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2024年3月 5日公開

首脳陣も多少予測していた増田達至投手の不振と、予測し得なかった前主砲の不祥事

監督が違えば昨季の増田達至投手の起用法も変わっていた

昨季2023年のライオンズの敗因は主に、守護神の不振と主砲の不在だった。まず守護神の不振に関しては勤続疲労や過去のコンディショニングの波を踏まえると、首脳陣も増田達至投手が不振に陥る可能性は決して低くはないと考えていたはずだ。

そして松井稼頭央監督も増田投手の経験値を信頼して早期復調を期待していたからこそ、増田投手を最終回で起用し続けた。だがもしチームが常時首位争いを繰り広げていたとしたら、松井監督も増田投手を一旦守護神から外していただろう。

しかしチームは主砲が不祥事によりほとんど年間を通して不在だったこともあり、シーズンの大半を最下位に転落しないための戦いに費やしてしまった。そんな状況だったからこそ、松井監督も増田投手の復調を待ちながらの起用を続けた。言うべきではないのだが言い換えると、「チームが波に乗れずに低空飛行を続けている間に復調して欲しい」と考えていたということだ。

逆にもしチームが首位争い、もしくはCS争いをしていた場合は、守護神の復調を悠長に待っていることはできない。そのためもし得点力が並以上で常時上位争いをしていたならば、そこから脱落しないための策を講じ、田村伊知郎投手豆田泰志投手を早期から代理守護神として起用していたはずだ。

もちろん昨季は増田投手が逆転されて敗れた試合も複数あったため、もっと早く増田投手に見切りをつけていればAクラス入りできたかもしれない、という考え方もある。だが難しいのは、監督としては大功労者である増田投手の顔に泥は濡れないということだ。野手出身監督ならばそれはなおさらだと言える。

反面投手出身監督の場合は、「調子が悪いのに起用してもらい本当に申し訳ない」と考えながら投げる気持ちを知っているため、例えば東尾修監督や渡辺久信監督であれば、ある程度のチャンスを与えた後ならば、下位争いをしている状況でも増田投手を最終回からは比較的早めに外しただろう。

さらに森祇晶監督や伊東勤監督のような捕手出身監督の場合は、考え方が他者よりも現実的になる傾向が強い。そして最も冷静な判断を下せるのも捕手出身監督の特徴であるため、調子が悪いと判断したら、よほど投手コーチから待ったがかからない限りは、昨季の増田投手の状態であればシーズン序盤に守護神をスイッチしていただろう。

プロは実力がすべて、と言われることもあるが、実はそんなことはなく、上述のように人間味溢れる采配が執られているケースも多いのだ。

山賊のように西武ファンの心を逆撫でした元山賊打線の主砲

さて、冒頭でも書いた通り首脳陣は増田投手が不振に陥る可能性に関しては、ある程度は計算に入れていたはずだ。だが四番を打つはずだった主砲が不祥事によりシーズンをほぼ全休してしまう状況は、誰も予測しなかったはずだ。もちろん野球には予測不可能なドラマも起こりうるわけだが、しかし不祥事による全休はそのドラマに含めるべきではないし、防ごうと思えば100%防げたことだった。

だが不祥事を起こした当該選手にその気がなかったため、問題は長期化され、結局西武球団はその選手に高額年俸を支払いながらも試合で起用することができないという、費用対効果0という状況に陥ってしまった。

これが例えば試合中に起こった公傷で試合に出られなくなったのならば話は別だ。この場合であればチームもファンも、誰もが怪我からの復帰を心待ちにするだろうし、グッズ売り場からその選手のグッズが消えることもない。つまり試合に出られなかったとしても、人気選手であればグッズの売り上げによりある程度の貢献はすることができるということだ。

だが昨季不祥事を起こした選手に関してはそうではなく、グッズはもちろんのこと、球場や駅などに掲載されていたポスターの類もすべて撤去せざるを得なくなり、該当選手が広告塔を務めていたビール会社や出身校も対応に追われることになってしまった。つまりこれは費用対効果が0どころか、大きくマイナスに傾いてしまったということだ。

それにしても不祥事を起こしたこの選手は、ライオンズファンからすると本当に人柄を疑ってしまうような行動を続けている。先日行われた練習試合でこの選手はホークスのユニフォームを纏い、ライオンズのルーキーである武内夏暉投手からホームランを放ったわけだが、あろうことかライオンズ時代に披露していたホームランパフォーマンスをして見せたのだ。

