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2024年8月 7日公開

どこか迷いが見えるリリーフのマウンドに登る松本航投手の姿

オリックスバファローズ vs 埼玉西武ライオンズ/17回戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Lions 0 0 0 2 0 0 0 0 0 2 4 0
Buffaloes 0 0 0 0 0 2 1 0 × 3 6 1

継投隅田知一郎●松本航ボー・タカハシ
敗戦投手松本航 1勝6敗0S 2.56

失投する割合が増えて来ているように見える近頃の投手陣

ライオンズはまたもや逆転負けを喫してしまった。先日の逆転負け試合では渡辺久信監督代行も「勝たなければならない試合だった」とコメントしていたが、今日ももちろんそうだったと思う。しかし投手陣が今日もホームランによって沈められてしまった。

隅田知一郎投手は6回2失点であるため、QSをクリアしたと考えるとしっかりと試合は作ってくれたと思う。2失点は喫したものの、味方が得点してくれた直後の失点ではなかったため、最悪の失点の形ではなかったとは言える。

だが6回、走者を1人置いた場面で森友哉捕手を打席に迎え、3-2というフルカウントから投じたストレートがほとんどど真ん中に行ってしまった。この場面、森捕手には6球を投げたのだが、最後は3球連続ストレートという選択だった。しかし4球目よりも5球目、5球目よりも6球目というように、コースがどんどん甘くなって行った。

昨日のコラムでも書いた通り、同じ球種を少しずつ甘いコースにしながら投げたら、一軍では確実に打たれてしまう。しかも相手が四番を打つ森捕手だったのだから、これでは打たれない方が不思議だったと言える。全体的には6回2失点という好投だったわけだが、だが森捕手に打たれたこのホームランは防げるホームランだったはずだ。

最近のライオンズの投手陣は、ほぼど真ん中に失投するケースが増えているように思える。失投はもちろんすべての試合に付き物なのだが、しかしその割合がシーズン前半よりも増えてきているように見えるのが気がかりだ。

7回に松本航投手が打たれた勝ち越しのホームランもそうだった。2-2というカウントからの6球目のストレートがど真ん中に入ってしまった。この時の宗選手は変化球を狙っているようにも見えたため、ストレートの多投は悪くない判断だったとは思う。だが3球続けたストレートの3球目がど真ん中に行けば、例え変化球狙いだったとしても一軍の打者は、八番打者であってもしっかりと打ってくる。

どこか迷いが見えるリリーフのマウンドに登る松本航投手の姿

どこか迷いが見えるリリーフのマウンドに登る松本航投手の姿

さて、筆者が少し気になっているのがその松本投手だ。松本投手は、甲斐野央投手が肘の違和感により抹消された後、豊田清投手コーチが直々に依頼しリリーフに転向していた。だが松本投手自身、もしかしたらリリーフに適性を感じていないのではないだろうか。

筆者も個人的に松本投手はリリーフタイプではないと以前から書いているわけだが、松本投手もリリーフで向かったマウンドでどこか迷いがあるように見える時がある。試合への入り方も、先発とリリーフではまったく異なるわけだが、これまでの野球人生でずっと先発を務めてきた松本投手は、リリーフとしての試合への入り方をまだ掴めていないのではないだろうか。

先発の場合は試合前に肩を作り終えた状態で、自分のタイミングで試合に入っていくことができる。しかしリリーフの場合はいつ肩を作るようにと指令が入るのか分からず、突然肩を作って突然マウンドに登らされることも多々ある。一方先発投手の場合は、リリーフよりも長い時間をかけて肩を作るのが一般的だ。

今日の試合展開を考えると、もし隅田投手が6回に2点を失っていなければ、7回も続投だった可能性が高かった。しかし6回に入りボールがややうわずり始めたことで松本投手が7回のマウンドに登ったわけだが、そのピッチングを見ていると、どこか試合に入り切っていないように見える時があった。

