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2024年6月14日公開

コーチからの簡単なアドバイスさえ実践できないライオンズ打者陣の実力のなさ

埼玉西武ライオンズ vs 横浜DeNAベイスターズ/1回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
BayStars 0 0 1 0 0 2 0 2 0 5 11 0
Lions 0 0 0 1 0 0 0 0 0 1 6 2

継投●青山美夏人ジェフリー・ヤン本田圭佑増田達至アルバート・アブレイユ
敗戦投手青山美夏人 0勝2敗0S 3.60
盗塁鈴木将平(1)、児玉亮涼(3)、奥村光一(1)
失策滝澤夏央(3)青山美夏人(1)

埼玉西武ライオンズ

嶋打撃コーチも半ば諦め気味のコメントを残すライオンズ打撃陣の脆さ

松井稼頭央前監督から渡辺久信監督代行に代わった交流戦もあと2試合で終わる。最後に残ったのが好調DeNAとの対戦というのはなかなか苦しいわけだが、しかし何を言ってもあと2試合で交流戦は終わってしまう。

渡辺監督代行もGMとして、さすがにただ選手の調子が上がってくるのを待っているわけではないと思う。トレードなり、外国人選手なりの補強を考えているはずだ。とにかくこのままでは埒が明かない。何らかの劇薬を投下していかなければ、あっという間に今シーズンも終わってしまうだろう。

ライオンズは昨日と今日の2試合の合計でもわずかに8安打しか放っていない。一方ベイスターズは今日の試合だけで11安打放っている。キャンプインが他球団よりも5日遅かったというだけでここまでの差が出るのはおかしい。そうなると考えられることはやはり、ライオンズの選手育成システムが成り立っていないということではないだろうか。

ちなみに今日の試合でライオンズは6本のヒットを打ったわけだが、そのうちの3本は鈴木将平選手だった。ライト前、センター前、レフト前と広角に打ち分けたヒットは見事だった。この鈴木選手あたりが好調を維持して一番に定着してくれれば良いのだが、しかし今季のライオンズはそれまで打っていた打者が一番に入っても、一番に入った途端打てなくなってしまう傾向がある。

そう考えると今日活躍した鈴木選手も、今日と同じく二番で起用した方がいいのかなとも思える。やはり今日活躍した選手は、明日も同じポジションで出してあげることが望ましい。しかし打撃陣全体が低迷している今季のライオンズでは、それさえも難しい状況となっている。渡辺監督代行自身、打線は固定したいけど現状では難しいとコメントしている。

打撃陣は今とにかく打てていないのだから、打撃コーチ3人体制でも良いと思う。残念ながら嶋コーチにも高山コーチにも、ライオンズ打線を強化できる指導力はなさそうだ。嶋コーチに関しては打席での対応の仕方などについて、「選手たちに難しいことは言っていないのだがそれができない」という趣旨のコメントさえ残している。そう、今のライオンズの打者たちはコーチからの簡単なアドバイスさえも実践できないほど実力が伴っていないのだ。

これはもう短期間でどうにかなるものではないし、本来であれば中堅・ベテランが活躍しているうちに次世代を育てていくのが理想だ。しかしライオンズの場合はどんどんFAで選手がいなくなってしまうため、栗山巧選手中村剛也選手を除くとほぼ全員若手という状態で、まだ一軍で戦う力がないうちから一軍で起用せざるを得ない状況なのだ。

また、年代的にもっとチームを引っ張っていかなければならない源田壮亮主将外崎修汰選手金子侑司選手らもバッティングでは好調を維持することがまったくできていない。だからこそ劇薬を投下するしかないと筆者は思うのだ。

髙橋光成・平良海馬両投手を出してでもスラッガーを獲得すべき現状

では劇薬とは?それは大型トレードだ。髙橋光成投手平良海馬投手など、近い将来ライオンズを去ると明言している選手を出してでも強打者を獲得すべきだ。

メジャーリーグの場合は移籍やトレードが当たり前の世界であるため、どんな大物選手がトレードに出されても、残念がられることはあってもそれほど驚かれることはない。しかし日本の野球ではアメリカ以上にフランチャイズプレイヤー(栗山選手や中村選手のような生え抜きのベテラン)が愛される傾向にあるため、これまでチームに貢献してきた主力級の選手がトレードに出されることは非常に稀だ。

