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2024年3月20日公開

【ゲームレビュー】2024年03月20日 埼玉西武vs広島/オープン戦

埼玉西武ライオンズvs広島東洋カープ/オープン戦

1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Carp 0 1 1 0 1 0 2 0 0 5 10 1
Lions 0 0 3 0 1 0 2 0 × 6 11 1

源田壮亮主将の悪送球は実は武内夏暉投手のミスだった

この日ベルーナドームで行われたカープとのオープン戦、先発マウンドに登ったのはルーキー武内夏暉投手だった。武内投手は大学の卒業式を欠席してまで、この日の先発調整に集中していた。結果的には5イニングスを投げて被安打6、奪三振4、四球2、失点3、自責点2という内容で、ベストピッチとまではいかなかったが、大崩れすることなくしっかりと試合を作って見せた。

武内投手は初回は三者凡退に抑えて素晴らしい立ち上がりを見せた。しかし2回、先頭のシャイナー選手を三振に打ち取った後、堂林選手にセンター前ヒットを打たれてしまう。そして筆者が注目したのはその直後の坂倉捕手の打席だった。

一死一塁という状況で、ここはダブルプレーを取れるのが最高の結果となる。そして武内投手は坂倉捕手に上手く一塁ゴロを打たせ、それをファーストのヘスス・アギラー選手が軽快に捌いて二塁に送球し、それを受け源田壮亮主将が二塁を踏みまず二死目、そして源田主将はすかさず一塁に転送するわけだが、ここでミスが出てしまう。

記録上は源田主将の悪送球エラーとなっているが、しかし筆者が見る限りこれは武内投手のミスだったように思う。源田主将の送球は、一塁ベースよりもややホーム寄りに投げられた。これはセオリーとしては正しい狙いとなる。なぜならこの場面では、一塁手は打球処理をしながら二塁ベース方向に走り、二塁手は一塁方向にゴロを追いかけた後、一塁ベースのバックアップに入る。

そして投手が一塁ベースに入って二塁からの転送を受けるのがこの場面での動き方となるわけだが、投手は一塁ベースのわずかに手前で捕球してから一塁ベースを踏むのが基本プレーとなる。そのため源田主将も一塁ベースよりもややホーム寄りに投げたわけだが、このボールが一塁ベースに到達した際、武内投手はすでに一塁ベースを通り越してしまっていた。

つまり武内投手は源田主将の送球に合わせて一塁ベースに入ることができず、もし一塁ベース上にいれば問題なくキャッチできるはずだったボールを、一塁ベースを通り越してしまったことにより捕球することができなかった。これは記録的には武内投手はボールには触れていないため、どうしても源田主将の悪送球エラーということになってしまう。しかし実際のところはこれは源田主将の悪送球ではなく、武内投手のミスだったと言える。

ちなみにこの場面、タイミングを合わせなければならないのは絶対的に投手側だ。なぜなら二塁で送球を受けて一塁に転送する源田主将はギリギリのプレーとなるため、ワンテンポでも送球が遅れれば併殺打は取れなくなる。そのため源田主将が投げたボールに対し、武内投手が上手くタイミングを合わせて一塁ベースに入らなければならない。

大学時代はこのようなギリギリのプレーというのは少なかったのだと思う。それゆえにまだ武内投手がプロレベルのコンビネーションプレーに慣れていないと見ることができ、この辺りの守備の動きに関しては今後の武内投手の課題になってくるのではないだろうか。

この拙いプレーの後から武内投手のピッチングがやや変わり始めた。坂倉捕手に続いて打席に入った上本選手には簡単に合わされてライト前に転がされてしまい、3回には四球を起点に失点し、5回には先頭から2連打を打たれてピンチを招き1点を失っている。

筆者が観ていた限り、武内投手は2回の拙守をやや引きずってしまったのかなという印象を受けた。このような姿を見ると、武内投手はもしかしたら現役時代の豊田清投手同様にミスを何日も引きずってしまうタイプの性格なのかもしれない。もしそうだとしたら、先発投手の場合は次の登板まで一週間空いてしまうため、武内投手が好調を維持するためにはこの間の気持ちの切り替えが重要になってくるのかもしれない。

