2024年10月29日公開
西武球団は新たに3選手への戦力外通告を行なった。その3選手とは鈴木将平選手、宮澤太成投手、そして野田海人捕手だ。この中で宮澤投手と野田捕手に関してはすでに育成契約が打診されており、本人たちが望めば来季もまたライオンズのユニフォームを着ることができる。
だが鈴木選手に関しては今のところ育成契約が打診されたという情報はなく、そもそも来季27歳になるという年齢と、今年1月に受けた左肘のクリーニング手術は試合でプレーできるまでに回復したことを考えると、育成契約に切り替える理由があまり見当たらない。
宮澤投手に関しても来季は26歳となるわけだが、制球さえまとまるようになればリリーバーとして一軍で通用する可能性があると球団は判断したのだろう。185cm、95kgという立派な体格はアドバンテージにもなるし、徳島インディゴソックス時代には155km/hをマークし、フォークボールも135km/h以上の速度で大きく落ちていく。ただ今季は二軍で15イニングスを投げて13四死球と制球難を露呈しているため、これを徹底的に克服させるために育成に落とすという判断がなされたのだろう。
そして野田捕手に関しては来季はまだ20歳(学年的には21歳)の高卒2年目の選手で、この10月には両膝の手術を受けている。そのため野田捕手に関しては純粋に怪我が治るまでは育成契約でじっくりリハビリに励んでもらうということなのだろう。
しかし鈴木将平選手の戦力外には驚かされた。特にライオンズは外野のレギュラーが1人もいない状況が続いており、鈴木選手にもその枠を目指す資格は十分にあったように思える。だが今季の成績を見ると打率.191、出塁率.233と、自らを「典型的な一番打者タイプ」と評価しているのにもかかわらず、一番打者らしい姿を見せることはできなかった。
だが果たして鈴木選手が戦力外となった理由はこの数字だけが原因だったのだろうか。上述の通り鈴木選手は今年1月12日に左肘のクリーニング手術を受けている。この手術は鈴木選手の地元である静岡県の病院で行われたわけだが、筆者は個人的にはこの病院の場所と、手術を受けたタイミングに疑問を抱いていた。
まず手術ということになると、通常は西武球団のかかりつけ医がいる病院で行われる。なぜなら基本的にはこの手術費用は球団が支払うからだ。だが鈴木選手はなぜか地元静岡で手術を受けることにこだわったらしい。そしてタイミングに関しても1月12日というのは遅すぎだ。もちろん年末年始で急に痛くなったというのなら話は別なのだが、鈴木選手の肘の状態が芳しくないというのは、2023年のシーズン終了時にはすでに西武球団は知っていたという情報もある。
プロ野球という世界も実は一般企業と同様で、雇う側に「面倒臭い」と思われる選手は戦力外になりやすい。これはやや穿った見方ではあるが、西武球団は球団のかかりつけの医者に早い段階でクリーニング手術をしてもらうよう勧めたが、それを鈴木選手が判断を遅らせ、しかも西武球団とはまったく関係ない病院で手術を受けることにしたことで、鈴木選手は「面倒臭い選手」と思われた可能性も0ではないだろう。なおかつそんな状況で開幕には間に合わず、成績も低迷したのだからなおさらだ。
そして「面倒臭い選手」として戦力外通告を受けた名のある選手としては、ライオンズではG.G.佐藤選手がそれに当たる。G.G.佐藤選手は受理はされなかったものの、2007年に年俸調停を申請している。なおかつ西武球団では初となる代理人交渉を強行し、西武球団側からは「面倒臭い選手」というレッテルを貼られてしまった。
G.G.佐藤選手はアメリカのマイナーリーグでプレーしていたわけだが、その時のやり方をそのまま日本で行なってしまったのだ。しかし残念ながら日本とアメリカではシステムも風土もまったく違う。アメリカのやり方そのままで何かをやろうとしても、日本では受け入れられないことがほとんどだ。
筆者個人としてはG.G.佐藤選手は同学年だし、出身地も隣り合った区と市だったため大好きな野球選手の1人だった。だが雇う側ということになると、契約更改などただでさえ大変な作業をスムーズに終わらせられない選手は敬遠されがちだ。逆にかつての潮崎哲也投手や西口文也投手のように、契約更改で提示される条件に一切首を横に振らない選手というのは逆に厚遇されやすい。
もしかしたら鈴木選手は、G.G.佐藤選手のように何らかの理由で「面倒臭い選手」と思われてしまったのではないかと考えられるほど、戦力外にするには惜しい選手だ。最悪でも現役ドラフト要員としては十分な魅力がある選手がこうして戦力外ということになると、どうしても穿った考えが頭をよぎってしまうものだ。そして奇しくも鈴木将平選手が背負ったのは、かつてはG.G.佐藤選手が背負った背番号46番だった。