2022年11月 6日公開
北海道日本ハムファイターズの近藤健介外野手がFA宣言した場合、西武球団も獲得を目指すことが明らかになった。近藤選手は海外FA権を有しているわけだが日本ハム球団との3年契約が今季で終了となり、日本シリーズ終了後、この権利を行使するか否かでずっと悩んでいる。だが最終的には行使するのではないかというニュースも多く見られるため、11月9日のFA宣言締切日までに近藤選手がFA権を行使する可能性はどうやら高そうだ。
秋山翔吾選手がメジャー移籍して以来、ライオンズには外野のレギュラーが一人もいない状況が続いている。今季はメジャーからNPB復帰した秋山翔吾選手の再獲得も目指した西武球団ではあったが、残念ながら獲得には至らなかった。だが森友哉捕手と外崎修汰選手が今オフFA権を行使するであろうという状況で秋山選手の獲得を目指したということは、ある程度の補強資金は用意できたということだ。恐らくはその際に組んだ予算を近藤選手に対して使っていくのではないだろうか。
ただし近藤選手の今季年俸は推定2億5500万円でFAではAランクということになる。そのため仮に西武球団が近藤選手の獲得に成功した場合は、人的補償を差し出さなければならない可能性が非常に高い。日本ハム球団が人的補償を求めた場合、今季の活躍度やこれまでの貢献度を踏まえて考えていくと、まず将来の幹部候補である栗山巧選手と中村剛也選手に関してはプロテクトされるだろう。流石にジャイアンツとは異なり、西武球団がこのふたりをプロテクトから外すことはないと思われる。
この前提で考えていくとプロテクトから外れそうな中堅、もしくはレギュラー経験者となると、金子侑司選手、山野辺翔選手、岡田雅利捕手、川越誠司選手あたりになってくるのではないだろうか。金子選手に関しては盗塁王を獲得したという輝かしい実績があるわけだが、近年の1軍での貢献度ということで考えると、他の選手同様に大きく貢献できているわけではない。そのためプロテクトから漏れる可能性は0ではないだろう。
そして岡田捕手に関して言えば、これは森捕手次第ということになるのではないだろうか。もし森捕手の流出が決まった場合は、出場試合数の多くない岡田捕手をプロテクトに入れる必要性は低下する。だが森捕手がまだ流出していない段階であれば、森捕手を慰留するために岡田捕手を簡単にプロテクトから外すことはできなくなる。
プロテクト名簿の作成は常に困難を極めるわけだが、とにかくリストから漏れやすいのは入団から5年以上経過しており、近年1軍での出場試合数が少ない選手たちだ。それを踏まえるとまずプロテクトから漏れてしまいそうなのは上述した4人あたりからになってくるのではないだろうか。
だが理想を言えば近藤選手が仮にライオンズ入りを決めたとしても、日本ハム球団が人的補償は求めず、金銭補償のみを選択することだ。これが何よりも望ましい結果だ。
近藤選手の獲得を目指すということは、現有戦力の誰かを失うという覚悟がNPBにおいては必要になって来るのだが、それを差し引いても近藤選手がライオンズ入りしてくれれば、森捕手の件を除き、松井稼頭央監督にとってこれ以上の朗報はない。近藤選手をレフトで起用し、若く守備範囲が広い若林楽人選手がセンター、そしてライトを外国人選手に任せるか、もしくは鈴木将平選手やルーキー蛭間拓哉選手を起用しても良いだろう。もしくは蛭間選手がセンターに回っても良いと思う。
上述の通り、ライオンズには外野のレギュラーが一人もいない状況だ。だが近藤選手が加入して一人レギュラーを固定することができれば、残りの2つが決まっていくのも早いだろう。そして特に将来のクリーンナップ候補である蛭間選手と、韋駄天若林選手には大きな期待を寄せたい。
ライオンズは年間で半分の試合をベルーナドームで戦うことになる。そして近藤選手はこのベルーナドームを滅法得意としており、今季のベルーナドームでの打率は.400となっている。年間の半分を得意とするベルーナドームでプレーできることを考えれば、近藤選手個人にとってもライオンズ入りすることには大きなメリットがある。
具体的に言えば、近藤選手の目標は首位打者だ。これは過去本人も明言していることであり、得意としているベルーナドームでの試合数が増えれば増えるほど、首位打者への距離も近くなる。悲願の首位打者獲得を実現させるためにも、近藤選手がライオンズ入りするメリットは非常に大きい。
