2024年8月 8日公開
今日は平良海馬投手が100日振りに一軍マウンドに復帰したわけだが、しかしその平良投手が被弾したツーランホームランもあり、試合は3-0で敗れてしまった。これで3連戦3連敗は今季16回目となり、チームの勝率も.299と再び.300を切ってしまった。
そして昨日のコラムでも書いた通り、打線はまた明らかに低迷し始めている。もちろん今季は打線が好調だったことはないわけだが、それでも少し前の状態と比べると1試合あたりのヒットの本数は目に見えて減って来ており、今日の試合も僅か3安打で終わっている。
バファローズも同様に少ない4安打だったわけだが、しかし先発の青山美夏人投手が四球で自滅しかけた際のヒット、そして7回のツーランホームランと効率よく点を取っていた。バファローズも決して調子が良いチームではなく、ライオンズ戦が始まるまでの直前の成績は1勝11敗1分で、この間の勝率は.083だった。
言わばバファローズもどん底状態だったわけだが、ライオンズはそのバファローズ相手にカード全敗を喫してしまった。この姿だけを見ると、まるで西武に身売りする以前の暗黒時代のライオンズを見ているかのようで、今やパ・リーグのお荷物となりつつある。
一般的には渡辺久信監督代行に代わってからさらにチーム状態が悪化したとも言われているが、確かに数字だけを見ると松井稼頭央前監督は15勝30敗の勝率.333、渡辺監督代行以降は14勝38敗の勝率.269という数字であるため、悪化したとも言える。
だが今季のライオンズは、開幕からの9試合は6勝3敗という好成績を挙げていた。だが残念ながらその翌週からまったく勝てなくなってしまう。もしこの最初の9試合の数字を除外すると、松井監督の数字は9勝27敗の勝率.250となる。つまりチーム状態が悪化した後の数字だけで見ると、松井監督の勝率.250に対し、渡辺監督代行は.269であるため、数字的には僅かだか改善したとも言えなくもない。
では今季最初の9試合の好成績とは一体何だったのだろうか?筆者が考えるに、今季のライオンズは優勝候補にも挙げられていたほど善戦が期待されていた。そして選手たち自身も、メディアや解説者たちが「今年のライオンズは強い」と言うのを聞き続けているうちに、「今年は勝てる」と思い始めていたと思う。
最初に関しては他者からの高評価が自身に繋がり、その勢いで勝っていたのではないだろうか。だが実際幕が上がってみると、周囲の評価ほど強さを見せられた試合はなく、接戦をギリギリでモノにしていたのが最初の9試合だった。しかし9試合目に1-11とファイターズに圧勝した次の試合からライオンズは7連敗を喫し、それ以降はほぼ連勝がない状態で負け続けている。
選手たちからすると、「自分たちは今年は強いと評価されていたのに、実際にはそんな戦い方はできていない。アギラーもコルデロも前評判ほどのパワーは見せていない」というムードに徐々に入っていき、それでも9試合目に下手に1-11と圧勝してしまったものだから、「これがメディアが言っていた今年のライオンズの強さか!」となり、それが誤った方向への自信となってしまったことで、野球が雑になっていったように筆者には見えていた。
そして10試合目以降は守護神アルバート・アブレイユ投手やセットアッパー甲斐野央投手で逆転を許す試合も続いてしまい、それにより徐々に試合の組み立ても上手くいかなくなっていく。そしてその流れはベテラン増田達至投手でも止めることはできず、増田投手もやはり4月の時点でサヨナラ打を浴びている。
球界で最も多く使われる諺に、勝って兜の緒を締めよ、という物がある。これは勝った時こそ油断なく次戦に備えよ、という言葉であるわけだが、今思うと松井稼頭央前監督は1-11と大勝した9試合目にチームを引き締めておくべきだったのだろう。
開幕からの9試合は6勝3敗と良い滑り出しとなり、しかも9試合目は1-11と圧勝したことにより、上述したように若い選手たちが言わば調子に乗ってしまったのだ。まだまったく完成された大人のチームではないのにもかかわらず、「俺たちは勝てる」と思い込んでしまい、それにより野球が雑になっていってしまった。繰り返されるバントミスや、失策が付かない守備のミスが繰り返されているのはまさにその典型だと言える。
また、打つ方に関しても狙い球の絞り方があやふやで、甘いコースを見逃してストライクを取られ、1ストライク後以降に難しい球を打ちにいって凡打を繰り返しているケースが今季はずっと続いている。そしてこれに関しては10試合目以降ほとんど勝てなくなってしまったことで、打席でのボールの待ち方がさらに消極的になっていった。
例えば極端な話ではなく、実際によく見られる例として、ど真ん中のボールを見逃した後に外角低めいっぱいの難しい変化球に手を出して打ち取られる、という場面も今季はここまで数え切れないほどある。だが一方対戦相手はどうだろうか?ここ数試合などは特に、ライオンズの投手陣がど真ん中に投げてしまった失投を高い確率でスタンドインさせている。
