2024年5月24日公開
オープン戦では一時絶好調だった移籍組の元山飛優選手だが、開幕して2ヵ月経つ今現在もファームで燻ってしまっている。イースタンリーグでの打率も19試合に出場して.176という低さで、この数字ではさすがに一軍がいくら貧打に苦しんでいるとは言え、一軍枠に食い込んでいくことはできない。
元山選手はオープン戦中盤までは絶好調でずっと高い打率をキープしており、クリーンナップを任せることができるのではないかとも言われていた。だがある出来事を境に途端にバッティングが崩れていってしまう。その出来事とは3月15日のオープン戦で、ホークスの投手から2打席連続死球をぶつけられたことだ。
もちろん野球に死球はつきものであり、打者としては上手く死球を避けて怪我を防いでいくのもバッティング技術の内だ。だが野球経験者であれば分かってもらえると思うのだが、実際には避け切れない死球が非常に多いのだ。もちろん避けられないから死球になるわけだが、避けられなければできるだけ怪我をしにくい当たり方をしていく必要がある。
もちろん元山選手はこの2打席連続死球で怪我をしたわけではない。せいぜいアザができたくらいだろう。だが死球というのは脳裏に残像が色濃く残ってしまうのだ。
例えば2008年に大活躍したクレイグ・ブラゼル選手だが、あれだけ打っていたのに頭部死球を受けた後はボールに恐怖感を感じるようになってしまい、一気に調子を落としていってしまった。恐らくは元山選手も似た状態になっているのではないだろうか。
野球のボールはとにかく硬い。それが140km/hや150km/hという、高速道の車よりも速いスピードで飛んできて体に当たるのだ。大きな怪我をしなかったとしても、とにかく痛い。筆者も数え切れないほど硬球に当たったことがあるのだが、当たりどころが悪いと涙が出るほど痛いのだ。
恐らくは元山選手の頭の中にも2打席連続死球の痛みと残像が残ってしまい、その後から無意識の中でしっかりと踏み込んでいけなくなった可能性が高い。時々ファームの試合で打席に立っている姿を見ていても、オープン戦では見られていた積極的な姿がなりを潜めてしまっている。
ライオンズに移籍してきてからは嶋コーチや呉選手の助言を受けて、体を開かないようにしてライト方向にも引っ張っていくバッティングを覚え、それによりオープン戦スタート時から打ちまくる姿を見せていた。実際松井稼頭央監督も元山選手の3番起用を試すなどかなり期待していたように見えたのだが、しかし2死球後の大失速は筆舌に尽くし難い速さだった。
ライオンズとホークスの間にはまさにこの半年程度の間に因縁がいくつもある状態であるわけだが、元山選手の2打席連続死球もそのうちの一つだと言える。この時はさすがに普段は穏便な高山久打撃コーチもベンチを乗り出すようにしてホークスの投手を怒鳴りつけていた。
今季も源田壮亮主将と外崎修汰選手の打率は低い。このふたりの守備に関しては絶品であるわけだが、しかしバッティングに関してはかなり期待値を下回っている。だからこそ二遊間を本職とする元山選手にもトノゲンからレギュラーを奪い取るチャンスがあったわけだが、残念ながらその希望はホークスの投手によって台無しにされてしまった。
だが元山選手はまだまだ若い。そのため2死球から来る残像や無意識下の死球に対する恐怖心が薄れていけば、またオープン戦のような巧打を見せてくれるはずだ。今はまだ復調まで時間がかかりそうな雰囲気ではあるが、なんとか夏場までには貴重な戦力として一軍の戦列に戻ってきて欲しいと、筆者は元山飛優選手に対し強い期待を寄せているのである。