2024年6月16日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
BayStars | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 5 | 9 | 0 |
Lions | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 |
継投/ ●渡邉勇太朗〜 佐藤隼輔〜 本田圭佑〜 ジェフリー・ヤン〜 松本航〜 アルバート・アブレイユ
敗戦投手/渡邉勇太朗 0勝2敗0S 3.56
松井稼頭央前監督から渡辺久信監督代行にスイッチするという劇薬を投じたものの、結局交流戦も4勝14敗で勝率は.222という超低空飛行が続いてしまった。そして今季通算としては19勝44敗の勝率.302で、12球団の中でライオンズだけが未だ20勝に到達していない。ちなみにライオンズを除くとセ・リーグ2球団の27勝が最少となっている。
そして昨日・今日と2試合連続での完封負けはライオンズとしては実に13年ぶりの屈辱となる。さらにはベイスターズの先発だったルーキー石田投手に4安打完封され、しかもマダックス(100球以下での完封勝利)まで達成されてしまった。ちなみに石田投手は今日がプロ2試合目の登板だった。この屈辱ついでにもう一つ書き加えておくと、昨日の試合で開幕7連敗となった髙橋光成投手の記録は西武史上単独のワースト記録の更新となった。
チームはこのペースで負け続けると年間99敗ペースとなり、もし100敗ということになると1961年の近鉄が記録した36勝103敗1分以来の屈辱となる。そしてプロ野球の長い歴史の中で100敗したのは後にも先にもこの時の近鉄だけが唯一の球団だ。このように今季のライオンズは歴史的屈辱が重なりに重なっており、もはや泥沼というよりは底なし沼といった様相だ。
渡辺監督代行もリーグ戦再開までに何か打開策を考えると話しているが、もはや補強以外での打開策はまったく見えてこない。今日の試合のオーダーを見ていてもまるでファームの試合を見ているようなラインナップだった。いくらなんでも長谷川信哉選手、元山飛優選手、岸潤一郎選手というクリーンナップはなかったと思う。彼らが打席でバットを振っている姿を見ていてもまったく怖さがなく、ルーキー石田投手に伸び伸びと投げさせてあげているように見えた。
今日の打線を見ていて唯一希望を持てたのは、先日プロ初ヒットを打って以来少しバッティングに元気が出てきた奥村光一選手くらいではなかっただろうか。ただしこの奥村選手も今日は2安打したとは言え、4打席すべての打球がレフト方向に飛んでいた。このように引っ張り中心のバッティングではスウィングもアウトサイドインが癖づいてしまい、調子が落ちてきたらまたヒットが出なくなることが予測される。良い打者というのは調子が落ちてきても技術力である程度打てるわけだが、しかし悲しいかな、今のライオンズの若手選手の中にはその技術力がある打者がいないというのが現状だ。
リーグ戦再開を控え希望があるとすれば、ブランドン選手がファームの試合に出始めているということだ。ヒットもコンスタントに出ており、ホームランも飛び出している。このブランドン選手が、先日骨折をして手術をしてしまった佐藤龍世選手の代役として一軍に上がってくる可能性は高いだろう。
そしてフランチー・コルデロ選手にもちょこちょことヒットが出ているため、コルデロ選手もやはり一軍に上げるべきだと思う。コルデロ選手はファームの試合で調整させていても意味がない。ヘスス・アギラー選手が未だファームの試合に出られていない状況を考えると、1打席でも多く一軍で打席に立たせて、一軍レベルのボールに慣れさせていくべきだ。
渡辺監督代行は栗山巧選手をレフトとして起用しているのだから、コルデロ選手を指名打者として起用することにも支障はない。ファームでもコルデロ選手は指名打者としての出場が続いており、チーム方針としてはもう、コルデロ選手には打つことだけに集中させることにしているようだ。
それならば先発オーダーに小兵タイプの選手を3人も4人も並べるのではなく、日本人離れしたパワーを誇るコルデロ選手をオーダーに組むべきだ。本日の試合を終えた時点で奥村選手の打率は.211、滝澤夏央選手は.192、児玉亮涼選手は.176、で、コルデロ選手の成績は一軍では67打席で.141、1本塁打、4打点となっている。
