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2024年9月 5日公開

長谷川信哉選手が5年間不在となっている西武の一番打者問題を解決してくれる!

5年間も不在となっているリードオフマン問題を解決するのは誰?!

やはり今季もライオンズのリードオフマン問題は解決しなかった。もちろん問題はリードオフマンだけではないわけだが、しかしリードオフマンに関しては2019年オフに秋山翔吾選手がメジャー移籍して以来、不在の状況がもう5年も続いている。これだけ長期間一番打者が固定されないという状況も非常に珍しい。

本来であればここに、今季限りで引退することになった金子侑司選手が収まるべきだった。金子選手は盗塁王を獲得したことからも、まさにリードオフマンとしての能力を持った選手だったと言える。だが残念ながら怪我にも泣かされ、近年は盗塁数も激減し、打率もなかなか上がらない状況が続いていた。

では金子選手が引退してしまう今、その他にリードオフマンタイプの選手はいるのだろうか?盗塁王の獲得経験ということで言えば源田壮亮主将がいるわけだが、源田主将はどちらかと言えばリードオフマンというよりは、リードオフマンをサポートする二番というポジションが適している。野球をよく知っているし、周囲を見渡しながらプレーすることもできるからだ。

積極果敢にスタートを切って行かせるよりは、源田主将にはかつての栗山巧選手のように、一塁に俊足走者がいれば追い込まれるまでは盗塁のアシストをするという役割を求めたい。なぜなら源田主将は追い込まれた後でもしぶとく粘ることができるからだ。

ここで仮に粘ることができない打者が二番に入ってしまうと、盗塁のアシストまではできたとしても、2ストライク後は簡単に一死を献上してしまい、送りバントをしたのと同じ状況になってしまう。一番・二番の理想的な仕事としては、一番が出塁して盗塁し、二番打者がシングルヒットで無死三塁一塁という状況を作ることだ。これは野球では満塁よりも、実は三塁一塁の方が得点できる可能性が広がるためだ。この状況を最も上手く作ることができたのが片岡易之選手と栗山巧選手の一・二番コンビだった。

ここで源田主将の2ストライク後の打率を見ていくと、0-2でも.257、1-2だと.227、2-2だと.247、3-2だと.250というように、追い込まれてもほぼ4打席に1回はヒットを打つことができているのだ。これを例えば長谷川信哉選手の同じ数字を見てみると、0-2が.182、1-2が.125、2-2が.000、3-2が.118という数字になっており、ほとんどヒットを打つことができていない。つまり追い込まれてから粘ることができないため、長谷川選手にはいわゆる典型的な二番打者タイプの仕事はまだ任せることはできない、ということになる。

しかし長谷川選手は0-1というカウントだと打率が.391、1-1だと.333というように、追い込まれる前は良い数字を残しているのだ。ということはかつての片岡易之選手のように、初球から積極的に振っていくタイプの一番打者になれる可能性は秘めている。ただし今季に関しては初球打ちの打率は.083となっているため、このあたりに関してはもう少し相手投手の傾向を学ぶ必要があるだろう。

現在のライオンズの中で一番打者タイプとされる打者たちの今季の成績

一軍に戻ってきてからの長谷川選手は、ここ数試合はずっと一番打者として起用されている。長谷川選手の打者としてのタイプを見ると、上述のように一番というポジションはフィットしているようにも見える。確かに昔ながらの一番打者のように、ファールで刻みながらできるだけ多くのボールを味方に見せる、という役割に関しては難しいわけだが、しかし現代野球ではそのようなタイプの一番打者はほとんど絶滅危惧種となっている。

ライオンズで言えば片岡易之選手や秋山翔吾選手のように積極的に打っていき、あわよくばシングルではなくツーベースヒットで一気に二塁まで進むという攻撃が現代では主流だ。盗塁をせずに二塁まで進むことができれば、二番打者は追い込まれる前の甘いボールを狙っていくこともできるため、二番打者の打率を上げることも可能になる。これが、2008年の二番打者を務めた栗山選手の打率が高かった理由の一つだ。

さて、現在のライオンズでリードオフマンタイプの打者というと長谷川選手、鈴木将平選手蛭間拓哉選手松原聖弥選手あたりになるだろうか。しかしいずれの選手も安定感には欠けており、この中では蛭間選手が.224を打っているだけで、他の3人の打率は軒並み1割台となっている。蛭間選手自身は一番や三番としての役割が得意と話しているため、それならば一番打者をしばらく任せてもいいのではないかとも思われるが、本格的に一番起用されたことはまだない。

確かに蛭間選手の場合、状態が良いと今年の5月の.381、6月の.333というように得点圏打率が非常に高くなるため、首脳陣としてはポイントゲッターとして起用したいという思いが強いのだと思う。特に今季のように外国人打者がまったく機能していない状況の場合は尚更だろう。

