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2023年12月17日公開

かつての絶対的守護神の背番号を継承した新守護神候補、田村伊知郎投手

来季からかつての絶対的守護神の背番号を譲り受ける田村伊知郎投手

田村伊知郎投手

今オフ、田村伊知郎投手の背番号が40番から20番に変わり、その背番号に対する強い意志表示として、田村投手は来季守護神の座を目指していくことを明言した。これはライオンズファンとしては非常に心強い言葉だ。

ライオンズの背番号20と言えば、かつては絶対的守護神豊田清投手(現投手コーチ)が背負っていた栄光の背番号だ。まさにライオンズの守護神として相応しい番号の一つであり、田村投手が来季本当に最終回のマウンドを任されるようになれば、ライオンズファンの多くがかつての絶対的守護神の姿を田村投手に投影することになるだろう。

田村投手が一軍に定着し始めたのはプロ4年目の2020年だった。その年は31試合、翌年は22試合と、少しずつ経験を積んでいったわけだが、2022年に関しては肩痛やその他体の痛みに悩まされ、一軍では3試合の登板に終わっている。

だが肩痛が癒えた今季2023年は24試合に登板し、2勝1敗1S6H、防御率1.52というキャリアハイの成績を残すことができた。WHIPに関しても0.93という素晴らしい数字をマークしており、1イニングあたり0.93人しか走者を許していない。これは先発投手だったとしたらスーパーエース級の数値だ。

田村投手が入団した頃は、失礼ながらピッチングパフォーマンスはやや地味かなという印象だった。絶対的なウィニングショットがあるわけではなく、球速も決して現代のプロ野球では速い方とは言えなかった。

だが田村投手は非常にクレバーで、入団当初のパフォーマンスがそれほど目立つものではなかった分伸び代が豊富にあり、その伸び代を持ち前のクレバーさでどんどん伸ばしていき、それが実を結び始めたのが2020年、26歳のシーズンだった。

クレバーな田村伊知郎投手に合っていたドライブイン・ベースボールでの経験

2024年の来季は、田村投手は30歳を迎える。もはや若手と呼べる年齢ではなくなったわけだが、もし来季田村投手が最終回を任されるようになった場合、まさに遅咲きの守護神と呼ぶことができるだろう。

田村投手の特徴としては、身長が173cmとプロ野球選手としては小柄な分、重心をより低くして投げることができている。筆者のイメージとしては、かつてファイターズで活躍した170cmの守護神、武田久投手とよく被る。

重心に関しては武田投手の方が田村投手よりも低かったわけだが、それでも田村投手もしっかりと重心を下げた状態で投球フォームを進めていくことができるため、低めに強いボールを投げることができる。

ストレートの球速としては150km/h出るか出ないかというところで、現代のプロ野球では決して目にも止まらぬ速さというわけではない。球速面ではアブレイユ投手ヤン投手と比べるとかなり見劣りする。だが球質に関しては決してこのふたりのドミニカンに劣ってはいない。

田村投手は2019年オフにシアトルのドライブイン・ベースボールに派遣されたわけだが、その直後から球質がどんどん良くなっていった。球質というのは、ストレートのバックスピンの回転軸がより水平に近く、回転数が多くなると良くなっていく。

ドライブイン・ベースボールではあらゆるアプローチによりこの回転軸と回転数を上げながら球質をアップさせ、同時に制球力・球速もアップさせていくわけだが、田村投手はここに派遣された翌年から一軍で活躍できるようになった。

ドライブイン・ベースボールのコーチングは非常に理論的であるため、田村投手のようにクレバーな投手によく合っている。逆に完全に体育会系のノリで練習してしまう選手は、ドライブイン・ベースボールのような理論的なコーチングを受けてもなかなか理解することができず、結果的にフォームに理論を落とし込むことができないことで挫折することが多くなる。

ちなみに田村投手は立教大学では教員免許も取得しており、まさに文武両道と呼ぶに相応しい選手だ。筆者もプロコーチという職業柄よく分かるのだが、国語の理解力が低い選手はいくら素晴らしいコーチングを受けてもそれを活かせないことが多い。

それは小学生でもプロ野球選手でも同様だ。実際に筆者がパーソナルコーチングをしたあるプロ野球選手は、筆者と出会うまでは本当に日本語を知らなかった。敬語も出鱈目だし、漢字の読み書きもできなかった。だが筆者が本を読むように進めて以来国語力が少しずつ付いていき、筆者の理論的なコーチングを理解できるようになり、その後タイトルを獲得できるまでに至った。

そういう意味では田村投手は元々クレバーであったため、ドライブイン・ベースボールでの経験を誰よりも活かせた選手のひとりだった。

田村伊知郎投手が守護神を務めることでさらに強化されるブルペン陣

上述した通り、背番号20はかつて豊田清投手が背負った栄光の背番号だ。その豊田清投手は今ではライオンズのチーフ投手コーチという立場になり、まさに田村投手を指導する存在だ。

豊田投手は先発もリリーフも経験しているまさに百戦錬磨の投手であり、その経験値と背番号を譲り受けることができるのは、これは田村投手にとっては本当に大きな財産となるだろう。

豊田清投手も、決して人並外れた投手ではなかった。例えば豊田投手が活躍していた頃には怪物松坂大輔投手や、魔球スライダーを投げていた西口文也投手、さらには魔球シンカーを操る潮崎哲也投手という錚々たる顔ぶれがピッチングスタッフを支えていた。

そのようなメンバーに囲まれながらも、豊田投手は手術を経ながらも体を強くし、球速を上げ、フォークの落差を磨き、ライオンズ史に名を残す名守護神になっていった。

田村投手も守護神にとって大きな武器となるフォークボールを持っているし、ストレートの球質は球速表示以上に素晴らしい。来季守護神を任せたとしても十分仕事を果たし、30Sを超えていくような投手になれるだろう。

だがライバルも多い。アブレイユ投手はもちろん、豆田泰志投手投手も守護神の座を虎視眈々と狙っている。そして当然田村投手が追いかける現守護神、増田達至投手の存在もある。

このような強力なライバルたちを凌駕し、ぜひ田村投手には来季からでも新守護神として背番号20に相応しい活躍を見せてもらいたい。田村投手が守護神に固定されて、増田投手・アブレイユ投手・豆田投手らがセットアッパー役に回っていけば、ライオンズのブルペンはリーグ屈指の強さを誇っていくだろう。

つまり田村投手が守護神を務めることによりブルペン陣はさらに強化され、チームもさらに優勝に近い位置に立てるようになるということだ。そのような未来予想図を実現させ、来年の秋はぜひ田村投手には日本一の胴上げ投手になっていてもらいたい。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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