HOME > コラム (213記事) > 2022年のFA戦線で最も有利な立場にいるのは金満球団ではなく西武球団

2022年11月10日公開

2022年のFA戦線で最も有利な立場にいるのは金満球団ではなく西武球団

日本ハム球団は近藤健介選手に本気で優勝しにいく姿勢を示せるのか?!

近藤健介

北海道日本ハムファイターズの近藤健介選手が正式にFA宣言をし、明日11月11日にはすべての球団との交渉が解禁される。現時点で近藤選手の獲得を目指しているのは日本ハムも含め、楽天を除くパ・リーグ5球団となっている。

ファイターズの新庄剛志監督は、2022年に関しては当初から優勝は目指さないと宣言していた。しかし2023年に関してはすでに優勝を目指すと公言している。だが戦力補強などを全体的に観察していくと、この秋の時点では来季ファイターズが優勝できる可能性は高いとは言えない。

まず投手陣に関しては今季は10勝の伊藤投手が勝ち頭で、先発ローテーションが整備されているとはお世辞にも言える状況ではない。打撃陣は近藤選手に加え、松本選手も3割をマークしたが、脅威となる長距離砲は不在だった。清宮選手は18本塁打打ったが打率が.219と低く、新庄監督もシーズン終盤にはレギュラーは厳しいという趣旨のコメントを残している。

エスコンフィールドという新球場に移るとは言え、来季もこの新球場の柿落としを祝えるような戦力を有しているとは言えない。日本ハム球団も新球場を作ると決めた時点で、まさかここまで戦力が低下するとは思っていなかったのではないだろうか。

現在のファイターズは、まるでFA流出が止まらなかった頃のライオンズを見ているようだ。チームとしては当然優勝を目指すと口にはするが、それを可能にする戦力補強がまったく上手くいかず、逆に主力のFA流出が相次ぎ、僅かな期間でチーム力は大幅に低下してしまった。

ライオンズファンはその時のライオンズをよく知っているため、もしも近藤選手が移籍を目指したくなったとしてもその心境はよく分かる。ただし当然ではあるが近藤選手にしろ、森友哉捕手にしろ、これは移籍を前提としたFA宣言ではない。

複数年契約でも成績を下げなかった近藤健介選手と、下げてしまった金子侑司選手

渡辺久信GM松井稼頭央監督も近藤健介選手の獲得を目指すことには非常に前向きだ。そしてそんな中、他球団との交渉解禁を前にしてソフトバンク球団の大型提示額がリークされて来た。4年20億とも、4年30億とも言われているわけだが、4年30億だった場合、年俸は7.5億円となり、これは今季年俸の3倍という破格の金額だ。

しかしいくら何でも近藤選手の成績に対し年俸7.5億円というのは出し過ぎだし、本人からしてもその金額に成績が見合っているとも思わないはずだ。近藤選手は打率と出塁率はリーグトップレベルだが、打点や本塁打数、盗塁数など全体的に見ていくと、その他では特に際立った数字はない。ただし得点圏打率は非常に高いため、安心してクリーンナップを任せられるだけのポテンシャルはある。

一部では森捕手の慰留に失敗しそうだから近藤選手を獲ろうとしているとも言われているが、これも勝手なフェイクニュースに他ならない。渡辺久信GMも全力で森捕手を慰留すると公言しているのだから、少なくとも森捕手が悩みに悩んでしまうような交渉材料がテーブルにはすでに並べられているはずだ。

近藤健介選手に関しては、どうやら複数年契約にこだわりを持っているようだ。だとすれば金額ではソフトバンク球団の4年30億には西武球団は敵わないと思うのだが、しかし常識的な年俸により6年契約などを提示することは可能だ。そして近藤選手の場合、複数年契約は足枷とはならないだろう。

近藤選手は今季でファイターズとの3年契約が終了となったわけだが、複数年契約を結んでいたこの3年間では、今季こそ少し怪我をしてしまったが、成績が目に見えて下降することはなかった。3年間しっかりと安定した数字を残し続けている。

逆に2020年から4年契約を結んでいる金子侑司選手は、複数年契約を結んだ1年目から成績が急降下してしまい、4年間のうちすでに3年間を年俸に見合わない低成績で終えてしまっている。

金子選手のように複数年契約をした途端成績が下がってしまう選手もいれば、近藤選手のように複数年契約を結んでも緊張感を途切らせることなく好成績を残し続ける選手もいる。そのため西武球団も交渉の席では4年と言わず、近藤選手が複数年契約に拘っているのであれば、安心して6年などの長期契約を提示すべきだろう。

そして森友哉捕手に関しても、NPB初の10年契約などを提示しても良いのではないだろうか。森捕手は10年経ってもまだ38歳で、その頃は正捕手じゃないにしてもDHなどでまだまだ打棒を見せつけているはずだ。

