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2024年1月10日公開

水上由伸投手が2023年不振に陥った原因は跳ね上がった与四球率にあった!

リカバリーに失敗してしまった2年目だった水上由伸投手

水上由伸投手

水上由伸投手が目指していたのは背番号21だった。しかし残念ながらその21番は、今年のルーキー武内夏暉投手が背負うことになってしまった。

もし水上投手が2023年も2022年に匹敵する成績を挙げていれば、もしかしたら21番への変更希望が叶ったかもしれない。だが2022年は新人王に輝く活躍を見せたものの、2023年は右肩のコンディション不良もありストレートは130km/h台後半にとどまり、新人王を獲った時の勢いは感じられなかった。

そのため開幕2試合で無失点だったものの、その内容が良くなかったということですぐに二軍落ちしてしまった。水上投手としては2年連続で活躍して、恩人でもあるスカウト渡辺智男氏がかつて背負っていた21番を奪取したかったわけだが、残念ながらその目標が叶う可能性は限りなく低くなってしまった。

しかしセットアッパーとして今季は開幕から安定したピッチングを続けることができれば、21番はもう無理だが、別の若い番号を与えられる可能性はもちろんある。今シーズンを終えた時、主力投手として相応しい番号を与えられるように、水上投手には今季は開幕から安定したピッチングを見せられるように頑張ってもらいたい。

水上投手は2年目で60試合に登板したわけだが、まだ経験が浅い投手がそこからのリカバリーを上手くこなし、また次の開幕に合わせてベストコンディションに持っていくというのは決して楽なことではない。平井克典投手のようなベテランでも難しいことなのに、2年目を終えたばかりの水上投手にとってはさらに難しいオフシーズンとなっていたはずだ。

しかし2年目のオフシーズンで失敗した経験を生かし、3年目のオフシーズンは上手くリカバリーをしてくれているはずだ。諸先輩方にもアドバイスをもらって、どうすれば疲れを残さず次のシーズンに入っていけるのかということを、人並み以上にケアしながらこのオフを過ごしてくれていると思う。

なぜなら水上投手は自他共に認めるポジティヴパーソンであり、過去の失敗は失敗としてしっかりと受け止め、ちゃんと前を向きながら進んでいけるタイプの選手だからだ。

メンタル強化法を独学したことで常に平常心で投げられるようになった水上由伸投手

野球やゴルフなどは「メンタル競技」と呼ばれており、フィジカル以上にメンタルが影響すると言われている。事実、野球選手以上にそれを理解しているプロゴルファーたちはメンタルトレーニングにも余念がない。だがプロ野球選手となると、まだメンタルトレーニングの重要性を理解していない選手が大半だ。

ライオンズで言えば、今井達也投手が過去にメンタルトレーニングを蔑ろにするような発言をしており、それだけでも現在ライオンズにはメンタルトレーナーが所属していないことが分かる。

ちなみにかつては鋒山丕コーチというメンタルトレーナーがライオンズには在籍していた。鋒山コーチはメンタルトレーニングに関しては日本では第一人者とも言えるほどのコーチだったのだが、残念ながら長期間でのライオンズ所属とはならなかった。鋒山コーチとは筆者も数回お話をさせてもらったことがあるのだが、本当にずっとライオンズで選手たちを支えてもらいたかったと思えるお人だ。

往年のヤンキースの名捕手ヨギ・ベラはこう言っている。「野球の90%はメンタルで、残りの半分がフィジカルだ」と。これはヨギ・ベラが残したアフォリズムの中でも最も有名な言葉で、メジャーリーグでは今もなお語り継がれている。

日本野球は根性論や精神論に関しては熱く説く昔気質の指導者が多いわけだが、スポーツ心理学(メンタル強化)に関しては理解している指導者はほぼいないに等しい。そのため野球選手がメンタル強化を目指すためには自ら独学するか、自ら指導者を探すしかない。そして独学で強いメンタルを身につけていったのが水上由伸投手だ。

水上投手がメンタルトレーニングと出会ったのは、高校時代に専門講師からメンタル強化指導を受けた時だったという。その内容に感銘を受け、大学に進学した後も独学でメンタルトレーニング法を学んでいったようだ。だからこそ水上投手はピンチでも決して動じることなく、平常心でいつも通りのパフォーマンスを発揮することができる。

もしそこでメンタルトレーニングを行っていなかったとしたら、ピンチでは力んでバランスを崩したフォームで投げてしまい、ストレートも走らなくなり、一軍では通用しない投手になっていたかもしれない。それどころかずっと育成のままだった可能性さえあっただろう。不安定なメンタルでは、いくら凄いボールを投げられたとしても一軍で活躍し続けることは難しいのだ。

しかしどんな時も平常心で投げられる水上投手は、右打者の内角にも臆せずシュートを投げ込んでいくことができる。やはり恐れることなく内角を攻めていける投手はしっかりと成績を残すことができる。これは今も昔もプロ野球ではまったく変わらない。

2023年の不調は与四球率の悪化が原因だったとも言える水上由伸投手

2023年、水上投手はわずか23試合、17イニングスのみでシーズンを終えてしまった。数字的にはそれでも防御率2.12と素晴らしいものを残したわけだが、しかしWHIPに関しては2022年の0.91から、2023年は1.53とかなり悪化させてしまった。このWHIPの悪化が2023年の不安定なピッチングにつながってしまった。

WHIPというのは、1イニングあたり平均何人の走者を出すかという指標なのだが、昨季は毎イニング1.53人の走者を許していたことになる。そしてその原因となったのが急増した四球だ。

2022年は56イニングスで17四球、与四球率は2.73だったのだが、2023年は17イニングスで14四球、与四球率は7.41と跳ね上がってしまった。

これは球が走らずに逃げのピッチングになり、交わしに行った球がボールとなってしまうことが多かっただけではなく、2023年は右肩のコンディショニング不良にも悩まされたため、それによってフォームのバランスが崩れてしまった可能性も否めない。

だが2023年終盤のピッチングでは、2022年に近いパフォーマンスを見せてくれていたため、右肩の不安はもうなくなったのだと思われる。そして球速も2023年開幕時は130km/h台後半だったストレートも、シーズン終盤では148km/hを計測するまで走りが戻ってきていた。

2023年終盤のピッチングを見る限り、2024年の水上投手が開幕から安定したパフォーマンスを見せてくれることは確かだろう。そして2024年は、2022年と同水準のWHIPをマークしていければ、水上投手だって熾烈な守護神争いに加わっていくことが十分できるはずだ。

そしてそのような活躍を続けていれば、2024年のオフにはきっと素晴らしい背番号を与えられると思う。若い背番号を背負い、不動の主戦投手となっていくためにも、水上投手にとって2024年は勝負の年となる。万が一でも2023年と同じ失敗を繰り返してしまえば、また当分は69番を背負い続けることになってしまうだろう。

だがそうならないためにも、2024年は一年間セットアッパーとして勝ち試合を任せられる投手で居続けてもらいたい。そして将来的には増田達至投手や平井克典投手が築き上げてきたものを受け継ぐ存在へと成長していってもらいたいというのが、今筆者が水上投手に対し寄せている期待だ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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