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2024年6月11日公開

三原脩監督の言葉を借りるならば今の弱いライオンズはアマチュア以下

埼玉西武ライオンズ vs 広島東洋カープ/1回戦 ベルーナドーム
1 2 3 4 5 6 7 8 9 R H E
Carp 0 1 0 0 0 0 1 0 0 2 7 0
Lions 0 0 0 0 0 0 0 1 0 1 5 1

継投●今井達也ジェフリー・ヤン松本航
敗戦投手今井達也 3勝3敗0S 2.29
本塁打佐藤龍世(2)
盗塁/高松渡(5)
失策元山飛優(3)

進塁打を打つ技術とそのために必要な考え方も持てていない源田壮亮主将

2ヵ月連続で8連敗を喫するというのはライオンズ史上初めての屈辱だったらしい。さらには同一シーズンで二度8連敗するというのも、黒い霧事件の渦中にあった1971年の西鉄ライオンズ以来となった。今日はルーキー武内夏暉投手の月間MVPが発表されたわけだが、その祝福ムードも長続きすることなく、ホームに戻った今日もライオンズはカープに敗れてしまった。

そして22の負け越しも、実に1979年の西武ライオンズ元年以来であるようだ。かつては球界の盟主とも呼ばれたライオンズではあるが、この惨状にはファンも目を覆いたくなる。だがそう嘆いたとしても打てていない打線が打てるようになるわけもなく、今日も佐藤龍世選手のソロホームランで1点を返すのがやっとだった。

ライオンズの打者陣はとにかく技術が足りない。特に源田壮亮主将だ。今日の試合での1打席目は、回の先頭打者陽川尚将選手がレフト前ヒットで出塁し、無死一塁という場面だった。チームとしてはすでに0-1と1点リードされている場面だったため、安易に送りバントをすることもできず、そんな中で源田主将の役割は最低限走者を二塁に進めることだった。

左打ちの源田主将の場合、ライト方向にゴロを転がすのが鉄則になるわけだが、それを打ちやすいのは真ん中よりも内角に入ってきたやや低めのボールだ。源田主将としてはそのボールを追い込まれるまでは待たなければならなかった。しかし源田主将は初球、外角低めのカットボールという最も引っ張るのが難しいコースのボールを引っ掛けて、まさにおあつらえ向きのショートゴロを打ち併殺に倒れてしまった。

このようなバッティングをしている以上、いくら守備が上手くても源田主将を一軍に置き続けるべきだろうか。もちろん二軍に調子の良い打者が豊富にいるというわけではないのだが、しかし守備が上手いだけで一軍に置いておくべきではないと思う。確かに源田主将の守備は超一流であるわけだが、しかしバッティング内容があまりにも酷い。

9回、やはり前の打者である陽川選手がヒットで出塁して二死一塁という場面では、3-1というカウントから内角のやや厳しいコースに落ちてきたフォークボールを打ってファーストゴロに倒れ、ゲームセットとなってしまった。このファーストゴロでは源田主将は一塁へのヘッドスライディングも見せたわけだがそれでも間に合わず、アウトになった後、源田主将はしばらくその場に座り込み立ち上がることができなかった。目には僅かに涙さえ浮かべていたようにも見えた。

そしてその姿を見ると7回2失点と好投した先発の今井達也投手が駆け寄り、源田主将の背中に手を回し慰める姿が見られた。そしてその時帽子を目深に被っていたのは、今井投手ももらい泣きしてしまったからではないだろうか。

このような友情シーンは本当に素晴らしいと思う。だがプロ野球である限り、進塁打さえ打てなかった源田主将は二軍でバッティングをやり直すか、一軍でプレーし続けながらも最低限バッティングの特訓はすべきだろう。そして打席でのボールの待ち方も、今一度コーチと相談しながら冷静に見直すべきだと思う。

今年41歳の栗山選手・中村選手だけがナンバー1と称されている現状

そして佐藤龍世選手がホームランを打ったこと以外では、打者陣では三番栗山巧選手と、五番陽川選手だけが気を吐いていた。栗山選手に関しては今日の2安打で交流戦通算335安打となり、歴代単独トップに躍り出た。ちなみに中村剛也選手も通算79本塁打と209打点は交流戦ではそれぞれ歴代1位の数字となっている。

だが今のライオンズには今年41歳になる栗山・中村両選手以外にナンバー1になれる選手がいない。それは投手陣にしても打撃陣にしても同様であり、これもまたチームが低迷している原因だと言える。今日のスタメンを見ても、源田主将は2021年に盗塁王を獲っているが、しかしその年は24個という低いレベルでの盗塁王争いだった。とは言え盗塁王は盗塁王であるわけだが、しかし今季ここまでの源田主将の盗塁数は4だ。ちなみにWBCで怪我をした昨季も5つに終わっている。

タイトルホルダーじゃなかったとしても、やはり何かで一番を狙いにいける選手がいなければチームの攻撃力は上がらない。山野辺翔選手や奥村光一選手も頑張ってくれているとは思うが、山野辺選手はかつて安定した打撃を見せられたシーズンは一度もないし、奥村選手や滝澤夏央選手のような育成上がりの小兵選手ばかりに頼ってもいられない。

陽川尚将選手

だがここに来て陽川選手が少ない出場試合数ながらもコンスタントにヒットを打ち始めているため、長打力もあることを考えれば、陽川選手を四番に据えてもいいのではないだろうか。やはり勢いがあって状態も良い長距離砲が四番に座っていると、軸ができることで打線も機能しやすくなる。