1年あたりの年俸額では西武球団はソフトバンク球団には敵わないが、しかし引退する最後まで面倒を見るという姿勢は6年契約、10年契約を提示することによってどこよりも強くアピールすることができる。やはり金額では到底勝てないのだから、西武球団はこのように最後まで面倒を見るという姿勢を示すことで、ソフトバンク球団に太刀打ちしていくしかない。

西武球団は今、他球団よりもFA戦線で優位に立っている

筆者個人としては、今オフはFA戦線においては西武球団は他球団よりも優位に立っていると考えている。まず日本ハム球団に関しては上述の通り戦力が上手く整っておらず、ロッテ球団も2005年以来リーグ優勝からは遠ざかっており、ロッテ球団の場合は失礼ながら、もはや下克上ありきの戦いを目指しているように他球団のファンの目には映っている。

そしてオリックス球団に関しては主砲吉田選手、ソフトバンク球団はエース千賀投手のメジャー移籍が確実な状況となっており、大幅な戦力ダウンは免れない。

一方のライオンズは森捕手の残留が決まれば戦力の流出は今オフは一切なく、投手陣もリーグトップであることから、近藤選手が加入してくれればまさに優勝候補の筆頭に躍り出ることは間違いない。

森捕手も近藤選手もそのような状況の見極めを行なっているはずだ。そしてライオンズナインと懇意にある近藤選手の場合、森捕手と連絡先が繋がっている可能性も高く、ふたりの間で何らかのやり取りがあっても不思議ではない。仮に球団が交渉の解禁前にこれをやってしまうとタンパリングに当たり処罰の対象となるわけだが、選手個人がやり取りする分には問題はない。

これはライオンズにとっては非常に有利な状況だと言える。森捕手は近藤選手が加入するのであればライオンズに残留して優勝を目指す気持ちが強くなるだろうし、近藤選手からすれば森捕手が残留するならばライオンズ入りして常勝チームでプレーしたいという気持ちになるだろう。しかも大事なので繰り返し言っておくが、主力の流出が決定的なオリックスとソフトバンクとは異なり、今オフ、ライオンズの主力の流出はまだないどころか、可能性としても流出しない割合の方が高い。

選手にとってもちろん年俸という金額は重要だ。だがいきなり4年30億という成績に見合わない提示をされるくらいなら、6年以上の年俸変動制契約にした方が選手にも余計なプレッシャーがかからずに済む。そして渡辺久信GMはこれまで幾度もライオンズナインと年俸変動制での複数年契約を結んできた。そのメリットに関しても渡辺久信GMは森捕手にはもちろん、近藤選手にも今後伝えていくはずだ。

FAで出た選手よりも、ライオンズに残った選手の方が活躍している現実

近年の選手は金額よりも、どちらかと言えば契約年数を重視するケースが多い。近藤選手もそうであるようだが、巨人やソフトバンクのような金満球団のFA補強は失敗例が非常に多い。ライオンズからFA移籍した主な選手としては石毛宏典選手、工藤公康投手、清原和博選手、豊田清投手、帆足和幸投手、細川亨捕手、岸孝之投手、片岡易之選手、涌井秀章投手、野上亮磨投手ら大勢いるわけだが、FA移籍後も成績が下がらなかったり、タイトルを獲得したのは工藤投手と涌井投手くらいではないだろうか。ほとんどの選手が移籍先ではライオンズ時代ほど活躍できずにいる。

逆にFA権を獲得してもライオンズでプレーし続けた選手は西口文也投手、潮崎哲也投手、石井貴投手、栗山巧選手中村剛也選手ら、本当に息長くプレーしている選手ばかりだ。そしてここに外崎修汰選手が加わり、さらには森友哉捕手の名前も加わっていくのだろう。

ライオンズを出た選手よりも、ライオンズに残った選手の方が活躍しているし、球団が最後までしっかりと面倒も見てくれているのだから、これもFA交渉の席では他球団よりも有利な交渉材料となるはずだ。

FAとなると悲観的になりがちなライオンズファンではあるが、しかし今オフに関しては事情は違うと思う。西武球団は今、確実にFA戦線で優位に立っている。そのため森友哉捕手の残留はもちろんのこと、同時に近藤健介選手を獲得できる可能性も決して低くはないはずだ。だからこそ筆者は今、ライオンズファンは今までのように悲観する必要はないと考えているのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
⚾️ 筆者カズのTwitter(現X)
⚾️ 筆者カズの野球系YouTube
⚾️ 筆者カズの野球系Instagram
SNSのフォローやいいねもよろしくお願いします🙏

関連記事