2024年3月22日公開
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R | H | E | |
Swallows | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 3 | 8 | 0 |
Lions | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | × | 2 | 6 | 2 |
ベルーナドームで行われたこの日のスワローズ戦、先発マウンドに登ったのは初の開幕投手が決まっている今井達也投手だった。今井投手は3イニングスを投げて被安打0、奪三振2、失点0という完璧な内容で文句のつけようがなかった。これなら松井稼頭央監督も安心して今井投手に開幕戦を任せることができる。
今季ここまでの今井投手は、例年以上に制球力の良さが際立っている。この日も無四球だったのはもちろん、打者の外角低めへの精度が非常に高かった。ストレートにしても変化球にしても丁寧に低めを狙って投げているという印象で、ただ力任せに投げているのではなく、古賀悠斗捕手が出すサインの意図をしっかりと理解してクレバーに投げているようにも見えた。
それにしても、これだけのピッチングができる投手なのに、未だに投手主要タイトルを獲得したことがないというのは非常に不思議だ。昨季まではそれだけ安定感を欠いたり、好不調の波が大きかった今井投手だったわけだが、今季ここまでは春季キャンプ開始時から、非常に安定したピッチングをずっと続けている。その姿を見ていると、ライオンズにも久しぶりに絶対的エースの存在が誕生しそうな気配が感じられる。
このスワローズ戦で今井投手は僅か31球での降板となったわけだが、降板した後はブルペンに入って球数を稼いでいたようだ。今井投手は元々スタミナには問題がないため、今季ここまで見せてくれている安定感をシーズンを通してキープしていければ、このレベルの投手が最多勝争いに加わってこないはずはない。
今季はメジャー移籍を目指す髙橋光成投手投手が「圧倒的な成績を残してチームを優勝に導く」と語っていたわけだが、その髙橋投手は右肩の張りによりやや出遅れ、開幕ローテーションに加われるかどうかも不透明な状況だ。そんな状況の中見せてくれている今井投手の安定感抜群のピッチングは、ライオンズファンだけではなく、チームメイトや首脳陣も安心感を覚えているはずだ。
今井投手には最多勝どころか、是非とも20勝という数字を目指してもらいたい。ボールが暴れなくなった今季の今井投手のパフォーマンスであれば、20勝という数字は決して非現実的な数字ではないし、それを期待させてくれるだけのピッチングをここまでの今井投手はしっかりと見せてくれている。だからこそ筆者は今井投手にはただタイトルを獲得するだけではなく、その先の結果、つまり20勝や沢村賞というものも視野に入れながら、12球団ナンバー1エースとしてライオンズを2008年以来の日本一に導いてもらいたいと願っている。
一方リリーフ陣は、この試合に関してはやや不安を残す内容となった。まずジェフリー・ヤン投手だが、結果的には1イニングを打者4人、奪三振2、四球1、無失点という内容で投げ抜いたわけだが、制球があまりにも不安定だった。この日のピッチングだけで判断するならば、四球が1個だけだったというのが不思議なくらいの制球の悪さだった。
開幕を一週間後に控えた現段階でこのようなピッチングを見せているとなると、開幕一軍は間違いないとは思うが、僅差の試合で投げることは公式戦では減っていくのではないだろうか。対戦相手は、レギュラーシーズンではオープン戦以上に緻密な攻撃を仕掛けてくる。そして相手が制球難だと分かれば、その制球をさらに悪化させるための戦術も仕掛けてくるはずだ。
そのためヤン投手に関してはビハインドのゲームや、4点以上リードしている場面での起用が多くなるように思われる。そのようなやや楽な場面で場数を踏ませ、シーズン後半あたりで勝ちパターンに食い込んできてくれればいいのではないだろうか。
そして四番手として登板した平井克典投手と、五番手の佐藤隼輔投手がこの試合ではそれぞれ失点をしている。平井投手に関しては、エラーにはならないフランチー・コルデロ選手の拙い守備にも足を引っ張られ、3連打を含む4安打を浴びて2失点してしまった。
そして佐藤投手に関しては平井投手同様に先頭打者にヒットを打たれ、丁寧に送られ、後続にヒットを打たれてしまった。この試合の平井投手と佐藤投手に関しては、完全に相手がやりたい野球をやられてしまったという印象で、シーズンが開幕した後であれば、この流れをしっかり断ち切ることのできる切り替えを、打者間で見せていく必要があるだろう。
だが平井投手と佐藤投手に関しては経験値もあるため、あと一週間でしっかりと調整をしてくれると思う。だがヤン投手に関してはあと一週間では何も変わらないと思われるため、やはり起用法はオープン戦とは変わっていくはずだ。しかしそれでも奪三振を狙える場を与えてあげれば、もしかしたらヤン投手はそれでも最大限野球を楽しめるのかもしれない。
さて、打つ方に関しては金子侑司選手が今日もしっかりと1安打を放ち、打率.421という好調をキープしている。この調子を続けていれば、開幕1番はかなり高い確率で金子選手が務めることになるのだろう。
金子選手の調子が良い理由は、ボールがよく見えているためだと思われる。だがこれはいわゆる比喩ではなく、文字通り金子選手はボールを最後までしっかりと見続けているのだ。インパクトの瞬間で見ていくと、顔がしっかりとインパクトに向いており、ボールを正確に見極めやすい動きを見せている。
一方西川愛也選手のバッティングを見ると、インパクト時に顔がバックスクリーンを向いてしまっていることが多い。そのためボールを正確に見極められないだけではなく、バットスウィングの正確性も低下してしまっている。
だが金子選手はヒットを打っている時も凡打の時も、そして見逃す時も、目線だけではなく顔ごとしっかりとボールに向けているのだ。この姿勢はまさにボールに食らいつくためには持って来いの形となるため、金子選手にはぜひこのボールの見方をシーズンを通して続けていって欲しいと思う。そうすれば背水にして3割近い打率を残すことも可能なのではないだろうか。
そして最近、ようやくコルデロ選手に当たりが出始めたのは開幕に向けて良いニュースとなる。この日の試合でもライト線への二塁打とセンター前ヒットというマルチヒットを記録している。こうしてヒットが続いてくると、ホームランを量産し出す日もそう遠くはないと感じられる。
ただ、現時点では中村剛也選手の状態が良いため、首脳陣もコルデロ選手に対し慌ててはいないはずだ。仮にコルデロ選手が開幕してしばらくは低調だったとしても、コルデロ選手の状態が上がってくるまでは、中村選手に頑張ってもらえれば良いというオプションも持っていると思われる。
実際ここ数試合は中村選手の方がコルデロ選手よりも上位を打つことも多くなっているため、開幕以降も無理して急いでコルデロ選手をクリーンナップに戻すというよりは、しっかりと状態が上がってくるまでは六番あたりで場慣れさせていくことになるのではないだろうか。
しかしそれでもコルデロ選手の状態は少しずつ上がってきているため、本日現在の.194という低打率ほど心配する必要はなさそうだ。甘く入ったボールに関してはしっかりとハードヒットできているため、厳しいところに落とされたボールにもう少し慣れていければ、コルデロ選手の打棒はすぐにフルスロットルとなっていくだろう。