2023年12月 7日公開
今季比較的良い活躍を見せてくれたマキノン選手の残留交渉が難航しつつある中、ライオンズはふたりの新外国人選手の獲得を発表した。
左打ちの大砲フランチー・コルデロ外野手(背番号55)と、163km右腕アルバート・アブレイユ投手(背番号54)だ。このふたりはバリバリのメジャーのスーパースターというわけではないが、ふたりともニューヨーク・ヤンキースでのプレー経験を持ち、メジャーでもある程度の実績を持っている。
まずコルデロ選手に関しては、とにかく打球速度が速いことで注目されているスラッガーだ。メジャーリーグでは160km/h以上を投げる投手はいくらでもいるため、メジャー通算251試合で打率は.217、本塁打は27本と、決してスター選手とは言えない成績に留まっているものの、ピッチャーの平均球速がメジャーよりも10km/h以上遅い日本であれば、コルデロ選手ほどのスウィング速度であればホームランを量産できる可能性は非常に高いだろう。
だが気になる点としては、左打ちのコルデロ選手は時々右膝を崩して打つことがあり、これが日本で変化球に翻弄される原因にならなければ良いなというのが筆者の感想だ。
メジャーでは緩い変化球で緩急をつけて投げてくる投手はそれほど多くはない。できるだけ速いボール、できるだけパワーのあるボールを投げて打者をねじ伏せにいく投手が多い。そのためコルデロ選手は、恐らくは日本人投手のように緩急を上手く使い、丁寧にコースを突いてくる投手との対戦経験は多くはないはずだ。
しかしこのあたりの日米の差をあらかじめ把握し、対策を練っておけば、コルデロ選手は一年目から期待通りの活躍を見せてくれるだけの高い能力を備えている。
近年のライオンズは、外国人打者はアベレージヒッターばかり連れて来ていたわけだが、四番打者を固定しなければならない急務もあり、コルデロ選手は、エルネスト・メヒア選手以来の長距離砲の獲得となった。
そしてもうひとり、アルバート・アブレイユ投手は右投げのリリーフタイプで、最速163km/hのボールを投げ、スライダーを武器に三振を狙って奪れるタイプの投手だ。
メジャーの実績としては通算108試合で、今季に関してはヤンキースで45試合に登板し2勝2敗、防御率4.73という数字を残している。主戦級とは言えないまでも年間を通してメジャーで投げ続けた経験値は決して無視することはできない。ライオンズとしては久しぶりの大物助っ人投手と呼べるのではないだろうか。
日本のプロ野球とメジャーリーグではまだまだレベルの差は大きい。日本代表は今年のWBCでは久し振りの優勝を飾ったとは言え、日本シリーズを制したチームと、ワールドシリーズを制したチームが対戦をすれば、日本の球団はまだ太刀打ちするのは難しいだろう。
そのようなレベルの差もあり、コンスタントに160km/h近いボールを投げられる投手というのは、日本の打者では簡単に打ち崩すことはできない。そういう意味では、コントロールで自滅しない限りはアブレイユ投手は間違いなく守護神候補の一人だと言えるだろう。
そのコントロールという意味では、日本のマウンドはメジャーのマウンドと比べると傾斜が緩く、土も少し柔らかい。これを嫌う外国人投手も多い中で、アブレイユ投手がどれくらいアジャストしていけるのかは注目していく必要がありそうだ。
そしてこの日本のマウンドに少しでも早く慣れるためにも、この冬はウィンターリーグよりも、できるだけ早く来日して日本のマウンドに慣れる作業をしていって欲しい。
中米の選手は冬になると中米に戻りウィンターリーグでプレーをする。つまり彼らは一年中試合に出続けることが多いのだが、日本でビッグマネーを手にするためにも、アブレイユ投手にはぜひ一日でも早い来日を目指してもらいたい。
そしてもう一人、ライオンズはマーリンズ傘下のマイナーリーグでプレーしていたジェフリー・ヤン投手の獲得も目指している。実はアメリカではこの投手の情報は錯綜しており、最初はライオンズと合意したという報道が出たものの、その直後に今度はオリックスと合意したというニュースも流れた。
つまり現時点ではどうやら、西武とオリックスにより争奪戦となっているようなのだ。だがライオンズはすでにアブレイユ投手とコルデロ選手というふたりのドミニカンを獲得している。チーム内に複数のドミニカ人チームメイトがいるというのは、同じドミニカ人であるヤン投手にとっては大きなプラスになるはずであり、これはライオンズにとってはこの争奪戦においてややアドバンテージになると思われる。
このヤン投手はまだメジャー経験はないのだが、190cmという長身左腕で最速159km/hを投げ込んでくる。左投手が投げてくる159km/hは、打者からすると170km/hにも感じられるはずだ。
そしてこのヤン投手もまたリリーフタイプの投手であり、もしアブレイユ投手とヤン投手が共にライオンズ入りしてくれれば、来季のブルペンはかなり強固なものとなるだろう。
近年のライオンズは、外国人投手に関しても「日本人離れ」した投手の獲得はほとんどしてこなかった。だがここに来て一気にふたりの「日本人離れ」した外国人投手の獲得を目指しに来ている。
これは後藤高志オーナーの言葉通り、今オフは「お金の心配はしなくて良い」補強が実現しているということであり、久しぶりに西武球団が本気で優勝を目指しに来ている姿の表れだと言える。
もちろんライオンズは今までも毎年優勝を目指していたわけだが、しかし西武球団としては再上場問題や、コロナ禍のダメージもあり、近年はなかなか外国人選手に対し大金を支払うことはできなくなっていた。
だがここに来て日本人離れしたレベルの3選手を獲得しようとしているのは、近年の西武球団の補強の流れとはかなり変わって来ていると言える。ヤン投手に関してはまだオリックスとの争奪戦となっているわけだが、ここで西武球団にはオリックスには負けないでもらいたい。
この争奪戦でもしオリックスに敗れてしまえば、オリックスをリーグ四連覇へと向かわせてしまうことにもなりかねない。そうならないようにまずはオフの段階で、外国人補強において西武球団はオリックス球団にまず勝利しなければならない。
そしてこの争奪戦の勝利は2024年のライオンズのスタートを幸先良いものにしていくだろう。2024年こそは何のトラブルにも巻き込まれることなく、まずは補強を成功させ、野球に集中できる環境を整えてもらいたい。そうすれば2024年は、今のメンバーであれば優勝できないはずがないチームへと変貌して行くはずだ。
【追記】
西武球団はさらに、ヘスス・アギラー内野手の獲得も濃厚となっている。アギラー選手はメジャーで114本塁打を記録しているパワーヒッターだ。アギら選手に関しては『西武に新加入する4人目の助っ人は大物メジャーリーガー、ヘスス・アギラー選手』をご覧になってみてください。今オフの西武球団の補強が、いかに素晴らしい補強だったかをお分かりいただけると思います。