士という仲の良い山川穂高選手の存在もある。しかも今オフは以前共に自主トレをしていた佐藤龍世選手もライオンズに出戻った。良きチームメイトに恵まれ、そしてチームは今松井稼頭央監督の下ガラッと変わろうとしている。

森捕手は今、ライオンズが勝てる集団に変わろうとしているのをひしひしと感じているはずだ。これはFA交渉でどんな好条件を提示されるよりも、残留への好材料となるはずだ。

かつて多くの選手がFA移籍先としてジャイアンツを選んだ理由

例えばかつてはFA宣言をする多くの選手が移籍先にジャイアンツを選んでいた。これは単純にジャイアンツというチームが日本一に非常に近い場所にいたからだ。また、ジャイアンツに所属していたという履歴が引退後のバリューとなるため、それを求めてジャイアンツへの移籍を選んだ選手も少なからずいた。

だが高橋由伸監督から第三次原政権にかけての7年間では、リーグ優勝は二度経験しているが、日本一にはなっていない。ジャイアンツが最後に日本一になったのは2012年が最後で、しかもそれ以降でセ・リーグ球団が日本一になれたのも昨季のスワローズのみだ。

一昔前のジャイアンツは頻繁に優勝していたわけだが、今の選手たちの目にジャイアンツは優勝できるチームという風には映っていない。そのため近年のジャイアンツはFA戦線でもあまり奮わないし、FA補強自体も成功率が非常に低くなっている。

このように選手が優勝することを求めているという前提で考えれば、今松井稼頭央監督の下でガラリと変わろうとしているライオンズは、森捕手の目にも非常に魅力的に映っているはずだし、気持ちも少なからず残留に対して傾いているはずだ。

2023年への助走期間だった2022年のライオンズ

そしてそのようなチーム改革も、平石洋介コーチという後ろ盾なくして実現は難しかったと思う。同じPL学園出身で、イーグルスでも同じユニフォームを着ている松井監督と平石コーチは、まさに監督とヘッドコーチという関係としてそれぞれが適任だった。

さらに今季は辻発彦監督の下、松井監督と平石コーチは一年間かけてじっくりとライオンズというチームを見ることができた。現在のライオンズの強みと弱点を内側から見ることができ、これはまさに2023年シーズンへのこれ以上にない準備期間だったと思う。

また、奥村剛球団社長も今季もし優勝していたとしても辻監督は勇退する予定だったという趣旨のコメントもしているため、フロントとしても今季は2023年への準備期間だという認識だったのだろう。もちろん表向きにも実質的にもライオンズは優勝を目指していたわけだが、フロントしては2022年は、分かりやすくなるよう大変失礼な言葉を使うならば、優勝してくれれば儲けものというくらいの意識があったのかもしれない。

そのため補強に関しても決して満足できるような内容ではなかった。外国人選手に関してはエンス投手は10勝を挙げて大きく勝利に貢献してくれたが、打つ方に関しては全滅だった。オグレディ選手に関しても残留の可能性はあるが、仮に残留したとしても今季推定8,000万円という年俸が1億円の大台に乗ることはないだろう。

恐らく今オフはもっとホームランを打てる外国人選手の獲得を目指すはずだ。これは一年ほど前にもこの場で書いたことではあるが、外国人選手にユーティリティー性を求める必要はない。外国人選手はある程度安定感のある守備力さえあればポジションは固定して、打つことにより多くの集中力を使わせるべきだ。

もしくはDHでバッティングだけに専念させるくらいの起用法も必要だと思う。そして理想を言えば平時は栗山選手と中村選手は、年齢的にも代打の切り札として起用していきたいため、外国人選手のためにDHを使い切ってしまっていいと思う。

松井監督と平石コーチがチームを改革し、渡辺久信GMが本当に打てる外国人打者を連れてくることができれば、来季ライオンズが優勝する可能性は非常に高くなるだろう。そして森捕手自身も、自らが残留すればその可能性がより高まることを今実感しているはずだ。

森捕手が残留に向けて気持ちが傾いていくようなチーム改革をしている松井稼頭央監督は、ファンの予想を上回る名将となる可能性が高い。筆者が個人的にここまで新監督に対し期待を膨らませるのは、2007年オフに渡辺久信監督が就任した時以来だ。だから来季はライオンズは優勝するとは言わないが、しかし筆者個人にとっては、来季のライオンズは安定して勝てるチームに生まれ変わることを確信できた秋となった。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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