ライオンズにおいても秋山幸二選手のトレード以来、本当に大型と呼べるトレードはなかったのではないだろうか。どちらかと言えば一軍半の選手同士を交換して活路を見出すというトレードが多い。昨オフの宮川哲投手と元山飛優選手のトレードもまさに、一軍には定着し切れなかった選手同士のトレードだった。だがその程度のトレードでは今のライオンズを変えることはできない。

髙橋投手や平良投手を放出して、他球団でクリーンナップを打っている打者を連れてくるくらいのトレードを成功させなければ、ヘスス・アギラー選手フランチー・コルデロ選手も不在の今、打線が突然機能し始めることなどないだろう。

髙橋投手と平良投手のファンには大変失礼だが、しかしビジネスライクで考えれば、ライオンズを去ると言っている選手を球団がこれからも大切にし続ける義理などないと思う。両投手はそれぞれポスティングにより移籍を望んでいるわけだが、そもそも今の二人の現状でポスティングにかけても西武球団への実入りはほとんど期待できない。

山本由伸投手のようなポスティングマネーを期待できないのであれば、まだ市場価値があるうちにトレードに出してタイトルを狙えるレベルの強打者を獲得してくるべきだと思う。なお筆者個人としては髙橋投手には不満しかない。誰もが納得するような成績を挙げているわけではないのに早期メジャー移籍を球団に訴えたり、髪を伸ばしたり、自身のブランドの宣伝をしたりと、野球で活躍すること以外の方が目立っているからだ。

メジャーを目指すことも髪を伸ばすこともブランドを立ち上げることも、決して悪いことではない。しかし本業の野球で1勝も挙げられていないような状態で、果たして野球以外のことで目立つべきだろうか。このあたりが髙橋投手と、チームの負の流れを断ち切るためにはロン毛をバッサリと切った今井達也投手との違いとなるのだろうか。

二桁勝利を挙げても不思議ではないボールを投げていた青山美夏人投手

青山美夏人投手

さて、そんなトレードの話はさておき、今日先発した青山美夏人投手のピッチングは非常に良かったと思う。残念ながら6回には自らのエラーなどにより自滅してしまったわけだが、それまでは高い集中力を感じさせる勝てる投手のピッチングをしていたと思う。

3回に1点、6回に2点を失い最終的には5回1/3を投げて3失点(自責2)というQS未満の内容ではあったが、しかし初回からストレートには力があったし、縦に大きく割れるカーブも効果的に決まっていた。ただ、時々逆球があった分柘植世那捕手の配球を難しくしていたようにも見えたため、逆球を減らして寄り道のない配球をしていくことが青山投手の今後の課題となるのかもしれない。

だが1球1球集中して投げている姿には、今後の大きな期待を感じさせてくれた。青山投手はもう少し一軍でコンスタントに投げさせてあげれば、先発として10勝する程度の活躍はしてくれるだろう。青山投手レベルの場合、もうファームでの登板にはそれほど価値はないと思う。ファームである程度抑えられるのはもう当たり前で、今後は一軍での場数が必要なのが今の青山投手のレベルだ。

昨季は開幕から代理守護神に指名されるほどの高いポテンシャルを見せた青山投手であるが、今季は先発としての姿が実に様になっている。プロでの先発転向1年目ということを考えればよくやっている方だと思う。一軍でも変化球の低めへの精度をもう少し高めていければ、二桁勝利を挙げてもまったく不思議ではないピッチングを今日も見せてくれていた。

武内夏暉投手が新型コロナウィルスに感染してしまったことでローテーションの急な再編が求められてしまったライオンズだが、しかし青山投手がもっと一軍での先発に慣れ、今日の6回のように勝ち急いだようなピッチングになり、ピンチでバタついてしまうことを減らしていけば、髙橋光成投手と平良海馬投手の不在もまったく不安要素にならなくなる。

今季の青山投手はここまで2試合に先発して2敗となっているわけだが、チームとしては早くこの青山投手に勝ち星を付けてあげたい。青山投手自身、プロ初勝利を挙げられれば気持ちもグンと楽になり、もっと余裕を持ったマウンド捌きができるようになるはずだ。そのためにもリーグ戦再開後も、首脳陣にはぜひ青山投手をローテーションに残してもらいたいなと筆者は期待している。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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