2022年9月24日公開
残り5試合という中の1試合目でライオンズは勝つことができた。打線は先発全員安打の16安打で6点を取り、栗山巧選手も猛打賞、投げては先発松本航投手が6回2/3を2失点に抑えて7勝目を挙げた。欲を言えば16安打で15残塁は多過ぎると言ったところだろうか。
松本投手の7回のピッチングに関しては辻発彦監督は「詰めが甘い」と評したが、この試合の重要性を理解しているような気迫溢れるピッチングだった。初回は僅か7球で2三振奪ったのだが、この姿を見て筆者は「今日の松本投手は大丈夫だ」と確信した。
だがいつも以上に集中力が求められるこの日のマウンドでは、スタミナの消耗も激しかったのだろう。6回までは文句のつけようのないピッチングだったのだが、7回に入り100球を越えてくるとボールが少しずつ甘くなっていった。特に簡単に二死を取った後。
昨季は135球を投げてプロ初完投初完封をマークしており、本来であれば100球程度でバテるレベルの投手ではない。だが絶対に負けられない試合の重圧が松本投手の肩には重くのしかかり、7回に入ると二死を取った直後に連打されてしまった。
辻監督が詰めが甘かったと言ったのは、筆者の考えでは松本投手は7回までと告げられていたからではないだろうか。松本投手の7回の崩れ方を見ても、二死まで行って、そこで「あと一人」と考え少しだけ油断してしまったのかもしれない。恐らく辻監督はそういう意味で詰めが甘かったと評したのだろう。
そしてリリーフ陣も8回までは出番はないと見ていたのか、松本投手を継いだ森脇投手、公文投手がそれぞれ打者1人に1本ずつヒットを許し、水上投手が慌てて準備をして出てきたように筆者の目には映っていた。来季以降松本投手が10勝投手になるためには、ここで7回をしっかり締められるようになる必要があるのかもしれない。
さて、ここで少しFAに関する話をしておきたい。まず西武球団としての重要課題としては、FA権を獲得した森友哉捕手の慰留となる。西武球団は金子侑司選手クラスでも2019年には4年契約を結んでいるため、森捕手もこの流れからすると年俸変動制の4年契約が提示されるのではないだろうか。
近年の森捕手は隔年で3割を打っており、今季は3割を打てないシーズンに当たるため、来季は3割を打ちまた首位打者争いに加わってくれるのかもしれない。この森捕手の動向に関しては、FA流出の可能性は高くはないと言われているし、筆者もそう見ている。
まず森捕手の兄貴分であり相談役でもある岡田雅利捕手が昨季、FA権を行使した上でライオンズに残留している。この時岡田捕手を強く慰留したのが森捕手だったため、その一年後に森捕手があっさりとFAでライオンズを去ることは考えにくい。
そして森捕手はそれほど社交性のあるタイプではなく、仲が良い選手とは仲が良いのだが、そうではない知らない選手にはそれほど近付きたがらない性格をしている。そのため知らない人たちと一緒にプレーをしなければならない日本代表でのプレーが肌に合わなかったとも言われている。
このような事情もあるため、少なくとも森捕手があっさりとFA退団することはないだろう。あるとすれば阪神球団が大金を積んだ上で、藤浪晋太郎投手を説得役にした場合ではないだろうか。この場合に関しては森捕手もかなり悩むかもしれない。とは言え西武球団も森捕手を簡単に手放すわけはなく、FA流出の可能性は高くはないと見て良いだろう。
さて、現有戦力の慰留も渡辺久信GMにとっては重責であるわけだが、同時に戦力補強も積極的に行う必要がある。ここ数年打線がほとんど機能していないため、打線のテコ入れは避けては通れない。打線そのものも一度解体し、再度組み直していくべきだ。
打率も低く、チャンスにも強くない山川穂高選手も5〜6番からやり直させるべきだと思うし森捕手にしても3番ありきという考え方は不健全だ。まずこの二人の3〜4番は一度解体した方が打線も作り直しやすいし、本人たちのためにもなると思う。
では3〜4番をどうするかと言えば、やはり今求められるのは3割30本以上打ててチャンスにも強い外国人長距離砲だ。今季はオグレディ選手とジャンセン選手を獲得したわけだが、二人とも期待通りの活躍をしているとは言えないし、契約更新となるかも不透明だ。
中途半端な中距離砲を何人も取っ替え引っ替えするよりは、オグレディ選手とジャンセン選手二人分+αの資金を使って、打率も本塁打数も残せるアレックス・カブレラ選手、打率は低かったがホームランを打てたスコット・マクレーン選手、そこそこの打率でホームランを打てたエルネスト・メヒア選手のような大型スラッガーを連れてくるべきだ。
打席に立っているだけで威圧感を与えるような打者じゃなければ、外国人選手を連れてくるメリットは小さい。オグレディ選手に関しても打席での威圧感を感じることがないため、投手も遠慮なく胸元を突いていける。渡辺GMには今オフは、相手投手が胸元を突きにくい威圧感抜群の外国人打者を獲得してもらいたい。人柄の良さを最優先にして外国人選手を選ぶべきではないと思うし、打てる上で人柄が良いというのがベストだ。人柄が良くても真面目でも打てなければ意味はない。
