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2024年3月10日公開

【ゲームレビュー】2024年03月10日 横浜DeNA vs 埼玉西武ライオンズ/オープン戦

横浜DeNAベイスターズvs埼玉西武ライオンズ/オープン戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 2 0 0 0 0 1 3 6 0
BayStars 0 1 0 0 0 0 0 1 0 1 5 0

アギラー選手はカブレラの再来というよりは、カリブ海のおかわり君

ホームランを放ったヘスス・アギラー選手

3月10日、横浜で行われたDeNA戦でヘスス・アギラー選手に待望のオープン戦第1号ホームランが飛び出した。非常に抽象的な表現をするならば、気品あふれるとても上品なホームランだったと思う。

アギラー選手のフォームにはほとんど力みがなく、無駄な動きも非常に少ない。投手がモーションに入ると、リラックスして肩に担いでいたバットを45°くらいまで立ててスッとテイクバックしていき、スウィングプレーン(バットスウィングで描く面)を投球の軌道内に非常に上手く入れていく。

この日放った左中間へのホームランも力任せにスタンドインさせたものではなく、キャッチャーが構えたところよりもやや高く甘く入ってきたボールを見逃さずに振り抜くと、バックスピンがかかった飛球が美しい放物線を描いてレフトスタンドへと吸い込まれていった。

アギラー選手は間違いなく中村剛也選手タイプだと言って良いだろう。一部では「カブレラの再来」と言われることもあるアギラー選手だが、カブレラ選手はその怪力で弾丸ライナーでスタンドインさせていくタイプだったが、アギラー選手は力みのないフォームによって上手くバックスピンをかけて放物線を描いていく。

中村剛也選手は現役選手の中では最も打球にバックスピンをかけるのが上手い選手だ。そのため中村選手のホームランも弾丸ライナーではなく、放物線を描くホームランの方が圧倒的に多い。アギラー選手も同じタイプだと言って良いだろう。

力任せで行ってしまう外国人選手の場合、カブレラ選手のように圧倒的なミート力を身につけている場合を除いては大型扇風機化してしまうケースが多くなる。現状ではフランチー・コルデロ選手がまだ日本人投手の攻め方に慣れておらず、三振を量産している。

だがアギラー選手は力任せに打つことがまったくない。ここまでの実戦でのバッティングを見続けていても、ホームランを打った時でさえ全力では振っていないはずだ。十分な与力を残し、ミート力を重視してホームランを打ちに行っている。中村選手も「八割程度で振った時が一番ホームランになりやすく、全力で振るほどフェンス前で失速する」というふうに語っており、これはまさに中村選手とアギラー選手のバッティングの共通点だと言える。

そう考えるとアギラー選手は「カブレラの再来」と言うよりは、「カリブ海のおかわり君」と呼んだ方が相応しいのかもしれない。

焦りがあった中でも焦りのないスウィングを見せた渡部健人選手

さて、この試合ではもう一人ホームランを放った打者がいる。春季キャンプはA班に抜擢されながらも南郷入りを直前にして体調を崩してしまい、結果B班スタートとなっていた渡部健人選手だ。渡部選手はこのオフは中村剛也選手、そしてジャイアンツの岡本選手と自主トレをしたことでかなりの成長の跡が見られていただけに、体調不良のニュースに筆者はかなりもったいないなという印象を受けていた。

だがオープン戦に入ってくると3月6日にようやく主力組に食い込んできて、この試合では六番サードとして出場していた。渡部選手は体調不良のことも含めて、かなり焦りもあったはずだ。その理由は単純にライバルたちの活躍によるものだ。

まず育成選手から這いあがろうと死に物狂いでプレーしているブランドン選手は、春季キャンプのスタートからずっとA班に帯同し続け、昨日の試合ではタイムリーヒットも放っている。そして佐藤龍世選手も昨季後半からは一軍では欠かせないチャンスメーカーになっていたし、今季は新戦力の元山飛優選手も実戦では昨日まで6試合連続ヒットを続けていた。

そんなライバルたちが躍動する姿を追いながら、焦りがなかったということはまったくなかったはずだ。そして打者というのは焦りの気持ちを抱いたまま打席に入ってしまうと得てしてスウェーしてしまい、自分が得意なポイントにボールが来る前に打たされてしまうことが多くなる。

だがこの試合のベッケンこと渡部健人選手はスライダーに決して泳がされることなく、しっかり軸脚に体重を乗せ続けたまままったく焦りのないスウィングでバットを振り抜くことができた。その結果打球が高々と舞い上がっていき、こちらも見事な放物線を描いてスタンドインさせていった。

体調不良さえなければ、渡部選手は本来であればクリーンナップに固定されていかなければならない打者だ。まさにライオンズの次世代の四番打者であるわけなので、やはり少なくともバッティングにおいては渡部選手はライバルたちを一歩も二歩もリードしていかなければならない。

そして今日放ったホームランは、そのための景気づけには持って来いの一発になったのではないだろうか。このホームランをきっかけにし、渡部選手にはぜひともここから開幕に向けて量産体制に入っていってもらいたい。まだ荒削りな部分も多い渡部選手の場合、まずは打率.260前後でも30本塁打以上打ってくれれば、期待値を上回るには十分だろう。

そのためにも今季の渡部選手には、とにかく細かい怪我をすることなくシーズンを完走してもらいたい。それさえできれば最低でも期待値通りの活躍を見せてくれるはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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