ただし、近藤選手を獲得できたとしても松井稼頭央監督は近藤選手を1番に起用することはないだろう。なぜなら近藤選手は盗塁を得意としていないからだ。走力をアップさせて得点力の回復を目指している松井稼頭央監督としては、盗塁王を目指せる可能性を持つ選手を1番に据えて来るはずだ。そのため近藤選手が、秋山翔吾選手のようなあまり盗塁をしないタイプのリードオフマンとして起用される可能性は低い。
また、近藤選手は得点圏打率が非常に高く、今季も.363とチャンスでよく打っている。レギュラーとなった2015年以降で、近藤選手の得点圏打率が.300を下回ったのは8年間で2回だけだ。この得点圏打率の高さを踏まえれば、近藤選手は3番、もしくは5番として起用するのがベストだろう。
ホームランを打つ能力という意味では森捕手の方が高いため、3番近藤選手、4番山川選手、5番森捕手とう和製クリーンナップを形成すれば、左右もジグザグになるし、近藤選手の打席数も稼ぎやすい。そして出塁率が非常に高い近藤選手を3番にした方が、山川選手と森捕手の打点も増えやすくなる。
森捕手を流出しないためにも、来季以降のFA選手たちを慰留しやすくするためにも、今オフはしっかりとした補強をして、西武球団は選手たちに対し来季は本気で優勝を目指すという姿を見せていかなければならない。選手たちが少しでも「球団が本気で優勝を目指しているのか分からない」と感じてしまえば、再びFA流出が止まらなくなるだろう。その悪夢が再び訪れないようにするためにも、近藤選手の獲得は西武球団にとっては大きなプラスとなる。
ただしファンとしては人的補償のリスクも覚悟しておく必要がある。そしてその覚悟は、もちろん近年1軍であまり活躍できていない選手たちにも必要だ。これは複数年契約している選手であっても油断することはできない。複数年契約を結び高い年俸をもらっている割には1軍での出場試合数が多くないという選手は、最もプロテクトリストから漏れやすくなる。
ちなみに前回西武球団がFA補強を行なったのは2008年の石井一久投手が最後だ。石井投手は渡辺久信監督就任時の御祝儀的な意味合いで獲得された選手だった。ちなみに2016年には木村昇吾選手を名目上はFA獲得しているが、実際には木村選手はFA宣言するも獲得球団が現れず、ライオンズがテスト生として招き入団が決まっている。そのため名目上はFA移籍となるわけだが、木村選手の場合はFA補強と呼ぶことはできない。
そしてさらに遡ると石井投手の前は1998年の中嶋聡捕手だ。中嶋捕手にしても、石井投手にしてもFA補強としては完全に成功だった。数としては比較することはできないわけだが、FA補強の成功率はジャイアンツとは違い100%と言うことができる。そして近藤選手を獲得した場合も、この100%という数字が揺らぐことはないだろう。
だが間違っても近藤選手の補強を、森捕手流出時の保険としてしまってはいけない。ライオンズが来季日本一になるためには、森捕手の存在は絶対不可欠だ。森捕手がいて、そこに近藤選手が加わるからこそこのFA補強にも意味が生まれて来る。仮に近藤選手を獲得できたとしても、森捕手を流出させてしまっては本末転倒だ。
森捕手の契約交渉は、一部では西武球団は6年契約を提示していると言われている。だがこれに関してはまだ根拠となる情報に乏しいため真実かどうかは分からない。とは言え森捕手の実力と年齢を考えれば、6年契約を提示しても6年後はまだ33歳で力が衰えるような年齢ではないため、6年という条件提示もあながちただの噂ではないのかもしれない。
FA宣言は11月9日に締め切られ、その後FA宣言した選手たちは所属球団以外の球団との交渉も可能になる。ライオンズ以外の移籍先候補としては地元大阪のオリックスと、森捕手が憧れている阿部慎之助コーチがいる巨人が挙げられている。だが渡辺久信GMであれば、必ずや森捕手の決断を残留に傾かせる説得をしてくれるはずだ。
現在の投手力に加えて森捕手が残留し、近藤選手を獲得し、さらには打てる外国人助っ人が加入してくれれば、来季のライオンズは優勝候補の筆頭として頭一つ分抜き出て来るだろう。2008年以来の悲願である日本一を達成するためにも、渡辺久信GMには森捕手と近藤選手の両獲りを確実に実現させなければならない。
非常にタフな交渉となるわけだが、ここはもう渡辺久信GMの手腕を信じるより他ない。だが渡辺久信GMであれば、きっと故根本陸夫のように次々と補強を成功させてくれるはずだ。その獲得ニュースを心待ちにしながら、筆者もFA動向を見守っていきたい。