補強という意味では今オフ注目すべきはやはり、ファイターズの近藤健介選手だろう。近藤選手はFA権を取得し、今オフのFA市場の目玉とも言われている。ライオンズはこの打者を是が非でも獲得すべきだ。
ただし、もし辻監督が続投ということになれば西武球団は多くの資金を費やすことはしないだろう。だがもし松井稼頭央監督にバトンタッチということになれば、新チームを盛り上げるためにも西武球団はFA参戦する可能性がある。例えば渡辺久信新監督が誕生した時の石井一久投手のように。
ちなみに渡辺久信監督は6年間で1位、4位、2位、3位、2位、2位と安定して勝ち続け、監督1年目にはリーグ制覇と日本一を達成している。一方の辻監督は昨年までの5年間で2位、1位、1位、3位、6位という戦績だ。二度リーグ優勝を果たしてはいるが、CSでは手も足も出ずの敗退を喫しており、日本シリーズに進出したことはない。
渡辺久信監督が4年連続Aクラスでも退任したことを考えると、昨年は6位、今季も3位争いという現状では辻監督が勇退される可能性は高いのではないだろうか。
だが辻監督が退任となれば、新監督へのボーナスとしてFA参戦する可能性も出てくるため、これはこれで良い方向へと進んでいくと思う。しかも近藤健介選手はファイターズの選手であるため、獲得できなかったとしてもFA流出のような痛手はない。逆に獲得できれば大きな戦力となるし、来季のファイターズの戦力を削ぐこともできる。
ただ、近藤選手に関しては今現在、どれだけ新庄剛志監督の野球観を信頼しているかどうかが鍵となる。近藤選手自身が「来季のファイターズは新球場で勝てる」と考えていれば残留するだろうし、「新球場に変わってもチームは同じ」と考えたならば、ライオンズが獲得できるチャンスは広がる。
そして近藤選手はかなりライオンズに対し好印象を持っているようで、試合前にライオンズの選手たちと談笑している姿が頻繁に目撃されている。このような姿は他球団の選手でもたまに見かけることはあるが、近藤選手がライオンズの選手たちと談笑しているような高頻度となると珍しい。
そして近藤選手はライオンズのユニフォームを見ると仲が良い選手が多いためリラックスできるのかもしれない。今季パ・リーグ相手に対しての打率は軒並み2割台後半なのだが、ライオンズ戦のみ.381を打っているのだ。そしてベルーナドームでの打率は8試合で.400、得点圏打率は.667と打ちまくっている。
これだけベルーナドームに相性が良いことを踏まえれば、ライオンズが求めれば近藤選手がそれに応じてくれる可能性は低くはないと思う。そしてもし近藤選手を獲得できたならば、長年の課題だった1番打者問題が一気に解決する。
近藤選手は秋山翔吾選手同様、盗塁をするタイプのリードオフマンではないが、秋山選手同様一人でチャンスメイクすることができる中距離打者だ。
これだけライオンズにフィットする選手がFA権を獲得しながら、もしライオンズが近藤選手をスルーしたとなれば、これはよほどの資金難と見るべきかもしれない。
渡辺久信GMは当然もうすでに近藤選手の調査は済ませているはずだし、オーナー側にも近藤選手がいかにライオンズに必要な選手であるかをすでに耳打ちしているはずだ。
ただ稲葉篤紀GMも簡単には近藤選手を手放さないとは思う。1998年には一年間だけ同じユニフォームを着た渡辺久信GMと稲葉篤紀GM、今オフはこの二人のGMの熾烈な競争にも注目をしたいし、ましてや潤沢な資金を持つ他球団に横取りされるような事態だけは避けてもらいたい。
筆者は基本的にはCS制は反対派だ。6球団しかないのに、しかも極端な話をすると首位との差が10ゲームある3位のチームでさえも日本シリーズに行けてしまう制度など、筆者はどうしても好きにはなれない。
3連戦をスウィープすれば逆転できる3ゲーム差以内の2位と、1位のチームが1勝のアドバンテージを受けて戦うのなら公平性を感じることもできる。だが仮にパ・リーグもセ・リーグも3位のチームが日本シリーズに行ってしまったとしたらこれは興醒めだし、日本シリーズの権威も失われてしまう。
だが現状ではCS制度に変更はないため、日本シリーズに進出するためにはどうしてもこのCSを勝ち抜かなければならない。そしてそのための先発投手陣は少しずつ育ってきている。となるとあとは打線だ。
しっかりとチャンスで走者を返してくれる四番打者と、不動のリードオフマン。今オフはこの二つのポジションを軸に、誰もが納得する形で補強を進めてもらいたいと筆者は期待している。
もちろん西武球団には他球団のような潤沢な資金力はない。だがそんな状況であっても、昨年は交渉力で平石洋介コーチをホークスから連れて来たではないか。このようにしっかりと将来を見据えた説得を行えれば、資金力では負けてもFA戦線で勝つことはできる。そして筆者は今オフ、それを渡辺久信GMに証明してもらいたいと大きな期待を寄せているのである。