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2024年3月24日公開

【ゲームレビュー】2024年03月24日 埼玉西武vs東京ヤクルト/オープン戦

埼玉西武ライオンズvs東京ヤクルトスワローズ/オープン戦
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Swallows 0 0 0 1 0 1 0 0 3 5 11 0
Lions 0 3 0 0 0 0 0 0 0 3 6 0

1点差の最終回で今までにない力みを見せてしまった甲斐野央投手

最後のオープン戦となったこの日のスワローズ戦、3-2と1点リードした場面で最終回のマウンドに登ったのは、ここまでずっと好投を続けてきた甲斐野央投手だった。前回の登板までは、甲斐野投手は基本的には8回を任されるのではないだろうかという起用法が続いていた。だがかねてより松井稼頭央監督も3連戦3連投はなかなかさせられないと話しているように、オプションに幅を持たせる起用法もここまでのオープン戦では見せいる。

春季キャンプ時、甲斐野投手も有力守護神候補として名前が挙げられていたわけだが、その期待に応えここまでは非常に良いピッチングを続けていた。それもあり「アブレイユ投手に何かあれば甲斐野投手で行く」というオプションを持たせるため、この試合では1点差でリードする最終回という、守護神にとっては最も難しい場面でマウンドに送り出された。

結果的にはその期待には応えられず3失点で敗戦投手となってしまうわけだが、この日のピッチングは見るからに力が入っているように見えた。と言ってももちろん力任せに投げているというわけではなく、いつもよりも僅かに力んでしまった分腕の振りが緩み、前回の登板まではしっかりと低めに決まっていた変化球が浮くことが多かったのだ。

甲斐野投手の魅力はストレートの速さだけではなく、空振りを取れる落ちる変化球にもあるわけだが、この試合ではその落ちるボールがほとんどすべて、捕手のミットよりも少しずつ高いところに行ってしまった。そのため先頭打者からまさかの3連打を許し、無死満塁という絶体絶命のピンチを迎えてしまう。

そして三振を一つ取った後に川端選手に犠牲フライを打たれ、村上選手を申告敬遠にしたあと、代打並木選手に2点タイムリーツーベースを打たれてしまった。ちょっとズルズル行きそうだなとも思われた場面だったが、この二塁打で本塁を陥れようとした走者を野手陣の見事なバックホームで防ぎ、何とか3失点で3アウトとなった。

結果だけを見ればオープン戦の最終戦でやや不味い姿を見せてしまった甲斐野投手ではあるが、しかし本人としてはようやく巡ってきた最終回に投げるチャンスで、やや気合が空回りしてしまったのだろう。マウンド上で見せる表情にしても、捕手のサインに首を振る姿にしても、見ているといつもの余裕がある甲斐野投手の姿ではなかった。

だがここまでは素晴らしいピッチングを続けていた甲斐野投手だけに、この1試合ですべての評価が覆ることはないだろう。開幕守護神に関してはアブレイユ投手になりそうだが、甲斐野投手もセットアッパーとしての責任を背負って開幕を迎えることになりそうだ。

そしてオープン戦の最後ではやや崩れてしまった甲斐野投手ではあるが、この試合の結果は無視してしまって良いと思う。とりあえず1点差で迎える最終回のマウンドの緊張感を経験できた、ということだけでこの試合の評価は終わらせてしまって良いのではないだろうか。ファンも首脳陣も、甲斐野投手に関しては心配することなく開幕を迎えて大丈夫だと思う。

オープン選手を打率.333という好成績で終えたブランドン選手

支配下再登録が発表されたブランドン選手

さて、打つ方ではブランドン選手が2安打1打点で最終戦もしっかりと良い働きをして見せた。これで開幕サードはブランドン選手でほぼ確定だと言えるだろうし、数日以内にブランドン選手の支配下登録も発表されるはずだ。

昨季までは怪我もあってなかなか試合に出られず、昨オフは戦力外と育成契約という経験もしてしまったわけだが、しかしそこで腐ることなく、真摯に野球に向き合い続けてきたことがようやく報われることになりそうだ。ちなみに現状では49番は空いているため、背番号は133番から、そのまま昨季まで背負っていた49番に戻るのだろうか。

