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2024年8月26日公開

使っても使っても育たない西武の若き打撃陣、問題はコーチ組閣にあった!

埼玉西武ライオンズ vs 東北楽天ゴールデンイーグルス/23回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Eagles 0 0 0 1 1 0 0 0 0 2 9 0
Lions 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 1

継投●武内夏暉甲斐野央上田大河
敗戦投手武内夏暉 7勝5敗0S 2.37
失策山村崇嘉(8)

若い指導者だけで組閣してしまった渡辺久信GMのミステイク

渡辺久信監督代行

情けないと言うべきだろうか。今日もライオンズ打線は僅か2安打で終えてしまった。昨日は渡辺久信監督代行があれだけのファイティングポーズを見せながらも、どうやら選手たちはそれを意気には感じていなかったようだ。

今日の相手は前回の対戦では2回持たずノックアウトさせたルーキー古謝投手だった。しかしライオンズ打線はこの古謝投手を再攻略するどころか、逆に返り討ちに遭ってしまったような結果になってしまった。これだけ打てないというのはやはり渡辺監督代行が仰る通り、プロとしてどうなのか、ということになってしまう。

やはり筆者は思ってしまうのである。現メンバーの成長を期待しても、来季もまた似たような結果になってしまうだろう、と。ではなぜライオンズ打線はこれほどまでに打てなくなってしまったのだろうか。もちろんそれは近年だけで見ても秋山翔吾選手がメジャー移籍、浅村栄斗選手、森友哉捕手、山川穂高選手が続々とライオンズを去って行ったという事実が最も重くのしかかっている。もしこの4人が今なおライオンズに在籍していたならば、今季のライオンズ打線は外国人打者抜きでも破壊力抜群となっていたはずだ。

だが主力選手たちが去ってしまったことだけが打線の弱体を招いたわけではない。やはり一番の問題は野手が育っていない点だ。もちろんすべての野手が均等に育って来るということはない。だが一番気がかりなのが、例えば清原和博選手が抜けると松井稼頭央選手が台頭し、松井選手がメジャーに移籍すると中島裕之選手が一軍に定着したという歴史があるわけだが、スター選手が去ったあと、そのチャンスをモノにできる選手がいなくなったことだ。

ライオンズと言えば、ドラフト3位以下で指名した野手たちが一軍の主力打者に育っていくケースが他球団以上に多かった。松井稼頭央選手はドラフト3位、和田一浩選手は4位、中島裕之選手は5位、栗山巧選手は4位、浅村栄斗選手もやはり3位指名だった。そしてもっと言えば、ドラフト下位指名を育成できるコーチもいなくなってしまった言える。

例えば田邊徳雄コーチなどは監督就任前はまさに好々爺と呼ばれる名コーチで、数々のスタープレイヤーを育て上げてきた。そしてまた、土井正博コーチも同様だ。しかし今は選手に寄り添うだけのコーチばかりになってしまい、選手の顔色を見ながらの指導しかできないコーチが多い。もはや不甲斐ない選手を叱咤叱責できるコーチさえおらず、まさにコンプライアンスに雁字搦めにされているような状況だ。

これを一概に選手を育てられないコーチ陣が悪いと言うこともできない。なぜならそのような状況にしてしまったのは西武球団の上層部、もっと言えば親会社である西武HDであるからだ。後藤高志オーナーはこれまで全力でライオンズを守ってきてくれた。しかし球団運営ということになると、銀行家の肌感覚では強いチームを作ることは難しいようだ。コンプライアンスにしても、プロ野球に必要なレベルのコンプライアンスと言うよりは、銀行レベルのコンプライアンスになってしまっているようにも見える。

後藤高志オーナーは野球の専門家ではない。そしてオリックス、ソフトバンクのオーナーのように熱烈な野球ファンというわけでもなかった。このあたりがやはり球団運営にも影を落としているのだろう。ライオンズをこれまで必死に守ってきてくれた後藤オーナーには心から感謝をしているが、しかしライオンズを再び強い球団にするためには、後藤オーナーの球団運営に対する意向は少し差し控えた方がいいのかもしれない。

