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2020年11月28日公開

吉川光夫投手の獲得メリットは左腕不足の解消だけではない!

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三度目のトレードでライオンズ入りした吉川光夫投手

2020年11月20日、渡辺久信GMは北海道日本ハムファイターズの吉川光夫投手を金銭トレードで獲得したと発表した。辻発彦監督が喉から手が出る程欲しいと話していた待望のサウスポーだ。

吉川投手自身、これが三度目のトレードとなる。最初は2016年11月、大田泰示選手・公文克彦投手との交換トレードで石川慎吾選手と共にジャイアンツに移籍した。しかしその3年後の2019年6月、今度は鍵谷陽平投手・藤岡貴裕投手との交換トレードで、宇佐美真吾捕手と共にファイターズに移籍。つまり古巣に出戻ったという形だ。だが移籍後のジャイアンツ、ファイターズではなかなか活躍できず、今度は金銭トレードでライオンズに移籍してくることになった。

吉川投手の近年の成績だけを見ると、確かにこれで左腕不足が解消したとは言い切れない。しかし起用法さえ間違わなければ、2018年の榎田投手のように吉川投手もライオンズで蘇ることができるかもしれない。吉川投手は2021年の来季はまだ33歳で、まだまだ老け込む年齢ではない。あと3〜4年の活躍だって期待することができるだろう。

ライオンズカラーがマッチしそうな吉川光夫投手

吉川投手を復調させるポイントは、やはり援護点ということになるのではないだろうか。パ・リーグMVPを獲った2012年を除くと、吉川投手は9イニングスあたり、だいたい3〜4点取られる防御率となっている。そして制球難というよりは、厳しいところを狙いすぎて四球を出しているように見える場面も多かった。

しかし山賊打線の援護があれば、6イニングスを3点前後に抑えることができれば十分勝ち投手の権利を得ることができる。このように精神的に楽な状況で投げられるようになれば、吉川投手本来の良さも戻ってくるのではないだろうか。

よほどの安定感を見せなければ、来季もライオンズで一年間1軍に居続けることはないかもしれない。しかし2軍には同学年の大石達也投手コーチや、サウスポーで指導経験豊富な杉山賢人コーチがいる。さらにはサウスポーとしてライオンズで復活を果たした2歳上の榎田大樹投手の存在や、大ベテラン内海哲也投手も力になってくれるだろう。このようにライオンズは、吉川投手にとってアドバンテージになる要素が少なくない。

野村再生工場を経験している渡辺-辻コンビの強み

吉川投手は2021年、きっとライオンズで復活を果たしてくれるだろう。渡辺久信GMのチーム作りは的確で、剛腕石井一久GMとはやり方がまったく異なる。分かりやすく言えば、石井一久GMがヤンキース型のチームビルディングならば、渡辺久信GMはアスレティックス型だと言えるだろう。もちろんライオンズはアスレティックスほどデータ活用はできていないわけだが、しかし渡辺久信GMはチームのウィークポイントをピンポイントで補強するのが非常に上手い

例えば近年で言えばドラゴンズで燻っていた小川龍也投手をライオンズの主戦リリーバーに仕立て上げた。そして榎田大樹投手も言わずもがな。野手陣に関しては山賊打線が猛威を振るっているため補強の必要はそれほどなかったが、投手陣の補強は流石だと言える。外国人投手もニール投手、ギャレット投手と活躍を見せてくれている。

吉川投手に関しても、渡辺GMの中で何か確かな理論、もしくは復活させられるという根拠があったからこそ獲得に動いたのだろう。ちなみに渡辺久信GMも辻発彦監督も、現役時代の晩年に野村再生工場を経験している。この時の経験も吉川投手に対する、渡辺-辻コンビの強みだと言える。

吉川投手のライオンズ入りが決まった際、辻監督は心から獲得を喜んでいるような姿を見せた。これは渡辺GMが偶然サウスポーを獲得してくれたから喜んだのではなく、辻監督自身が活かせると確信していた吉川投手を獲得してくれたからこその喜びだったのではないだろうか。恐らくは辻監督の頭の中にはすでに、吉川投手の起用法のイメージが湧いているのだろう。

吉川投手の加入が生み出す左腕陣への相乗効果

2021年、吉川投手が先発を勤めるのかリリーバーになるのかはまだ定かではない。このオフに左肘の手術をした小川龍也投手の回復具合にも左右されると思うのだが、もし小川投手が開幕に間に合わないようであれば、リリーバーとしての調整になっていくのだろう。しかし小川投手が間に合いそうなら、榎田投手のライバルになっていくのだと思う。

吉川投手の加入は榎田投手にとっても大きなプラスになるはずだ。吉川投手の加入により、榎田投手は今まで以上に安定感を見せなければ1軍に居続けることはできなくなる。この相乗効果も決して小さくはないはずだ。

選手を育てるために最も効果的なのは、同ポジションの選手をどんどんぶつけていくことだ。例えば伊東勤捕手を育てるために、ライオンズは次々の捕手の補強をしていった。それにより伊東捕手も反骨精神を高めていき、球史を代表するレベルの捕手へとなっていった。榎田投手と吉川投手にもここから切磋琢磨し、共闘し、どちらかひとりではなく、ふたりとも1軍のローテーションに入り込むくらいの復調を見せてもらいたい。

吉川投手の獲得はサウスポー不足を埋めるためだけではなく、榎田投手・小川投手・武隈投手、そして内海投手に対するカンフル剤としても期待することができる。特にここ3年不振が続いている武隈投手は期するものもあるだろう。今季は深刻な左腕不足に陥ったライオンズだが、来季は吉川投手の加入により、もしかしたら左腕不足が嘘だったかのような左腕王国になっているかもしれない。そんな来季を期待しながら、筆者は吉川投手を応援していきたいと思っている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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