ちなみにコルデロ選手は、追い込まれるまでは実はけっこう良いバッティングをしていることが多いのだ。例えばカウント1-0、1-1、3-1の時はそれぞれ打率が.333となっており、追い込まれる前のファーストストライクを打ちに行った時はなかなかの好成績を残しているのだ。反面追い込まれると打率は1割台以下に下がってしまう。
つまりコルデロ選手を生かすためには、打撃コーチがコルデロ選手に早いカウントでどんどん振らせていくことを徹底すれば良いのだ。日本人投手の配球にまだ慣れていないコルデロ選手は、ボールをしっかり見ていこうとするあまり甘いボールを見逃してしまうシーンも少なくなかった。だがボールを見るよりも、ファーストストライクを感性で打ってもらった方が、コルデロ選手は間違いなく打てるようになるはずなのだ。
ちなみにこれはアギラー選手にも同じことが言え、アギラー選手の場合はコルデロ選手よりもその傾向が強く、カウント1-0の時は打率.571、1-1では.455、2-1では.333、3-1では.750というハイアヴェレージとなっている。だが追い込まれるとその打率は一気に0〜1割台に急降下してしまう。
嶋打撃コーチは以前、アギラー選手はボールを良く見ていきたいタイプの打者であるため、そこは尊重していかないといけないと話していた。そして基本的にはその方針を変えることはなく、アギラー選手がファーストストライクをしっかりとボールを見ながら見逃しても何も言わなかったらしい。もちろんまったく何も言わなかったわけではないだろうが、しかし嶋コーチ自身が基本的にはそのアギラー選手の姿勢に対し何かを言うことはないと話していた。
だがアギラー選手のカウント別の打率を見ると、ファーストストライクや追い込まれる前のボールを打った際は上述の通り圧倒的に高い打率を残しているのだ。それならば尊重するとかしないとかという話ではなく、打撃コーチとしてはアギラー選手にもコルデロ選手にも必要以上にボールを見させるのではなく、ファーストストライクから積極的に振らせることを徹底させるべきではないだろうか。それが打撃コーチの仕事とは言えないだろうか?
嶋コーチの話を聞いている限り、打撃コーチは外国人選手に関してはほぼ本人任せにしており、リスペクトしているようで実際にはリスペクトしていない対応となっている。もし本当に彼らをリスペクトするのであれば、彼らが打てている時の状況をしっかりと理解させ、その状況でバットを振っていくように指示していくべきなのだ。嶋コーチが言っている尊重という言葉は聞こえは良いかもしれないが、実際には打撃コーチとしての職務を放棄していることを意味している。
逆に、例えば2008年のデーブ大久保コーチがクレイグ・ブラゼル選手に対しどのような対応をしていたかと言うと、「君は物凄いパワーヒッターだ。君が打つような打球は日本人選手には打てない。だからもっとクレイグらしい強い打球をどんどん打っていって欲しい。そのためにはこのようなカウントで、このような球種を待って振っていくと確率が高まっていくよ」という感じの伝え方をされていた。頭ごなしでもなく放置でもなくこれこそが打撃コーチとしての、外国人選手を本当の意味でリスペクトした対応だと言える。
このような対応があったからこそ、ブラゼル選手は打率は.234ながらも、27本塁打で87打点という成績を残すことができた。もしブラゼル選手が頭部死球の影響なく試合に出続けられていたら、きっと30本塁打以上を打っていただろう。このように2008年と今年の外国人打者は同じく日本球界未経験者2人という補強だったわけだが、2008年はブラゼル選手は多くのホームランを打ち、ヒラム・ボカチカ選手も「オナカスイタネ」というキャッチフレーズが人気になると同時に、20本塁打を打って恐怖の九番打者として恐れられた。
デーブ大久保コーチ(と熊澤とおるコーチ)がこのように見事に日本未経験の外国人打者2人を成功に導いたのとは対照的に、今季の嶋コーチ、高山コーチは外国人選手を尊重という名の放置でまったく生かし切れないどころか、日本人選手の中からも主力を任せることのできる打者を出すことができていない。