現状.197という打率に下がってきている中村選手に頼り続けるよりは、タイガース時代はロマン砲と呼ばれた陽川選手の覚醒に期待し、中村選手には五番あたりで陽川選手のサポートをしてもらうのが良いのではないだろうか。いくら不調とは言えホームランを打てて、今日も1打席目にはチャンスでアウトになりながらもレフトに良い打球を飛ばした中村選手が五番に座っていれば、相手投手も四番陽川選手に対し簡単にボール球を投げることができなくなり、ストライクゾーンで勝負していける分陽川選手の状態もさらに上げていけるはずだ。

渡辺久信監督代行は打線はコロコロ変えたくはないが、機能していないのだから変えざるを得ないというようなコメントをされていた。だが軸となるクリーンナップに関しては、栗山・中村・陽川という並びよりも、栗山・陽川・中村という並びの方が現状では繋がっていくと思う。そして栗山選手と陽川選手にヒットが出ているため、中村選手がチャンスで打席に立つ機会も多くなるはずだ。

渡辺監督代行のイメージ通り、早い回で打線が仕掛けていくためには一番二番がまた機能していない現状では、好調の栗山選手と陽川選手に三番四番を任せる方がチャンスメイクしやすと筆者は考えている。そしてそこから満塁のチャンスで五番を迎えられれば、満塁ホームラン22本と歴代ダントツトップの数字(歴代2位は15本の王貞治選手)を残している中村剛也選手がきっと大仕事をしてくれるはずなのだ。

チーム内競争を煽った渡辺久信監督代行と、それに応えた佐藤龍世選手

かつて西鉄ライオンズを黄金時代に導いた名将三原脩監督はこう言った。「アマは和して勝ち、プロは勝って和す」と。ライオンズの選手たちは非常に仲が良いイメージで、それは昨季までホークスでプレーをしていた甲斐野央投手もライオンズ入団時にそう言っていた。つまり三原監督曰く、今のライオンズはアマチュアのやり方だということだ。いや、和しても勝っていないのだからアマチュア以下と言うべきだろうか。

プロでは選手同士が仲良くしたところで勝てるようにはならない。そのやり方はアマチュア野球でしか通用せず、プロではチームメイト全員がライバルなのだ。誰かが怪我をしたり、風邪をひいたり、一軍登録を抹消されたりしたならば、他の選手はそれを密かに喜ぶべきなのだ。

レギュラーであれば「よし、ライバルが一人減った」と喜び、補欠であれば「よし、レギュラーが怪我をしてくれたからチャンスが増える!」と喜ぶべきなのだ。野球は戦争ではないないため、一軍登録を抹消された選手を心配せずに放っておいてもその選手が死ぬわけではない。

黄金時代のライオンズでは、肉離れをしてもレギュラーを奪われまいとし、脚をテーピングでグルグル巻きにして試合に出場し続ける選手もいて、当時はそれが当たり前の光景だった。ちなみにそれは辻発彦選手だったわけだが、当時絶対的なレギュラーだった辻選手でさえも、たった一つの怪我でレギュラーを奪われることに危機感を抱きながらプレーしていたのだ。

強いチームというのは得てして個性派集団であるケースが多い。そして個性がまったく異なる人間同士というのは、同じ輪の中にいてもそれほど親しくはならないことも多い。だがプロ野球ではそのような個性派集団が勝つことにより和していき、似た者同志の友情よりも強い絆を作れることがある。

今のライオンズの若手選手には個性的な選手が少ない。例えば蛭間拓哉選手岸潤一郎選手長谷川信哉選手という3人は左右の違いはあれどプレイヤーとしての個性が非常に似通っているし、育成出身の奥村選手と滝澤選手、さらには山野辺選手も選手としてのキャラクターが被っている。

ライオンズの若い世代の選手で今個性を発揮できているのは佐藤龍世選手と、若手とは言えないが陽川選手くらいではないだろうか。ただ佐藤選手はどんどん調子を落とし、打率はついに1割台まで下がってきてしまった。本来であればここに大砲として渡部健人選手が加わっていなければならないわけだが、毎年のように怪我をしたり、今年は体調不良もあり、シーズンを通して一軍にいられたことは未だない。

そしてここで必要になってくるのが嫌われ役を演じられるコーチの存在だ。そのコーチが個性が似た選手同士をけしかけてどんどん対決させていくべきなのだ。チーム内競争がないチームは強くなることはできないわけだが、それが今のライオンズにはないのだ。

例えば平石コーチなどが「ちょっとでも隙を見せたらすぐに柘植に代える」くらいのことを古賀捕手に言って、古賀捕手 の尻に火をつけていかなければならないのだ。だが今は火をつけるどころか、意図の見えないリードをしても、あり得ないレベルのパスボールをしても試合で起用され続けており、まったく競争の原理が働いていない。

そしてチーム内競争を経験していない選手は相手チームに勝てるはずもない。チーム内で勝つ経験をしていないのだから、他球団相手に勝つことなど到底できないことなのだ。だがチーム内競争を勝ち抜き、ペナントレースでも勝っていくことができればそこには勝者特有の和が生まれ、常勝球団へと進化していくことができる。

三原脩監督はこうも言った。「野球は筋書きのないドラマである」と。そう、ライオンズがこのまま最下位で終わる筋書きなどどこにもないのだ。この最後の交流戦をきっかけに、ライオンズは必ず浮上していくはずだ。だがそのためにはチーム内競争が必要であり、今日のようにエラーをした元山飛優選手選手を次の回からサッと引っ込めた渡辺監督代行の采配は、まさにその競争を煽る起用法だったと思う。そしてその起用法に見事応えたのが佐藤龍世選手だ。

しばらく低空飛行が続いていた佐藤選手ではあるが、今日途中起用に応えられたことを良いきっかけにし、再びクリーンナップ候補と呼ばれるような活躍を見せていってもらいたい。いつまでも栗山選手・中村選手に頼っているようでは、ライオンズが強くなることなどあり得ないのだから。

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THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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