この選手のこの行動はライオンズのみならず、ライオンズファンに対しても敬意のカケラも感じられないものだとは言えないだろうか。もし仮にこの選手がホームランを打ったこの時、ライオンズファンが大勢いたスタンドに向かって深々と頭でも下げていれば、ライオンズファンの気持ちも多少なりとも鎮まっただろう。しかしこの選手の行動はライオンズファンの気持ちを逆撫でしただけだった。

チームを勝たせてくれるタイプの新主砲ヘスス・アギラー選手

ヘスス・アギラー選手

だがライオンズファンはもう二度と、そのような心ない選手の行動に振り回される必要はない。なぜなら今季ライオンズに加入してくれたヘスス・アギラー選手は心優しきスラッガーだからだ。

練習中も常に周りに目をやって、カリブ海から来たチームメイトのみならず、日本人選手に対しても気を遣ってくれている。そして熱心にチームの一員になろうとする姿にも感銘を受ける。アギラー選手は不祥事を起こした前主砲とは異なり、「自分が打てればそれでいい」という姿勢は一切見せない。入団会見でもコメントしていたように、とにかくチームの勝利を最優先にしていて、そのために自分は何ができるのか、という順番で考えている。

一方前主砲は「自分が打てばチームは勝つはずだ」というように、常に自分ファーストでコメントしていた。だがホームラン王を獲った年でも、CSではホークス相手にまったく打つことができず、リーグ二連覇を果たしながらも日本シリーズに駒を進めることさえできなかった。

だがアギラー選手はチームを勝たせてくれる選手だ。バッティングを見ていても常に長打狙いではなく、1点が重要になってくるような場面では、走者がいるとその走者をとにかく先の塁に進めるバッティングを見せてくる。その姿はまるで若かりし頃の清原和博選手を見ているようだ。

清原選手もライオンズの黄金時代には、常に個よりもチームの勝利を優先していた。もしあの頃清原選手が個を優先していたならば、幾度もホームラン王に輝いていただろう。だが清原選手はチームが勝つためには、ホームランよりも必要なものがあることをよく理解していた。だからこそライオンズは四番清原和博選手を中心にして勝ち続けることができた。

アギラー選手はデストラーデ選手タイプでも、カブレラ選手タイプでも、メヒア選手タイプでもない。筆者はアギラー選手はファーストの守備の巧さ、そして打席での考え方からして、清原選手タイプだと考えている。つまり前主砲とは異なり、チームを勝利に導くことができる四番打者タイプだと言える。

アギラー選手は今季、最低でもある程度の好成績を残すことができるだろう。だが年間を通してみれば、不振に陥ることもあるはずだ。だがそうなったとしても、チームもファンもアギラー選手を責めることはしないだろう。この点は、不祥事を起こす前からアンチが非常に多かった前主砲とは大違いだ。

現在松井監督は、アギラー選手を三番にするか四番にするかというところで試行錯誤しているようだ。日本野球的考え方であれば、アギラー選手には四番にどっかりと座ってもらった方が打線にも落ち着きが出るようにも思える。だが出塁率を見ると、現状ではフランチー・コルデロ選手よりもアギラー選手の方が高くなりそうな雰囲気がある。

そうなるとアギラー選手にはホームランを打ってもらいながらも、ホームランにならなかった際にはヒットで出塁をして、コルデロ選手の前にチャンスメイクしてもらうという役割も考えられる。ここで例えばもう一人日本人スラッガーの存在があれば、四番アギラー選手、五番コルデロ選手という並びにもさせやすいのだが、現状のライオンズには安心して三番を任せられる選手がまだ育っていない。

この状況になってくると、クリーンナップを三番から五番という三人で考えるよりは、アギラー選手を三番に据えることによって、試合開始早々一番から四番までの間にスピード感溢れる攻撃をし、とにかくまず1点を先に取るという野球というのも勝利のためには十分効果的だと言える。

そして五番には例えば佐藤龍世選手らを据え、六番打者的な役割を与えて育成していくという手もありだろう。だが佐藤龍世選手は昨季後半は栗山巧選手レベルの高い出塁率をマークしているため、昨季の流れのまま開幕を迎えられれば、三番佐藤龍世選手という並びも悪くはないと筆者は個人的には考えている。

だがいずれにせよそのあたりもすべて、主砲アギラー選手が何番を打つかによって変わってくることになる。しかしアギラー選手が何番を打つにせよ、アギラー選手は間違いなくチームを勝たせてくれる主砲となるだろう。これに関しては現時点において、筆者同様に疑いを抱いていないライオンズファンが大半なのではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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