2021年2月10日公開
今季最も飛躍が期待される選手の一人が松本航投手だと言えるだろう。1年目は7勝4敗と期待通りの活躍を見せてくれたが、2年目の昨季は6勝7敗とやや伸び悩んでしまった。まだ3年目であるわけだが、しかし過去の実績を踏まえるならば2年連続で負け越しが許されるレベルのピッチャーではない。
昨季の松本投手に関して特筆するとすれば、やはり被本塁打が19本とリーグワーストだったという点だろう。昨季は20試合の先発で19本塁打を浴びてしまい、ほぼ毎登板ごとに本塁打を打たれているという計算になる。一昔前はライオンズでは岸孝之投手が非常に被本塁打が多い投手だったわけだが、今は松本投手がそのような存在となってしまっている。
松本投手の球種は主にフォーシームストレート、ツーシーム、カッター、カーブ、チェンジアップというところだろうか。ストレートやムーヴィング・ファスト・ボールに関しての完成度は非常に高いと思う。右打者の外角低めいっぱいに決まるストレートなどは、映像を見ていても本当に惚れ惚れしてしまう。
しかしそれでも被本塁打が多いのは、カーブとチェンジアップが全体的にやや高いということが影響している。遅いボールはしっかりと低めに投げていかなければ、力のあるストレートを高めで使いにくくなる。そしてストレートを高めに見せることが難しくなれば、変化球を活かすこともできない。
松本投手の場合、このカーブとチェンジアップという遅いボールをあとボール1〜2個分ずつ低くしていければ、被本塁打だけではなく、WHIPの数値も向上させていくことができるはずだ。松本投手のWHIPは2年間の通算で1.48という数字で、これは毎イニング1.48人ずつ走者を出しているということを表している。
松本投手が今季、初の二桁勝利をマークするためにはこの数値をまずは1.2台まで向上させたい。そのためにも必要なのが遅い変化球をもう少し低めに投げるための技術だ。
だが変化球が高めに抜けることが多かったということは、誰に言われるまでもなく松本投手自身が一番よく分かっているはずだ。ということはそれに関してオフの間にしっかりと修正してきているのだろう。
松本投手の力のあるストレートに加え、110km台のカーブや130km台のチェンジが低めに決まる精度が高まっていけば、松本投手のポテンシャルを考えれば10勝という数字はただの通過点にしかならないはずだ。
投球術に関してはまだまだ未熟だし、まだどちらかと言えばボールの力でバッターを抑えに行くことが多い。だが捕手陣が松本投手を今まで以上に上手くリードしてあげられれば、今季15〜16勝という数字も現実的になってくるだろう。
涌井秀章投手が去って以来、もう8年間もライオンズには絶対的エースの存在がない。つまりカードの頭で上位チームのエースと対戦をしても勝ち星を挙げられる投手のことだ。
涌井投手が去った後、岸孝之投手は2014年こそ13勝4敗と素晴らしい活躍をしたが、その後ライオンズの2年間では合わせて14勝しか挙げられなかった。菊池雄星投手にしてもホークス相手にまったく勝てないままライオンズを去っていった。
ライオンズはとにかく今、絶対的エースを育てていく必要がある。その候補となるのが髙橋光成投手、今井達也投手、そして松本航投手の3本柱だ。この3人の誰かが今後絶対的エースになっていかなければならない。
現状一歩リードしているのは、開幕投手最有力と言われている髙橋投手だろう。昨季後半戦の髙橋投手は西口文也投手コーチの指導により、力まずに投げる技術を身につけた。その技術を身につけたことによりまさにエース級のピッチングを立て続けに見せてくれた。昨季は8勝8敗という成績に終わってしまったが、しかし昨季後半のようなピッチングを続けていれば、髙橋投手ひとりで少なくとも5つ以上の貯金を作ることができるだろう。
その髙橋投手に負けていてはいけないのが松本投手と今井投手だ。現状では表ローテの一番手が髙橋投手になっていくわけだが、裏ローテの一番手がどちらになっていくのか、というのは今後非常に楽しみなポイントでもある。
松本投手と今井投手でレベルの高い裏ローテ一番手争いを繰り広げることができれば、髙橋投手の開幕投手の座さえ約束されることはなく、髙橋投手にも相乗効果を波及させていくことができる。
つまり松本投手がもう一段階上のレベルの投手になるということは、髙橋投手と今井投手ももう一段上に行かざるを得なくなる状況を作るということだ。このようにレベルの高いチーム内競争ができてくれば、今季は先発陣が脆弱だと言われることもなくなるだろう。
今季こそは投手力によって優勝していくためにも、松本投手の成長は不可欠ということになる。だが筆者は、今季はその期待を上回る活躍を見せてくれるはずだと信じ、いま松本投手に熱視線を注いでいる。