今季圧倒的な強さを見せているソフトバンク球団を見ると、監督もコーチも選手には厳しく接している。さらに言えば現役選手である和田毅投手でさえも球団運営に関して苦言を呈することがあるほどだ。だが今、ライオンズでその厳しさを見せている者は渡辺監督代行だけだと言える。

近年のライオンズはコーチ陣の若返りも図っているわけだが、一旦これは逆行させるべきだ。田邊徳雄コーチや苫篠誠治コーチらベテランを復帰させ、あとは嫌われ役も厭わずに引き受けてくれる石毛宏典氏をヘッドコーチに招聘してはどうだろうか。例えば伊東勤監督の再登板に対し、石毛宏典ヘッドコーチということになれば適切な厳しさがライオンズに戻って来るだろうし、彼らを見ながら若い世代のコーチたちも学ぶことができる。

やはりライオンズからは、黄金時代を知るコーチをまだ現場から引き上げるべきではないのだ。ちなみに現在のコーチングスタッフで黄金時代を知るのは、渡辺監督代行ただ一人だ。これでは黄金時代の強さや勝ち方を継承していくことなどできない。

そしてもう一点書き加えておくと、平石洋介ヘッドコーチの起用は常識からしても結果論からしても正しかったとは言えない。なぜなら一軍には9人のコーチングスタッフがいるわけだが、平石コーチの年齢は下から三番目なのだ。果たしてこれだけ若いヘッドコーチに、他のコーチ陣をまとめられる能力があるのかと就任時は筆者も心配したものだが、やはり平石コーチにそれはできなかったようだ。

若い松井稼頭央監督に対しさらに若い平石コーチでは、やはり舵取りは上手く行かなかったようだ。これが例えば辻発彦監督の時は3年目から指導歴豊富な馬場コーチがヘッドコーチを務めていき、チームは比較的安定した運営がなされていた。やはりヘッドコーチというのは経験豊富な人物が努めなければならないポジションなのだ。

そういう意味では平石コーチは確かにイーグルスのヘッドコーチ職、さらには一軍監督を努めた経験を持っていた。だが平石監督時代のイーグルスのコーチ陣を見ると、ヘッド職にベテラン真喜志康永コーチがおり、その他の顔ぶれを見ても金森栄治打撃コーチ、伊藤智仁投手コーチ、森山良二投手コーチ、光山英和バッテリーコーチ、苫篠誠治外野守備走塁コーチとずらりとベテランコーチたちの名前が並んでいた。

松井監督就任時のライオンズもやはりこのように、周りをベテランコーチで固めるべきだったのだ。つまり松井監督誕生時のライオンズのコーチングスタッフには、若い松井監督を育てられる名ヘッドコーチもいなければ、選手を育てられるベテランコーチもいなかったということで、これではやはり選手が育ってこないのにも不思議はない。

そしてこのあたりに関しては渡辺久信GMの失策だったとも思われるため、来季は同じミスを繰り返さず、しっかりと選手を育てられるコーチ陣を招聘してもらいたい。そして若いコーチを育てるにも、ベテランコーチとコンビを組ませることでやっていってもらいたい。そうしなければ今季のライオンズのように、若い選手を使っても使ってもなかなか育たないという状況を繰り返してしまうだろう。

ちなみに筆者が個人的にライオンズに戻ってきてもらいたいコーチは田邊徳雄打撃コーチ、金森栄治打撃コーチ、苫篠誠治三塁ベースコーチ、石井貴投手コーチ、そしてもしも来季も渡辺監督体制が続くのであれば、デーブ大久保コーチの復職にも期待したい。

ただ、現在の消極的な球団運営をする上層部としては、デーブ大久保コーチの復職は恐らくは選択肢には入っていないのだろう。だが渡辺久信監督というお目付役がいれば、デーブ大久保コーチが暴走することはまずないと考えられるため、短期的に打線の再建を図るためにもデーブ大久保コーチを復職させたり、そうじゃなかったとしても指導力抜群の田邊コーチ(現フロント)、もしくは金森コーチ(現早大コーチ)のいずれかは復職・招聘すべきではないだろうか。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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