もちろん集中していないとか、そのようなレベルの低い話ではない。集中は絶対にしていたと思う。だが気持ちの面で試合に入り切っていないように筆者には見えたのだ。先発していた時にはそのような姿を見た記憶は筆者の中にはないため、やはり松本投手は先発に戻してあげるべきではないだろうか。

報道によれば今週中にも平良海馬投手がリリーフとして一軍に復帰するようなので、平良投手が戻り次第、松本投手は先発に戻してあげるのが最善なのかもしれない。現状では菅井信也投手與座海人投手が先発として機能していないことを考えると、菅井投手が投げていた場所あたりに松本投手を戻してあげると本人としてもさらなるやり甲斐をマウンドで感じられるようになるのではないだろうか。

適性が先発にある投手の場合、やはりシーズン途中で急遽リリーフに回るというのは非常に難しい。これがオフシーズンからしっかりとリリーフとして準備できていたのならば話は変わってくるのだが、シーズン序盤まではずっと先発としてローテーションを回っていて、そこで急にポジションを変えられてしまうと、適応の難しさは第三者には想像もできないほどになると言える。

松本投手は、今季はせっかくマダックスを目指せる投球スタイルを確立しつつあったため、やはりそのスタイルで行かせてあげるのが本人のためではないだろうか。だが平良投手がセットアッパーとして戻ってくるのであれば、渡辺監督代行や豊田コーチもこのあたりについては再考することになるだろう。

競争を生み出すところからチームを作り直すべきなのかもしれない

そして打つ方に関してはまたかなり低迷して来ており、ヒットの本数が少ないまま試合を終えている割合がまた上がって来た。今日も3点台〜5点台という防御率のバファローズの投手たちを相手に、僅か4本しかヒットを打つことができなかった。ちなみにそのうちの1本は9回に守護神マチャド投手から打ったもので残りの3本は2点を取った4回に集中している。つまり4回と9回以外はすべてノーヒットだったということだ。

やはり体調が回復しているフランチー・コルデロ選手をそろそろ一軍に戻すべきではないだろうか。今はアンソニー・ガルシア選手が一軍の指名打者に入っているわけだが、コルデロ選手とガルシア選手はファームでは共に一塁と外野を守っている。つまり守るところがなくて一軍に上げられないという状況ではないということだ。

今は一軍のファーストは野村大樹選手が守っているわけだが、時々活躍するものの安定感という意味では非常に物足りない。しかしそれでも野村選手を起用し続ければ、チーム内に競争が生まれなくなってしまう。そうすると若い野村選手も伸びなくなってしまうため、野村選手にもっと緊張感を持たせるという意味でも外国人選手2人をもっと一塁で起用してもいいのではないだろうか。

やはりポジションというのは与えられるべきではなく、奪い取るものだと筆者は考えている。野村選手の場合移籍して来てすぐにスタメン起用され、そのまま一塁を守り続けているわけだが、そろそろ新たな緊張感を生むためにも、「打てないならいつでも他の選手に代えますよ」というメッセージを送るべきだと思う。その方が野村選手のためにもなると思うし、外国人選手も躍起になってポジションを奪いにくるだろう。

一般企業でもプロ野球でも、チーム内に生まれる競争がプレイヤーを強くしていく。だが今のライオンズには競争が非常に少ないように思われる。外野も一塁も、もっと外国人選手を絡めて競争を生み出していけば、もっとチームに活気が出てくるのではないだろうか。

今のライオンズの野手陣は、与えられたポジションで自分ができること以上のことをやろうとしているように筆者には見えている。だが実力以上のことをしようとしても空回りしてしまうだけで、まさにそれが今のライオンズの弱さに繋がっているのだと筆者は考えている。

渡辺監督代行もこうなったら基本に立ち返り、Simple is bestの精神でチーム内に競争を生み出すところからチームを作り直してみてはどうだろうか。もちろんそんなことに余力を使えるチーム状況ではないことは分かっている。しかしこれ以上落ちるところはないというところまで落ちて来ている今、あえて一度立ち止まり、基本に立ち返ることは決して無駄にはならないように思える。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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