戦力外を受けたのち育成契約になった選手で這い上がってきた選手はなかなかいない。投手陣では肘を手術して育成契約となり、その後支配下登録への復帰を目指している選手がライオンズには何人もいるわけだが、育成契約に切り替えられて数年経っても支配下に戻って来られない選手ばかりだ。

そのため育成契約への切り替えとなると、2軍で選手不足による試合中止にならないための人数合わせと考えられることもよくある。そして選手自身がそう考えてしまった瞬間に、その選手が支配下に戻れる可能性は限りなく遠ざかってしまう。これはライオンズのみならず他球団でも同じことが言えるわけだが、しかしブランドン選手はそこで決して諦めることなく、最下層である育成契約から短期間で這い上がってきた。

いや、もちろんまだ正式には支配下への復帰は発表されていないため、厳密にはまだ這い上がれてはいないわけだが、しかしブランドン選手が開幕までに支配下登録に戻ることは確実視されている。それどころか上述した通り、開幕スタメンサードもほぼ手中にしている。

そしてベンチではいつも隣同士で座っているブランドン選手の盟友、若林楽人選手に関しても、数日前の試合で4三振したあとはしっかりとバッティングを修正し、前回の試合、そしてこの日の試合でもしっかりとヒットを放っている。残念ながら初回にヒットを打った後の盗塁は刺されてしまったわけだが、しかし膝にはもうまったく不安はなさそうだ。

他の外野手候補が軒並み低調の中、若林選手はこの日の試合が終了した時点での打率は.194とはなっているが、打率がグングン上がってきての.194であるため、首脳陣への印象はかなり良いと言える。しかもこの日の試合ではリプレー判定でセーフに覆ったとは言え、ライトから素晴らしいバックホームを見せ、守備では相変わらず素晴らしいプレーを続けている。

開幕一番に関してはどうやら金子侑司選手が務めることになりそうだが、しかしもし金子選手の状態が落ちてきた時は、若林選手がいつでも一番に座れる状態まで調子は上がってきているようだ。ファンとしてはこの盟友ふたり、若林選手とブランドン選手を開幕スタメンで見てみたいという期待を大きく膨らませたい。

ブランドン選手、育成から支配下登録選手にスピード復帰!

と、そんなこと書いている最中にブランドン選手が支配下登録されることが渡辺久信GMから正式に発表された。オープン戦は打率.333で終え、守備でも三塁と一塁でそれぞれしっかりと活躍してきたため、誰もがブランドン選手の支配下復帰を疑うことはなかった。しかし実際に正式に支配下復帰が発表されると、ファンとしては非常に嬉しい。

なお背番号は、49番はブランドン選手にとって良くない番号だったということで、66番に変わるようだ。だが今季主力として一年間しっかりと仕事をすることで、今シーズン終了後にはさらに良い番号をもらえるよう頑張ってもらいたい。現状では背番号3が空いているため、その番号を狙っていっても良いと思う。

ブランドン選手は決して守備が巧い選手ではないが、しかし最低限のプレーはしっかりとこなすことができる。そのためバッティングでしっかりとアピールしていくことができれば、多少のエラーには目を瞑ってもらえるだろう。とは言えエラーは誰でもしてしまうものだ。源田壮亮主将でさえもエラーをすることがある。だからこそブランドン選手には守備でも消極的になることなく、バッティング同様果敢に攻めていくフィールディングを見せ続けてもらいたい。

そして何よりも心配されることは、ここ3年間ずっと苦しみ続けてきた怪我だ。股関節痛・内転筋痛を決して再発させることなく、コンディショニングには十分な注意を払って怪我さえしなければ、ブランドン選手は必ずや球界を代表するスラッガーへと成長していくだろう。

そのためにも2024年は重要なシーズンとなるため、まずはとにかく今季、怪我なく一年間一軍でプレーし続けるところから始めていってもらいたい。そして近い将来、若林選手と共にライオンズのスタメンには決して欠かすことのできない存在へとなっていってもらいたい。ブランドン選手、支配下再登録本当におめでとうございます!

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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