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2023年8月 7日公開

松本航投手は投球術を磨けば最多勝争いの常連になれる

ライオンズで最もしっかりしなければならない一人が松本航投手

松本航

ライオンズの中で、今もっともしっかりしてもらわなければ困る選手の一人が、やはり松本航投手だろう。今季は大卒5年目のシーズンで、キャリア二度目の二桁勝利が期待されていた。だが8月上旬の時点では3勝7敗と大きく負け越しており、防御率も4.45という不甲斐なさだ。

そして7月9日の試合で3回7失点という失態を演じてしまった直後、再調整を求められ1軍登録を抹消されてしまった。しかし松本投手はファームで投げるレベルの投手ではない。実際ファームでは抹消後3試合で投げているのだが、どの登板でも相手チームをしっかりと抑え、8月3日のイースタンリーグ千葉ロッテ戦では9回1失点と好投し、完投勝利を挙げている。

つまり松本投手はファームでは圧倒的な実力差を見つけているということであり、やはり1軍で投げなければならない投手であることがよく分かる。

松本投手の悪い癖としては、打たれ始めるとピッチングが単調になることだ。ボールがストライクゾーンに集まるようになり、簡単に連打を許してしまうようになる。

本来であればヒットを打たれた後は警戒して、四球を出さない程度に際どいところを攻めて併殺打を狙いたいところなのだが、松本投手の場合は時々力任せに抑えに行ってしまうことがあるのだ。そしてこの姿はルーキーイヤーから見られるもので、首脳陣としても何とか改善してもらいたい点だと言える。

松本投手の情報が完全に漏れていたバファローズ戦

3回7失点KOを喫したのはバファローズ戦だったわけだが、この試合では出場していなかったものの、バファローズには森友哉捕手を通じてライオンズの情報が流れてしまっている。つまり松本投手の癖などもすべて森捕手によってバファローズナインに共有されてしまっているのだ。

ライオンズは今季以降、それを前提にしてバファローズ戦を戦わなければならないわけだが、7月9日の松本投手はそれがまったく頭に入っていなかったと思われても仕方ない内容になってしまった。

以前、正捕手や主戦投手がライオンズからホークスにFA移籍するケースが重なった後、ライオンズは完全にホークスにカモにされるようになった。この時は細川亨捕手からライオンズ情報がホークスに流れてしまったわけだが、捕手の同リーグへの移籍は本当にダメージが大きく、渡辺久信GMとしては何としても避けたかったはずだ。

そして近年、ライオンズは比較的バファローズ戦を得意としていたわけだが、今季はここまでバファローズに対し5勝12敗と大きく負け越している。チームの負け越しは現在10なのだが、バファローズ戦だけで7つも負け越してしまっているのが現状だ。これもはやり正捕手による情報流出の影響だと考えるのが自然だろう。

そのため松本投手としてはバファローズに対し、昨年とはまったく違うパターンのピッチングを見せる必要があった。だがそれができず、バファローズが森捕手から得た情報通りのピッチングをしてしまい、僅か3イニングスで7点も失ってしまった。

ピッチャーとキャッチャーは、ピッチャーがどんなボールを投げたいのかをしっかりと打ち合わせして試合に挑んでいる。この試合でももちろん松本投手は古賀悠斗捕手と打ち合わせをしているわけだが、しかし古賀捕手も上手く松本投手をリードすることができなかった。

これがベテラン捕手であれば、バファローズの裏をかくような配球でリードすることもできるのだが、しかし古賀捕手は実質1軍は1年目の捕手だ。この経験の浅さと24歳という若さでは、今季27歳でプロでは5年の実績がある松本投手を上手くリードすることは難しいのかもしれない。

もちろんバファローズに情報が流れていない状況であれば、古賀捕手も上手くリードしてくれるとは思う。だがバファローズには森捕手を通じて情報が流れているだけではなく、チームを率いるのは名捕手として鳴らした中嶋聡監督だ。情報が流れている上に戦上手の中嶋監督が相手では、古賀捕手の若さではまだ難しいところが多いはずだ。

だからこそ本来であれば年長者である松本投手が古賀捕手を引っ張らなければならなかったわけだが、しかしいつもの悪い癖を出してしまい、3回KOという三本柱としては目も当てられないような内容になってしまった。

松本航投手に今必要なのはこれ以上の球威よりも投球術

松本投手はもしかしたら「良い球を投げれば抑えられる」と考えているのかもしれないが、実際にはそうではない。ホークスの和田毅投手を見てみれば分かる。彼のストレートは遅いし、魔球と呼ばれるような強烈な変化球を持っているわけでもない。だが投球術によって日米通算160勝を挙げており、42歳となった今季も現時点では松本投手を上回る5勝を挙げている。

ピッチングの極意とは、バッターが打てないボールを投げることではない。これが通用するのはスーパーエースと呼ばれる一部の投手だけだ。一般的な、最多勝争いに絡めるか絡めないかというレベルの投手の場合は、打者が得意とするコースの近くにある苦手なコースを、「得意なコースに来た」と思わせながら上手く打たせられるかが鍵となる。そしてそれが非常に巧いのがホークスの和田毅投手というわけだ。

松本投手の場合、大谷翔平投手のような豪速球があるわけではないし、西口文也2軍監督がかつて投げていた魔球と呼ばれるようなスライダーを持っているわけでもない。となるとやはりもう少し走者が出た後での制球力を磨き、上手く併殺打を打たせる投球術を身につけていかなければ、この先もきっと同じ結果を繰り返すことになってしまうだろう。

だが松本投手のストレートには並以上の力がある。それは確かだ。この力のあるストレートを上手く見せながら、ツーシームやカッターで上手くバットの芯を外せるようになれば、松本投手は必ず最多勝争いの常連に加わることができるだろう。

もし今ここに岡田雅利捕手がいれば、バファローズ相手でもきっと上手く松本投手をリードしてくれていたはずだ。だが残念ながら岡田捕手はまだリハビリ段階にあり、いつ1軍に戻って来られるのかという先行きはまだ不明だ。

だからこそ松本投手は自ら考え、力ではなく頭で勝つ方法を切り開いていかなければならない。並以上に力のあるボールを投げられる松本投手なのだから、そこに加えて投球術をもっと磨くことができれば、間違いなくライオンズの次期エース候補に名を連ねてくるはずだ。

そのためにも松本投手には、次の1軍復帰登板では力に頼るのではなく、頭脳で打者を抑えるという今までとは違った姿を見せてもらいたい。そうすれば松本投手の実力であれば、HQSなど毎試合簡単にクリアしていけるはずだ。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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