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2023年12月11日公開

クリーンナップ候補フランチー・コルデロ選手の弱点と役割

アベレージヒッターの助っ人補強が続いていた近年のライオンズ

今季ライオンズが5位に沈んだ原因としては、確かに守護神増田達至投手の不調によるところも大きかったわけだが、それ以上に響いたのはやはり四番打者の不在だろう。しっかりとした四番打者がいても勝つことは簡単ではないのに、今季のライオンズはほぼフルシーズン四番打者不在の状態で戦わざるを得なかった。

そのため投手力はリーグトップクラスだったにもかかわらず、得点を増やすことができずに落としたゲームが多かった。もしもう少し安定して打てる四番打者がいれば、さすがに現在の投手力で簡単に5位に沈むことはなかっただろう。

来季の四番打者としては、やはり理想的には渡部健人選手が年間を通して出続けることだ。だが渡部選手はまだ年間を通して一軍にいられたシーズンがない。

成長著しい打者とはいえ、渡部選手に過度な期待を寄せるのはやや過酷だとも言える。かと言って今季のようにマキノン選手を四番に据え続けても、長打が多くない分打線としては迫力に欠けてしまう。そしてその前にマキノン選手との来季契約はまだまとまってはいない。

ここ数年、ライオンズは外国人打者に関してはアベレージヒッターばかりを獲得してきた。マキノン選手やペイトン選手はもちろんのこと、スパンジェンバーグ選手やオグレディ選手もやはり大砲とは呼べなかった。

大砲となるとエルネスト・メヒア選手まで遡らなくてはならないわけだが、今オフ、そのメヒア選手以来の大砲をライオンズは獲得した。

年俸1億円で契約したのはドミニカ出身の選手、フランチー・コルデロ選手という左打ちの外野手で、バッティングに関しては非常に期待が持てそうな大砲候補だ。

フランチー・コルデロ選手の弱点

フランチー・コルデロ

コルデロ選手の特徴としてまず挙げられるのがスウィングと打球の速さだ。強靭な体で振られるバットは、とても900gもあるとは思えないほど軽く見える。

メジャーではムーヴィング・ファスト・ボールに苦しんでいるようにも見えたが、日本のプロ野球ではメジャーリーガーレベルの動く高速球を投げられる投手はほとんどいない。

ましてやコルデロ選手ほどのパワーヒッターであれば、とてもじゃないが並の日本人投手ではそう簡単に詰まらせることはできないだろう。詰まらせたとしても力で外野まで運ばれてしまうはずだ。

コルデロ選手の弱点としては、右投げ左打ちという点を挙げることができる。左打ちでステイバックで打っているコルデロ選手の場合、メインの手は左手になる。だが投げる方の手が右ということは、恐らくは利き手は右であるはずだ。すると利き手をバッティングのメインハンドにすることができず、これに悩まされることはあるかもしれない。

ちなみにメジャーリーグ時代の松井秀喜選手や、ホームラン数を増やす試みをした頃の栗山巧選手も、利き手をバッティングのメインハンドとして使えないことに悩まされていた右投げ左打ちの選手だ。

ただしコルデロ選手の場合は規格外のパワーを持っているため、日本人選手ほどは右投げ左打ち特有の弱点には悩まされないかもしれない。しかしそれでも執拗に内角を攻められた場合は、上手く押し込めなかったり、気持ちよく引っ張れないフラストレーションが溜まり、この弱点を露呈し出すこともあるかもしれない。

四番渡部健人選手を一本立ちさせる五番コルデロ選手

さて、コルデロ選手の特徴としては左打ちであるにもかかわらず、左投手をそれほど苦手としていない点を挙げられる。今季に関しては、打席数こそ6打席と少なかったのだが、左投手相手には.333という打率を残している。

一方右投手に対しては63打席で.175とあまり打てていない。右投手に対し左投手の方が打てているというのはリーチの長さによって外に逃げて行くボールにも簡単にバットを届かせることができるからだろう。

そして左投手の場合、ツーシーム系のボールはあったとしても、右投手のスライダーのように大きく内側に食い込んでくることがない。そのためコルデロ選手としても安心して踏み込んでいけるのではないだろうか。

ただ投手の人数としては圧倒的に左よりも右の方が多い。となるとコルデロ選手が来日1年目から活躍するためには、長身でリーチの長い左打者共通の弱点である、インハイに食い込んでくる右投手のスライダーをどれだけ見極められるかにかかってくると言える。

長身選手の場合、インローに関してはバットのスウィートスポットを持っていきやすいのだが、インハイに関してはリーチが長い分、スウィートスポットを持って行くことが非常に難しい。そのためインハイに食い込んでくるボールは、一般的には左打ちの長身選手共通の弱点となっている。

右投手が投げるインハイのスライダーを冷静に見極めることができれば、右投手からするとインローにスライダーを投げざるを得なくなる。だがコルデロ選手は右膝を使ってインローに食い込んでくる変化球を打つのがとても上手い。

ましてや外側からストライクゾーンに入ってくるようなスライダーであれば、コルデロ選手のリーチであれば簡単にバットが届いてしまう。そう考えるとやはりコルデロ選手の場合、インハイの見極めが重要であると言えるだろう。

だがコルデロ選手はメジャーでもトップクラスの打球の速さを誇る。もしかしたら日本人投手レベルの球速であれば、インハイに来ても思い切り引っ張ってスタンドインさせてしまうかもしれない。

とにかく当たったらどこまででも打球が飛んでいってしまいそうなコルデロ選手だが、理想としては五番打者として定着することだろう。

破壊力抜群のコルデロ選手が五番に座っていれば、四番渡部選手に対してバッテリーは際どいコースばかりは突けなくなる。バッテリーとしては走者を置いてコルデロ選手を迎えたくないからだ。

すると四球を嫌うバッテリーは渡部選手に対しハッキリとしたストライクボールを投げるケースが増え、渡部選手としてもボールを見極めやすくなる。

なおかつ六番あたりに中村剛也選手が待ち構えていれば、バッテリーはコルデロ選手にでさえ際どいボールは投げにくくなり、コルデロ選手も甘い球にだけ的を絞りやすくなる。

上記のような連鎖反応を起こすためにも、圧倒的なパワーを秘めたコルデロ選手を四番に据えるのではなく、まだ若い四番渡部選手の後を打つ五番に固定するのが定石だと言える。

とにかくライオンズには来季、久しぶりに長打が期待できる外国人スラッガーが加入する。渡部選手を一本立ちさせるためにも強打の外国人選手は不可欠であるため、今オフの外国人打者の補強は本当に良い形だったと評価していいのではないだろうか。

そして投手陣が安定している分、コルデロ選手が来季しっかりとクリーンナップとして機能してくれれば、ライオンズは間違いなく優勝争いに加わって行くはずだ。そして秋にはきっと日本一をみんなで祝っていることだろう。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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