こうして見ると責任は松井稼頭央監督にあったのではなく、嶋コーチと高山コーチのやり方にあったのではないだろうかとさえ思える。そう考えるとリーグ戦再開を前にしてまずやるべきことは、一軍打撃コーチの総入れ替えということになるのかもしれない。
さて、かつてデーブ大久保コーチは不祥事のためにライオンズからコーチ契約を解除されてしまった。その際当時の渡辺久信監督が「デーブを切るなら俺も辞める」、とフロントに言い張った武勇伝はもはや渡辺監督代行の伝説の一つとして数えられている。
このデーブ大久保コーチをなんとか復職させられないのだろうか。デーブコーチはライオンズ退団後はイーグルスやジャイアンツで指導に当たっている。イーグルスやジャイアンツで指導できてライオンズではダメな理由などもはや存在しないのではないだろうか。
そもそも当時デーブ大久保コーチを切ったフロント陣は今はほとんどいなくなっており、実際問題として今の西武球団のフロントとデーブコーチの間には確執はないと思われる。それならばもう10年以上も昔の話は水に流し、デーブ大久保コーチをコーチ登録し、一軍の打撃指導を任せて見るのも手ではないだろうか。
確かにデーブ大久保コーチはイーグルス・ジャイアンツ時代は2008年のライオンズ時代ほどの指導力は発揮できなかった。だがデーブ大久保コーチは忠誠心が非常に高いタイプのコーチであるため、主導権を持たせるというよりは、渡辺久信監督代行のようにデーブ大久保コーチ自身が尊敬しているボスに仕えることによって本領を発揮できるタイプなのだ。
例えば平石洋介コーチはもしかしたらコーチよりも監督職が合っている人なのかもしれない。一方デーブ大久保コーチは監督職よりもコーチ職の方が合っているのだ。確かに中にはデーブ大久保コーチとは反りが合わない選手も出てくるだろう。だがそれは逆に良いことだと思う。誰にでも良い顔をする今の打撃コーチよりも、良いものは良い、ダメなものはダメ、とハッキリ言ってくるコーチの方が育つ選手はどんどん育っていく。
逆に今のようにただ選手に優しく親身に寄り添うことだけで選手から慕われているコーチというのは、選手からの評判は当然良くなる。選手が嫌がることを言わないのだからそれは当然だ。そして選手からの評判が良いと球団も良いコーチだと勘違いしてしまい、契約を続けていってしまう。それが今のライオンズの一部のコーチ陣なのではないだろうか。弱い人間というのは、自分が言われたくないことを言わない人だけを好きになる。だがプロとして成長するためには、言われたくないことも言ってくれるコーチの存在が絶対的に必要で、嶋コーチと高山コーチにはそれができるとはもはや思えない。
ちなみに2008年にも実は同じタイプのコーチがライオンズにはいた。そのコーチは打撃コーチではなかったのだが一軍を担当していたコーチで、筆者は当時、常々そのコーチの指導力の低さを明確な理由を添えて指摘していた。だがその当時は長期間ライオンズでコーチを務め、今もなお別の球団でコーチを続けている。ちなみにそのコーチが去年からコーチを務めている球団は、その前年まで連続で日本シリーズに進出していたにもかかわらず、去年と今年は連続して低迷している。もちろんリーグ優勝に貢献した年もあるわけだが、しかしいわゆる理論派で、選手が言われたくないこともしっかりと伝えていけるタイプのコーチからの評判は芳しくはなかった。
話はいつもながら長くなってしまったわけだが、とにかく強力打線を誇った2008年と今年とではこれだけ大きな差が打撃コーチにはあり、まさに今のライオンズのコーチ陣の多くが選手に対してNoを突きつけられていないのだ。だからこそ今のライオンズにはまったく厳しさが感じられず、勝負どころで強さを発揮できる打者もまったく育ってきていない。一方投手が言われたくないことまでしっかり伝えている豊田清投手コーチの場合は、周知の通り強力投手陣の形成に成功している。
渡辺GMも、打撃コーチとしてまったく職責を果たせていない嶋コーチと高山コーチをそろそろ見限るべきではないだろうか。そして渡辺GMがオーナーに直談判してでもデーブ大久保コーチを復帰させるべきではないだろうか。西武球団では企業コンプライアンスばかりが独り歩きしてしまっているような状況だが、しかしかつてしくじった人に再チャンスを与えることも、一流企業としての務めの一つではないだろうか。だからこそ筆者はデーブ大久保コーチはもちろんのこと、清原和博打撃コーチの誕生にも大きな期待を寄せているのである。