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2022年9月20日公開

現役を引退してゆく内海哲也投手がこれから歩むべき新たな使命

内海哲也

内海哲也投手、魂のラスト5球

2018年オフ、炭谷銀仁朗捕手がFA宣言をしてジャイアンツに移籍した。この時プロテクト枠から漏れ、人的補償としてライオンズに移籍してきたのが内海哲也投手だった。渡辺久信GMはプロテクトから漏れた選手の名簿に内海投手の名前を見つけた瞬間に獲得を決めたと語っている。

ライオンズとしては炭谷捕手を失ったのは大きな痛手だったが、しかしもしかしたら、炭谷捕手の残留以上に内海投手の獲得はライオンズにとって大きなプラスになったのかもしれない。

もし炭谷捕手が残留していたら、炭谷捕手の下で森友哉捕手はもっと捕手として成長できたかもしれない。と言うよりも、もっとスピーディーに成長できたかもしれなかった。だが実際のところ、炭谷捕手を欠いてしまっても森捕手は年々しっかりと捕手として成長してきている。

だがもし内海投手がライオンズに来てくれていなければ、ライオンズのチーム防御率がここまで劇的に改善されたかどうかは分からないし、内海投手の助言のおかげで殻を破れた投手もたくさんいる。内海投手がライオンズにもたらしたレガシーは計り知れない。

願わくば内海投手には来季以降も投手コーチとしてライオンズに残ってもらいたい。投手コーチに内海哲也コーチ、そして内野守備走塁コーチに片岡易之氏が加われば最高ではないか!

ライオンズにレガシーをもたらしてくれた内海哲也投手

今日、内海投手は先発マウンドに登り打者一人に対し投げ、5球でセカンドゴロに仕留めた。現役最後のマウンドは5球すべてストレートだった。

もちろんジャイアンツ時代のような球威はなかった。しかし魂が込められたこの5球は本当に見応えがあった。スタンドには東京ガス時代の仲間である片岡易之氏の姿や、涙する奥様の姿も見られた。内海投手のこの姿を勇姿と言わず、一体何を勇姿と言えようか。

本人は薄々覚悟はしていたと以前語っていた。しかし実際にプロテクト枠から外れてライオンズへの移籍が決まった時は、内心忸怩たる思いがあったのではないだろうか。プロテクト枠に入れなかったという事実を突きつけられて、我々には想像もできないような悔しさがあったと思う。

だが内海投手はライオンズに来ても決して腐ることはなかった。それどころか、1軍ではほとんど活躍はできなかったわけだが、ライオンズでの4年間で野球に対して手を抜くことは決してなかった。そしてこれこそが渡辺久信GMがライオンズの投手陣に見せてやりたい姿だったと言う。

渡辺久信投手自身の晩年は、体型も崩してしまい決して若手のお手本になるものではなかった。その自らの失敗経験も踏まえきっと、自分のようにはならないであろう内海投手の姿をライオンズのレガシーとしたかったのだろう。そして実際、内海投手は4年間での勝ち星の数以上にライオンズに大きなプラスをもたらしてくれた。

かつての江藤智選手のように素晴らしかった内海哲也投手の人柄

他球団から移籍してきて、4年間でほとんど活躍することができなかったのに、かつてここまで移籍先の球団で愛された選手などいただろうか?いや、ほとんどいなかったと思う。

かつて、豊田清投手がFAでジャイアンツに移籍した時は人的補償として江藤智選手がライオンズに加入した。江藤選手もライオンズでの在籍は4年間だったが、レギュラーとして大きな仕事をすることはできなかった。

だが江藤選手はいつも中村剛也選手に寄り添い、四番打者としての重圧に打ち勝つ秘訣や心得などを伝え続けた。中村剛也という稀代のスラッガーは、ある意味では江藤智選手のレガシーだとも言える。

江藤選手も本当に素晴らしい人柄の選手でライオンズでも愛された選手だったわけだが、内海投手の存在は本当にそれ以上だった。内海投手はライオンズ入りした最初の2年間は手術などもありプレーどころではなかった。しかしプレーできないならできないなりにチームに貢献しようとしてくれる姿は、野球人だけではなく、誰もが見習うべき姿だった。

巨人軍というブランドを考えると、そこから弱体化していたライオンズに移籍するというのはある意味では左遷同様だ。特に一度はオリックスからのドラフト1位指名を断って東京ガスに行き、2年後に自由獲得枠で巨人入りした経緯を持つ内海投手ならば、並の選手であれば尚更だったと思う。

だが内海投手はライオンズに来てからも若手同様に汗を流し、むしろ若手選手たちよりも走力があったくらいだ。あの巨人軍のエースとして一時代を築いた内海投手がそれだけ頑張っているのだから、若手選手が手を抜くことなど絶対に出来はしない。

ライオンズ投手陣の底上げは、西口文也コーチの土台作りとそれを継承した豊田清コーチの功績も大きいわけだが、しかし同様に内海哲也投手の存在も非常に大きかった。

内海哲也コーチのこれからの使命

渡辺久信GMには、内海兼任コーチを全力で慰留してもらいたい。これ見よがしに今更ジャイアンツに横取りなどしてもらいたくはない。内海投手は選手としては引退してしまうが、コーチとしてはまだまだライオンズの投手コーチなのだ。

ライオンズには将来を嘱望される若きサウスポーが何人もいる。彼らをしっかりと一本立ちさせ、ライオンズで左腕王国を築き上げることこそが、これからの内海哲也コーチの使命だ。

来季はジャイアンツではなく、ライオンズの投手コーチとしてライオンズを日本一に導いてもらいたい。残念ながらライオンズは内海投手の花道を飾ることはできず、7連敗で貯金も尽きてしまったわけだが、これだけ崩壊したチームを来季しっかりと立て直していくためにも、内海哲也コーチの力が必要なのだ。

内海投手、18年間の現役生活本当におつかれさまでした。そしてライオンズに来てくれて本当にありがとう!!

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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