支配下登録だけではなく、開幕スタメンも見えてきたブランドン選手

支配下登録復帰も見えてきたブランドン選手

さて、この試合打撃陣でまず注目しなければならないのはブランドン選手ではないだろうか。守備ではサードのスタメンとして出場し、途中からファーストに回り、そして最後はまたサードに戻った。ブランドン選手は決して守備力の高い選手ではないが、それでも平均値程度の守備力でこうして2つのポジションを守ってくれるというのは、首脳陣としては起用の幅が広がり非常に助かる。

そして打つ方でもブランドン選手は好調で、4打数2安打2打点とこの試合でも活躍した。2安打ももちろん素晴らしかったのだが、筆者は1打席目のバッティングを見てブランドン選手の好調さを確信した。1打席目ではセンターフライに倒れているのだが、ボールに逆らわないバッティングでセンターの定位置よりも深いややライト寄りに打球を飛ばしていった。

結果的にはセンターに追いつかれてアウトにはなってしまったが、このセンターフライは非常に内容の良いバッティングだったと思う。1打席単位で見るとアウトだったとしても、このようなバッティングを続けていれば必ず打率は残っていくはずだ。実際ブランドン選手は今日の試合を終え、オープン戦の打率は.353まで上がってきている。

この調子で良いプレーを続けていけば、ブランドン選手は間違いなく開幕までに支配下登録選手に戻ることができるだろう。そして複数ポジションを守れるブランドン選手のここまでの起用法を見る限り、松井稼頭央監督も間違いなくブランドン選手のことを戦力だと見做しているはずだ。

そしてブランドン選手の盟友である若林楽人選手も、前回の試合では4三振と良いところをまったく見せることができなかったが、この試合では途中出場し、2打席目には右方向への三塁打を放っている。

若林選手はセンターから左方向への凡打が多くなると調子を落としてしまうタイプの打者であるため、右方向へのヒットはバロメーターが上がってくる一つの目安と考えて良いのではないだろうか。若林選手も流石に4三振した後は自分のバッティングを見直したのだろう。残念ながら得点に繋がることはなかったが、しかしブランドン選手同様、若林選手もこの試合では素晴らしいバッティングを見せてくれた。

まだ投球軌道の予測が上手くハマっていないコルデロ選手

さて、好調な選手がいれば当然調子が悪い選手もいる。現状ではフランチー・コルデロ選手の状態がなかなか上がって来ない。ここまでのコルデロ選手のバッティングを見ていると、スプリッター、フォーク、チェンジアップという沈むボールに対しまったく対応できていない。

日本人投手は、メジャーリーグやマイナーリーグ、中米のウィンターリーグの投手たち以上に深く沈むボールを投げてくる。コルデロ選手は長いリーチを持ちながらも、まだその沈み具合に対応できていないという状態だ。だが今後それぞれの投手が投げてくるボールの落ち具合が頭の中にインプットされていけば上手く対応できるようになり、インプットされたデータとスウィングが噛み合うようになれば、面白いようにホームランが飛び出し始めるはずだ。

現状では確かにまったく打てていないコルデロ選手ではあるが、そういう見方をすればまだ心配する必要はないだろう。コルデロ選手は、インパクト時にまったくインパクトを見ずに振るタイプの打者であり、タイプとしては投球軌道を予測してそこにバットを出していくという打ち方をする。

つまりコルデロ選手は、ボールがその予測内に収まらないとなかなかハードヒットしていくことができなくなり、逆に対戦相手のボールの軌道が頭にしっかりとインプットされ始め、予測が上手くハマり始めると一気に状態を上げてくる打者であると考えられる。

しかし日本人投手の映像に関しては試合前後にアギラー選手らと共にしっかりと研究しているはずなので、現段階での不振はまったく気にする必要はないだろう。アギラー選手の場合は3割30本をクリアできる巧打者タイプの長距離砲であるが、コルデロ選手の場合は打率が.250少々だったとしても、最終的に35本塁打程度打ってくれれば期待値には十分だと言える。

この試合では打順を六番に落としたコルデロ選手ではあるが、五番六番あたりを打って、時々相手バッテリーを驚かせるような大砲を轟かせてくれれば、コルデロ選手の場合はそれでまずは十分ではないだろうか。そして我々ライオンズファンもその姿を期待しながら、コルデロ選手に関してはもう少し長い目で見ていくのが良いと思う。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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