これに関しては渡辺監督代行もコメントされていたが、対戦相手は失投を確実に仕留めて来ているのに対し、ライオンズの打者たちはその失投を見送ってしまっているのだ。これではヒットが出ないのもまったく不思議ではない。しかもチームの誰か1人がそうなのではなく、打線全体がそうなっているのだ。
栗山巧選手や中村剛也選手があと10歳若ければチーム状態もまた変わっていただろう。だが残念ながら今一軍にはこのふたりの名はない。もしこのふたりがあと10歳若ければもっとガンガン打線を引っ張っていき、打線全体がここまで低迷することもなかったはずだ。
ではライオンズは今後どうすべきなのだろうか?結論から言うと、筆者は現在のベルーナドームを何とかすべきだと考えている。ベルーナドームは春秋は非常に寒く、夏は死ぬほど暑い。他球場であっても試合中に熱中症だと思われる症状を訴える選手が出ているのだから、ベルーナドームではなおさらのはずだ。
かつてのエース涌井秀章投手もまた、ベルーナドームの暑さによく足を
だが西武球場時代と現代とでは暑さのレベルが違う。それに加え西武球場には傘がかけられ、まるで夏場はビニールハウス状態だ。しかも試合終了後に選手たちが登らなくてはならない階段は果てしなく長い。これではFAで他球団に移籍したくなるのも当然だ。
ライオンズからメジャーを除くNPB他球団にFA移籍していった15選手中、実に12選手がエアコンが効いているドーム球場を本拠地とするチームを選んでいる。現在は12球団中6球団、つまり半数の球団が屋外型球場で試合を行なっているわけだが、ライオンズから国内他球団にFA移籍した選手の80%がドーム球場を選んでいるというのは、やはりベルーナドームの過酷さが影響していたのではないだろうか。
西武球場というのは狭山丘陵を掘り下げて作った掘り下げ式球場だった。確か日本初の掘り下げ式球場だったのではないだろうか。そして西武球場は現在大谷翔平選手が所属するドジャースの本拠地、ドジャースタジアムをモデルに作られたと言われいてる。
その西武球場に傘がかけられ始めたのは1997年オフで、翌98年は観客席を覆う傘の縁部分だけが完成し、真ん中はまだドーナツ状にまだぽっかりと大きな穴が空いていた。そのため陽が傾くと影でフライが物凄く捕りにくい状態になっていた。だが98年オフの工事でようやく真ん中の傘部分も出来上がり、この段階で名前も西武球場から西武ドームに変更された。
実はこの時、完全ドーム化する案と、お台場ドームを新設する案も同時に検討されていた。だが完全ドーム化してしまうと自然一体型ではなくなってしまい、「公園の中にある野球場」と同じ立ち位置だった西武球場が、「街の建造物」としてお役所から看做されてしまうようになる。すると球場を完全ドーム化する以上に莫大な費用がかかってしまうため、完全ドーム化が断念されたという経緯があった。これが他球場のような第三セクターではなく、自前球場の最大のデメリットだと言える。
そしてお台場ドームに関しては東京23区にプロ野球チームが4球団になってしまうこと(ファイターズの本拠地は当時まだ東京ドーム)、そして都内での建設費用があまりにも高額な見積もりとなり、さらには西武沿線からも遠く離れてしまうという理由でこちらも断念されている。さらに付け加えるとファイターズが東京ドームから札幌ドームに本拠地を移す直前、西武球団は札幌ドームを第二本拠地にする交渉をしていたのだが、これもファイターズが札幌に移転したことにより頓挫してしまった。
だが今こそ札幌ドームを準本拠地として考え直す良い時期ではないだろうか。札幌ドーム側もファイターズでの失敗があったため、ファイターズ時代よりも好条件で札幌ドームを借りることができるようになっている。そしてゆくゆくは札幌ドーム・エスコンフィールドでの西武・日本ハム戦を、札幌シリーズと題して盛り上げていくと良いのではないだろうか。
そして本拠地での試合の半数、特に真夏の暑い時期での試合が札幌ドームで行われることになれば、選手たちの体への負担も大幅に軽減することができる。しかも札幌ドームを準本拠地にすれば、札幌2ヵ所と仙台で移動も非常に楽になる。このように選手への身体的負担が軽減されれば、今後FAでライオンズを去っていく選手の人数も間違いなく減らしていけるはずだ。
もしかしたらこれこそが補強以上に効果のあるチーム強化となるのではないだろうか。とにかく夏場のベルーナドームの過酷さはライオンズの選手、他球団の選手、そして応援するファンからも不評だ。それならば、埼玉近郊のファンが試合観戦する機会は確かに減ってしまうわけだが、選手ファーストで考えれば札幌ドームの準本拠地化は検討に値すると筆者は考える。だが果たして、もはやこの件が西武球団内で検討されることはないのだろうか。