2023年7月22日公開
2023年今季、前半戦のブルペンを支え続けた森脇亮介投手が右上腕動脈閉塞症によりオールスターを直前に登録抹消されてしまった。今のところ全治はまだ分からず、今季中に復帰できるかも定かではない。
今季は前半戦だけで31試合に投げて2勝1敗3S、12H、防御率1.95という安定した成績を残していた。勝ちパターンのブルペンではもはや欠かせない存在となっていた森脇投手だったが、ここで無念の離脱となってしまった。
だがそこからの渡辺久信GMの動きは早かった。森脇投手が登録抹消されたのは7月14日だったのだが、そこから一週間後の7月22日には森脇投手の代役として、昨季はDeNAでプレーをしたブルックス・クリスキー投手の獲得が発表された。もちろんクリスキー投手が完全に森脇投手の穴を埋められるとは思わないが、しかし森脇投手が抜けた穴を開けっぱなしにしておくことはできない。
もしここで森脇投手の代役の獲得がなければ、多くのファンがきっと「今年はもう諦めたんだな」と思ってしまったはずだ。だがここでしっかりと補強をしたことにより、ファンも後半戦の巻き返しに期待を抱けるようになる。そういう意味でもクリスキー投手の獲得は必要だった。
クリスキー投手はメジャーではヤンキースとオリオールズでプレーをしてきて、昨季はDeNAの一員として投げ、今季はカンザスシティロイヤルズと契約を結んでいた。だが再来日するため、7月21日に自由契約扱いとされた。
クリスキー投手は基本的にはリリーフ専門だ。メジャーリーグでもDeNAでも先発経験はない。球種としてはフォーシームとスプリッターがメインで、たまにスライダーを投げるというスタイルを持っている。
ただし懸念要素としては制球力が高くないという点がある。昨季DeNAでは21イニングスを投げて13四球、メジャー通算でも15イニングスで13四球を出しており、頻繁に自滅するほどではないが四球の多さは少し目立っている。また、WHIPに関してもDeNAでは1.33、メジャーでは2.20と、常に走者を背負ってのピッチングになっている。
しかしメジャーでは1イニングあたり平均2.2人の走者を出していたのに対し、DeNAではこれが1.3人に改善されている。ということはクリスキー投手にとってはやや滑りやすいMLB公認球よりも、丁寧ななめしで比較的滑りにくいNPBの公式球の方が合っているということなのかもしれない。
それでも四隅を正確に突けるほどの制球力はないため、捕手としてはストレートは大雑把に内角か外角に、スプリッターはど真ん中にミットを構えてそこから落とさせる、という藤浪晋太郎投手に対するような感じでリードしていけば、クリスキー投手も余計なプレッシャーを感じることなくどんどん良いボールを投げ込んでいけるのではないだろうか。
クリスキー投手の魅力は何と言ってもダイナミックなフォームから投じる力強いストレートだ。フォーシームは平均153km/hで、速い時は157km/hを計測する。
そして昨季はDeNAで21イニングスで26三振を奪い、奪三振率の高さが際立っている。昨季はDeNAで11.14という奪三振率で、メジャー通算でも11.40だった。ライオンズの捕手陣が巧くリードしていくことができれば、すでに日本のボールに慣れているクリスキー投手は昨季以上に奪三振を増やし、昨季以上に安定感のあるピッチングを披露できるのではないだろうか。
そのためにも重要になってくるのがスプリッターの制球だ。このボールが真ん中からしっかりと落ちてくれれば、空振り率はかなり高い。実際2021年にはスプリッターでの空振り率50%という数字をマークしている。
基本的には真ん中から高めに速いボールを見せておいて、最後は低めのスプリッターで勝負をするというスタイルになるはずなのだが、そのスタイルを確率させるためにも、とにかく捕手がクリスキー投手を悩ませないことが重要だ。難しい制球を求めることはせず、とにかくど真ん中にミットを構えてど真ん中を狙わせて、スプリッターをそこから上手く低めに落としていけるようにすれば、クリスキー投手も余計なことを考えずにどんどん攻めていけるはずだ。
現在は12の負け越しで5位に沈んでいるライオンズではあるが、オールスター直前には再び勢いを取り戻している。この良い流れを途切れさせないためにも、クリスキー投手には二度目の日本のマウンドで大いに躍動してもらいたい。
そしてチームにはまずは一日でも早く勝率を.500に戻し、最下位争いなどではなく、何とかCS争いに食い込んでいってもらいたい。クリスキー投手は必ずその助けになってくれるはずなので、筆者はクリスキー投手の初登板を今から心待ちにしている。