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2024年7月22日公開

今ライオンズに必要なのは安定感抜群の判断を下せる三塁ベースコーチ

判断ミスがあまりにも目立った阿部真宏三塁ベースコーチ

今ライオンズに必要なのは安定感抜群の判断を下せる三塁ベースコーチ

渡辺久信監督代行は代行就任時に、少なくとも今季中にコーチは代えないと語った。しかし代えないことにはここから選手たちがさらに飛躍することはないのではないだろうか。

まず筆者が挙げたいのは阿部真宏内野守備走塁コーチだ。内野守備コーチとしては優秀なコーチで、野球と向き合う真摯な姿勢は尊敬に値する。しかし三塁コーチとしての判断は特に交流戦明け以降、疑問符が付くものが多いのだ。もっと言うと、明らかにセーフになりそうにない場面でも走者に三塁を蹴らせ、ホームで憤死するという場面が目立っている。

この判断ミスにより奪えなかった1点、繋げられなかったチャンスが1つや2つではないため、ようやく出せた走者をもっと大切に進めていくためにも、もう少し安定感のある判断ができる三塁コーチが必要だと思う。

かと言って赤田将吾外野守備走塁コーチに関しても決して判断が良いベースコーチとは言えない。赤田コーチを見ていると、選手に嫌われたくないという心理を見て取ることができるのだ。

赤田将吾という野球人は、筆者は決して友だちなどではないのだが、複数回ユニフォームを着ていない場面でご一緒させていただいたことがあるのだが、本当に良い人を絵に描いたような好人物なのだ。現役時代にライオンズからトレードに出された際も、チームメイトが涙を流してくれるほどの人格者であるわけだが、赤田コーチの場合、良い人すぎて選手を育成し切れていないようにも見えるのだ。

そのため赤田コーチと阿部コーチのポジションを入れ替えたとしても、走塁に関して劇的に何かが改善されることはないだろう。基本的に選手をしっかりと育成できるコーチというのは、丸くなってはいけないものだ。角があって程よく選手が反発してくるくらいが丁度良い。

例えば黄金時代の広岡達朗監督などは、程よく選手が反発してくるような挑発を時々見せることで、選手の反骨精神に火を付けるのが非常に巧い野球指導者だった。だが今のライオンズに監督コーチとして程よく選手を挑発することができるのは、恐らくは渡辺久信監督代行くらいなのではないだろうか。

阿部コーチにしても赤田コーチにしても良い人すぎて、恐らくは選手を挑発するという発想すらないと思われる。そのため周りから見ていてもこの二人のコーチというのは、コーチというよりは選手たちが気持ちよく練習できるようにするためのパートナーというふうに見えてしまうことが多いのも事実だろう。

ライオンズの名三塁コーチは伊原コーチだけではなく苫篠誠治コーチもいる

ライオンズの名三塁ベースコーチとしては誰もが伊原春樹コーチの名を挙げると思う。もちろん筆者も同様で、筆者は伊原春樹監督はまったく評価していないのだが、伊原春樹三塁コーチに関しては本当に指導力の高い素晴らしいコーチだったと今でも思っている。

三塁コーチとしての判断力も抜群で、筆者は伊原三塁コーチが他球団時代を含めても判断ミスをした場面はほとんど見たことがないし、記憶にもない。ただし、もちろん伊原コーチのライオンズ復帰はほぼないと言える。やはり監督としてあれだけチームを壊してしまった人物だし、近年はスポーツ紙ではなく、タブロイド紙のネット記事で古巣ライオンズに対し悪口めいたことも言ってしまっているため、伊原コーチのライオンズ復帰の可能性はまずないに等しい。

若い世代のコーチを育てることは大切だが、しかしそれを一軍でやるべきではない。ライオンズの場合、一軍でそれをやろうとしてしまったことで名コーチがいなくなってしまった。

これが辻発彦監督のように、監督自身に確かな指導力がある場合はコーチは比較的若くても良いと思う。なぜなら監督自身がトップダウンでどんどん指示を出していけるからだ。だが松井稼頭央前監督のように若く、口数が少ない監督の場合はなかなか監督の意図がコーチに正確に浸透していかないこともある。

このような場合は、松井監督の考えを上手く汲み取ってくれるベテランコーチの存在が必要だ。だが残念ながらそれができるコーチの存在は去年も今年もライオンズにはいなかった。平石洋介ヘッドコーチにしても、松井監督の考えは理解していたとしても、松井監督の腹の底まで見据える眼力はなかったのではないだろうか。

ここで話を三塁コーチに戻すと、例えば苫篠誠治コーチの復帰などどうだろうか。苫篠コーチも名三塁コーチと呼べる一人であり、苫篠コーチはライオンズを含め、現役引退後は6球団でコーチを務め、まさに三塁ベースコーチのスペシャリストだと言える。年齢的にもまだ60歳で、渡辺監督代行よりも一学年上となる。お世辞にももはや若いとは言えないし、今は髪もすっかり白くなってしまっている。

だがコーチを任せれば、これまでの抜群の経験値から非常に安定した判断を三塁コーチとして見せてくれるはずだ。ただ心配なのは、あまりにも三塁コーチとしての経験が多すぎる点だ。なぜこれが問題なのかと言うと、6球団の選手たちが苫篠コーチのサインを経験していることにより、それだけ多くの人物が苫篠コーチのサインを読める可能性があるということなのだ。

それを考えると苫篠コーチの復帰がベストであるとは言い切れないわけだが、しかし苫篠コーチには、他の三塁コーチのサインの出し方をコピーするという特殊能力もある。この能力を活かせれば、球界に苫篠コーチのサインに慣れた監督コーチが多かったとしても、そう簡単にサインを読まれることはないのではないだろうか。

筆者は三塁コーチには若さよりも安定した判断力を求めたいため、やはり来季以降はもう少し三塁コーチとして経験値の高い、苫篠コーチのようなベテランコーチを招聘することも重要なのではないかと考えている。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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