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2020年11月17日公開

秋山翔吾選手の穴を意識し過ぎてしまった2020年のライオンズ

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秋山翔吾選手の穴を埋めようとすべきではない

今季のライオンズを総評し、多くの方が「秋山翔吾選手の穴を埋め切れなかった」と語っている。しかし筆者はそうは思っていない。もちろん秋山選手の穴は大きいわけだが、しかしその穴を埋めようとしているうちはチーム力は上がらない。秋山選手の穴を埋められるのは秋山選手だけであり、他の若手選手や外国人選手が簡単に埋められるようなものではない。

ライオンズがもう一度強さを取り戻すためには、秋山選手の穴のことをいつまでも気にするのではなく、新しいチームを作るということに主眼を置く必要がある。日本の場合はフランチャイズプレイヤー(栗山巧選手や中村剛也選手のようにライオンズ愛を誓っている選手)が非常に多いため、メジャーリーグのように毎年チームを新しく生まれ変わらせるという概念はない。それでも以前と比べればFAやポスティングによる移籍は増えたため、いつまでもフランチャイズプレイヤーありきの考え方では常勝球団を作ることはできない。辻発彦監督も渡辺久信GMもそれは重々考えていることだろう。

三振数がホークスよりも多すぎた2020年のライオンズ

今季のライオンズを見ていると、昨季までの野球を引きずり過ぎているように見えた。山賊打線のような荒い野球が毎年毎年通用するはずはない。それも踏まえてライオンズはこの秋、来季の三振数を減らす取り組みを行なっている。しかし実はこの取り組みは、2016〜2018年にかけて橋上秀樹コーチが取り組んでいたことだった。

2016年の1試合平均の三振数は7.5個、2017年は7.2個、2018年は7.7個、2019年は7.6個、2020年は7.9個という数字になっている。ちなみに今季優勝した2020年のホークスの三振数は1試合あたり7個だった。つまりライオンズはホークスよりも、1試合平均1個多くの三振を喫しているということになる。27アウト中の1個と考えれば大した差のようには思えないが、今季は120試合制だった長丁場だと考えれば、単純計算でライオンズはホークスよりも年間120個も多く三振を喫している計算となる(実際には105個)。

例えば無死・一死で三塁に走者がいる場面で、同じように一死増やすにしても、内野ゴロや外野フライでアウトになれば1点入る。しかしこれが三振では得点には繋がらない。この差がまさに今季のホークスとライオンズの差だったと言える。もちろん投手力にも大きな隔たりはあったわけだが、しかしライオンズの売りである山賊打線からの目線で言うならば、この三振数の差は非常に大きかった。

対策が相手よりも僅かに下回ってしまった今季の山川選手と森捕手

近年のライオンズ打線を見ていてよく感じたのが、打者それぞれが「自分の実力を発揮して相手に打ち勝つ」と考えているように見えた点だ。しかしこの考え方は個人種目の考え方であり、野球のような「チーム戦術系」のスポーツでこのように考えてもチームは強くならない。もちろん選手たちはチームの勝利のために必死になっているわけだが、メンタルの持ち方を僅かにでも間違えてしまうと、プロスポーツではまず勝てるようにはならない。

特に山川穂高選手と森友哉捕手のバッティングに関しては、筆者は今季それを強く感じていた。しかしプロ野球では自分の実力を発揮するだけでは勝負には勝てない。実力を発揮しようができまいが、相手よりも一歩上を行くことが重要だ。例えば投手目線で言えば、自分自身の自慢のボールじゃなかったとしても、相手打者の苦手なコースに投げてアウトカウントを増やせればそれで良いのだ。

打者の場合仮に自分のスウィングができなかったとしても、打者それぞれが狙ったボールに対ししっかり対応することができれば、打線は自ずと繋がっていく。今季のライオンズ打線は栗山・源田両選手を除いては、ほぼ「打線」にはなっていなかったように感じられた。ちなみにここでポイントとなってくるのは、打者が不調時のパフォーマンスだ。打者の調子が良い時に打線が自然と繋がるのは当たり前のことであり、問題は打者の調子が落ちている時に、打者自身がどうやって打線を繋げようとするかだ。

山川選手と森捕手に関しては、それに関する対策が相手投手よりも下回ってしまった。もしこの対策が相手チームよりも僅かでも上回っていれば、昨季の本塁打王と首位打者がここまでの大不振に陥ることはなかっただろう。しかしこの対策に関してはこのふたりだけでできることではない。スコアラーの綿密なデータ収集と分析なくしては不可能であるため、もしかしたらライオンズはもう少しデータ活用に長けた人材をチームに招き入れることも必要なのかもしれない。

秋山選手の穴を意識し過ぎてしまったライオンズとファン

さて、ここでもう一度秋山選手の話題に戻っておきたい。秋山選手は攻撃的リードオフマンだったわけだが、ライオンズが来季再びチームを浮上させるためには、このリードオフマンを作り直す必要がある。しかし秋山選手のような若手はいないため、秋山選手の穴を埋めようとしてはいけない。新たなリードオフマンを作るということが重要だ。

走れるという意味では金子選手に期待したいところではあるが、如何せん打てない。守備範囲の広さを考えればオーダーの中には絶対に必要な選手ではあるが、しかし金子選手を前提にリードオフマンを考えることは一度頭から外したい。リードオフマンであればできれば打率は.300打てて足も速い選手がいい。最低限でも.280〜.290は打てなければ、チームを勢いづけることは難しい。

となると誰が1番打者として相応しいのか?個人的にはもう少し安定感が出てきれば、外崎選手などはかつての石毛宏典選手のようなトップバッターになれそうな気配を感じている。ただその外崎選手も今季は安定感に欠いてしまったため、来季はやはり山川選手・森捕手同様にデータで相手を僅かにでも上回る必要があるだろう。

そして流線型打線という概念で考えるならば、1番源田選手、2番外崎選手という打線も悪くはないと思う。源田選手を1番に置ければ3番森捕手、4番山川選手とジグザグ打線を組むこともでき、相手投手としてはなかなか投げづらい打線になる。打線を繋げるという意味では流線型打線は非常に効果的であるため、個人的には一度じっくりとこのオーダーを試してもらえたら面白いのかなとは思っている。

そして攻撃的1番バッターという概念を一度横に置き、秋山選手の穴を埋めるという考えも取り去り上述のように考えていけば、秋山選手の穴そのものも感じられなくなる。ライオンズ自身もファンもメディアも、いつまでも秋山選手の穴を気にしているようでは前には進めない。だからこそ来季は空いてしまった穴を埋めようとするのではなく、新しいライオンズをもう一度最初から作り直すという気持ちでチームビルディングに挑んでもらえたら嬉しい。「秋山選手など最初からいなかった」と、選手たちはこれくらいの気持ちで挑まなければいつまで経ってもホークスに勝つことはできないだろう。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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