そしてライオンズファンの中で期待値が非常に高いのが鈴木将平選手であるわけだが、鈴木選手の場合は四球が非常に少ないことから、出塁率がなかなか上がらないという弱みがある。もしこの鈴木選手の選球眼が良くなれば四球も増え、同時にボールの見極めも上手くなりミート力も上がっていくと思われるため、この辺りは来季以降の課題となっていくのだろう。

そして今季6月に若林楽人選手との交換トレードでライオンズ入りした松原選手に関しては、ジャイアンツ時代の二軍での状態とほとんど変わらない状態となっている。初球に甘いボールが入って来た時は本能で振り抜き打率も.375となるのだが、今季の通算打率は.123となっており、投手にボールを投げさせるほど松原選手の数字が低下していくというのが特徴だ。

来年1月に30歳になる松原選手が未だこのようなバッティングをしているところを見ると、さすがに今後もこの傾向が急に変わっていくということは期待しにくい。そのため松原選手の場合はリードオフマンというよりは、1打席の集中力に賭ける代打の切り札としてのポジションを切り開いていくのがいいのではないだろうか。

代打の場合、もちろんじっくりとボールを見る打者もいるわけだが、それよりもファーストストライクから臆せずガンガン振っていける打者の方が代打率は上がる傾向にある。また、松原選手の場合は盗塁する能力も決して高いとは言えないため、そのあたりを見てもリードオフマンを任せるには心許ない。もちろん打率.300前後で二塁打を打てる秋山翔吾選手のようなタイプであれば話は別であるのだが。

近い将来坂本勇人選手のような好打者になる可能性を秘める長谷川信哉選手

近い将来坂本勇人選手のような好打者になる可能性を秘める長谷川信哉選手

ここ数試合は長谷川選手の一番起用が続いているライオンズであるわけだが、しかし渡辺久信監督代行としては一軍での数字を見て、長谷川選手が一番に相応しいから起用しているというよりは、他にいないから長谷川選手を一番にしている、というのが現状だと思う。だが長谷川選手にとってはこれは大きなチャンスだ。

一番打者というのは、打者9人の中で最も多くの打席に立つことができる。長谷川選手からすれば、一軍クラスのボールを1球でも多く見られるという経験を積めるため、もし残り試合でもずっと一番起用が続いていった場合、秋季キャンプ以降では長谷川選手は急成長を遂げていくのではないだろうか。

ちなみに長谷川選手は今季はファームでは打率.321を打っており、18盗塁に対し失敗は僅かに2つだけとなっている。つまり盗塁成功率は90%となっており、ファームでのこの数字を見る限りは今のライオンズの中では最もリードオフマンになれる可能性を秘めている選手だと言える。あとは二軍で見せて来たプレーを、どれだけ一軍でも見せられるかという点が今後の鍵だ。

そのためにも必要なのがより多くの一軍投手との対戦だ。対戦を重ねることによって自分の中に配球のデータを記憶していき、それを打席で生かすことによって相手投手に対する対応力を磨いていくことができる。長谷川選手はまだまだ追い込まれると、外に逃げていく変化球を簡単に振らされてしまうことが多い。これに関しても場数を踏むことで、「追い込まれたらピッチャーはそういう配球をして来る」、というデータをどんどん自分の中に記憶していき、それを重ねることにより、カウントごとのバッティングを本能的に変えていけるようになる。

考えながら打席に立っているうちは打率が上がることはない。考えていいのは、投手が捕手からの返球を受ける時までだ。それ以降でも考え込んでしまうようでは体の反応が遅れてしまい、相手バッテリーの術中にハマることが多くなる。

「こうなったらこうやって打つ」、と考えながら打つのではなく、「こうなったら体が勝手にこう反応する」、という状態になってくると、打者は面白いようにヒットを打てるようになる。それこそかつての秋山翔吾選手のように。

なお長谷川選手は2年連続でジャイアンツの坂本勇人選手の自主トレに参加している。そこで坂本選手からステイバックを教わっているはずなのだが、もし長谷川選手がステイバックでバットを振れるようになれば、間違いなく打率3割を簡単に超えていくようになるはずだ。

だが残念ながら長谷川選手はまだステイバックでは打ててはいない。これは恐らくは下半身の鍛錬が足りないためだろう。ステイバックというのは、下半身の力を最大限使っていく必要があるため、下半身がしっかり鍛えられていない選手はステイバックを身につけることはできない。例えば浅村栄斗選手にしても、熊澤とおるコーチから個人指導を受けたステイバックを身につけるために必要な筋力を数年かけて作っていった。その結果タイトルホルダーへと進化していった。

長谷川選手も183cmで85kgと、プロ野球選手としては細い部類に入る。この85kgという体重があと1〜2kg下半身の鍛錬によって増えていけば、来季は坂本勇人選手のようなステイバックを見せ、全盛期の坂本勇人選手のように軽く打率3割を超えていく選手になっていくはずだ。そして筆者はそのような未来を予測しながら、残り試合で一番を打つ長谷川選手の1打席1打席に注目していきたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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