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2024年9月12日公開

野村ID野球を知り尽くす二人が西武打線を蘇らせるかもしれないというロマン

日本人左腕が背負うことで趣が生まれる背番号47番

ほろ苦デビューとなった杉山遥希投手のプロ初登板

残念ながら高卒ルーキー杉山遥希投手のプロ初登板初先発は良い結果にはならなかったが、しかしライオンズファンからすると、背番号47番を背負ったサウスポーが投げている姿を見ると感慨深いものがある。

黄金時代の背番号47番と言えばもちろん工藤公康投手だ。西鉄時代は捕手のイメージが強かった47番が、工藤投手の活躍によりサウスポーエースの代名詞となっていく。そして工藤投手がFAで去ると、47番は新人右腕寺本投手に引き継がれることになるのだが、残念ながら西口文也投手を追いかけた寺本投手が一軍で活躍することはなかった。

そして寺本投手が若くして引退となると、その後はまたルーキー細川亨捕手が4年間背負うのだが、帆足和幸投手が47番を希望したこともあり、細川捕手は1年間だけ30番を背負い、その後は27番を付けることになっていく。

帆足投手がFA移籍した後はルブラン投手、バンヘッケン投手という外国人左腕が47番を背負ったわけだが、やはり日本人左腕が背負う47番のような趣は、あまり活躍できなかったということもあるが、彼らからは感じられなかった。

しかし今日の試合を見ていると、やはり日本人左腕が47番を背負っている姿を見ると工藤公康投手を彷彿させる。プロ初登板こそほろ苦デビューとなってしまったが、投げているボールを見ていると非常に良いボールも少なくなかったため、安定感や変化球の精度を高めることができれば、近い将来一軍のローテーションに加わって来る可能性は非常に高いと言える。

ライオンズの横浜高校出身の投手と言えば松坂大輔投手に涌井秀章投手と大エースが揃っている。杉山投手にもいつかこの大先輩たちに追いつけるようなピッチャーになっていってもらいたい。

ずば抜けて高い野球IQの持ち主がライオンズ打線を蘇られる!

さて、打線に目をやると今日は12安打を放ちながらも僅か3得点にとどまってしまった。再三チャンスを作るもその後は併殺打であったり三振であったりと、相手バッテリーの注文通りの凡退を繰り返してしまった。やはりこのあたりは打撃陣の技術不足もさることながら、バッテリーの攻め方を予測してボールを待てないという、野球IQの低さも影響していると思われる。

野球というのはメンタル競技に分類されており、メンタルスキルや思考力の高さが成績を大きく左右していく。これはプロでもアマチュアでも、練習でも試合でも同じことが言え、上手く考えながらプレーできない選手、考えることそのものができない選手というのは選手として成長できないし、できたとしても頭打ちが早くなる。

そして捕手というのはグラウンド上の頭脳とも監督とも呼ばれるほど、誰よりも考えながらプレーしなければならないポジションであり、さらに言えばバッテリーというのは、投手と捕手の二人で考えながら配球を決めていく。投手と打者の勝負というのは実は一対一ではなく、このように二対一の勝負になるのだ。そのため考えられない打者というのはバッテリーからすると抑えるのが本当に楽なのだ。

もちろんライオンズの打撃陣も考えてはいるのだと思う。だが一軍レベルの思考力かと言われれば、そうじゃないから勝負どころであと1本が出ないと考える方が自然だ。つまりライオンズ打線をプロの一軍レベルにするためには、当然スウィング数を増やす必要もあるわけだが、それ以上に野球脳を鍛えられる指導者の存在が必要となる。

例えば渡辺久信GMはかつて、スワローズで一年間だけ宮本慎也選手とチームメイトだった。その宮本氏は現在プロ野球の指導者としてはフリーであるわけだが、指導者として厳しさを持ち、野球IQもずば抜けて高い宮本氏が来季ライオンズの監督を務めることになれば、ライオンズの打撃陣は大幅にレベルアップしていくことも可能だろう。

まだプロに入りたてだった頃の宮本選手というのは、バッティングに関してはかなり酷評されていた。だが野球IQの高さにより上手く狙い球を絞り、打てる球を好球必打でしっかりと打っていくことで通算2133本のヒットを積み重ねていった。さらに言えば今季のライオンズのバント成功率は非常に低かったわけだが、宮本氏はNPB歴代1位の年間67犠打という記録の保持者でもある。

今のライオンズにはもしかしたら、野村IDを熟知する宮本慎也氏のような存在が必要なのかもしれない。そして一年だけとは言え同じユニフォームを着たことがある渡辺久信GMであれば、宮本氏を招聘することも不可能ではないはずだ。

野村IDを知り尽くす愛弟子がライオンズ打線を蘇らせる!

渡辺久信GMは、一年間だけでも野村IDを経験したことがその後の野球人生に大きく影響した、というようなことを以前に語っている。実は現役時代の渡辺久信投手というのは非常に柔らかい筋肉の持ち主であり、先発して完投した日でさえもマッサージせずに帰り、翌日にはケロッとしているタイプの選手だった。

一方の工藤公康投手は登板後はマッサージを受けないと翌日以降に疲れが残るタイプで、この二人はまさに両極端とも言える存在だった。そして類稀な良質な筋肉を持った渡辺久信投手は、体のメンテナンスという面では工藤投手と比較すると力を入れておらず、ノーヒットノーランを達成したあたりの晩年には、もうすでに少しお腹が出ているような状態だった。

キャンプでもシーズン中でも怪我することなくとにかく投げまくっていた渡辺久信投手だったわけだが、晩年になってそれだけではダメだったと気づいたのだと言う。野球というのは頭を使ってプレーすることによって選手寿命を伸ばすことが可能で、スワローズでそれを学んだからこそ、台湾で選手兼任コーチとしてプレーした際は、台湾球界のレベルが日本ほどではなかったこともあり、まさに無双状態の活躍を見せることができた。

誰もが羨むような体質だった渡辺久信投手でさえもそのようなことを実感していたのだから、渡辺久信投手よりも体が硬く怪我にも弱い現代のライオンズの選手たちは、他の誰よりも頭を使いながら野球をしなければならないはずだ。そしてそれができなければ、来季もまた同じように勝負どころで1本が出ない打線のままシーズンを終えることになるだろう。

筆者個人としては背番号41番を背負った渡辺久信監督の姿を見てみたいわけだが、しかしあまりにも脆弱な打線のことを考えると、来季は野手出身監督の方が良いのかもしれない。それも松井稼頭央監督のような優しい人柄の監督ではなく、選手に対して言うべきことはガンガン言っていける指導者である必要がある。

例えばもし可能なのであれば、宮本慎也監督と古田敦也ヘッドコーチのコンビをライオンズで見てみたい気もする。この二人の恩師である故野村克也監督はライオンズのユニフォームを着て現役を退いている。そのライオンズのユニフォームを、今度はこの愛弟子である二人が纏うというのも、またロマンがあって良いのではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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