2021年2月14日公開
今後ライオンズが新たな黄金時代を築き上げていくためには、森友哉捕手がもう一段階も二段階も上のレベルの捕手になっていかなければならない。森捕手の進化なくして、黄金時代の再来もないだろう。
では森捕手はどのような点で進化していくべきなのか?まず挙げなければならないのは守備力だろう。森捕手は2019年は9失策で捕手としてはリーグワーストだった。2020年は7個まで減らしたわけだが、しかし出場試合数で換算すると2019年は15試合に1個、2020年は14.9試合に1個という割合で、実質的には改善されていない。ちなみに2020年のホークス甲斐捕手は34.7試合に1個の割合で、森捕手の半分以下という少なさだった。
しかしこの守備力に関しては、森捕手も自主トレから春季キャンプにかけて徹底的にトレーニングしているようなので、今後は目に見えて改善されていくはずだ。
そして打撃に関しては、2019年はMVPを獲得するほどの大活躍だったわけだが、2020年はすべてにおいて数字を大幅に落としてしまった。しかしこれは対戦相手からのマークが厳しくなったことが大きく影響したと思われる。他球団からしてもさすがに優勝して首位打者を獲得した打者を、翌年ノーマークすることはない。他球団に徹底マークされたことにより数字を落としてしまったというのが2020年だった。
だが2021年は森捕手もその辺りはしっかりと対策してくるはずだ。2020年のデータはライオンズ側にも明確に出ているはずであり、そのデータは森捕手の頭にもすでに入っているはずだ。昨季はどのような攻められ方をして、どのように打ち取られたのか。そのプロセスと結果を上回る対策をすでにしているはずであり、バッティングに関しても今季は2020年のような数字にはならず、再び不動の3番打者としてチームを牽引してくれるだろう。
さて、ここまではあくまでも一般的なことを書いてきた。しかしここからは筆者独自の考えを書いていきたい。一体どうすれば森捕手は正捕手としてさらに進化できるのか?その答えは、投手を育てられる捕手になれるかどうかだ。
投手を育てる捕手、と書くだけではあまりにも曖昧であるわけだが、具体的には森捕手から投手に対しどれだけ要求を出せるか、ということだ。しかし要求とは決して配球のサインに関する話ではない。
例えば今井達也投手は何年間もなかなか殻を打ち破れずにいる。その今井投手に対し、正捕手の森捕手から見て勝てる投手になるためには一体何が必要なのか、ということを具体的かつ理論的に伝えられる捕手になれるかどうか、ということだ。
昨季の今井投手はカウントを不利にして失点を重ねてしまう場面が目立ったわけだが、制球力に関しては今井投手自身が磨いていかなければならない。森捕手が今井投手に伝えていかなければならないのは、例えば「こういう変化球があるともっと組み立てが楽になる」「ストレートの球速があと1〜2種類増えるとカウントを不利にする前に追い込みやすい」などの、具体的な捕手目線からの意見だ。
高校野球であれば投手のワンマンチームでも勝つことはできるが、プロ野球ではそのような野球は通用しない。どんなに素晴らしいピッチャーだったとしても、バッテリー間のコンビネーションが上手くいかなければ試合を組み立てることはできない。
捕手の役割は、投手に気持ち良く投げさせることだけではない。投手の自我を受け入れつつも、捕手としてどのようなボールがあると試合が組み立てやすくなるのか、ということをどんどん投手に伝えて意見交換していかなければならない。
ここで重要なのは捕手の意見を投手に押し付けるということではなく、あくまでも捕手目線でチームの勝利を優先させながら、理論的に意見を伝えることにより、投手が納得した上で森捕手の意見を受け入れやすくするというコミュニケーション能力だ。
そして適切なコミュニケーション能力には語彙力も必要となる。言葉を知らなければ適切なコミュニケーションを取ることも難しくなるため、森捕手は野球のトレーニングだけではなく、コミュニケーション能力を高めるためのさらなる努力も必要になってくるかもしれない。
多くの野球評論家が、森捕手は打撃を活かすためにコンバートすべきだと言う。しかし筆者はそうは思わない。森捕手は捕手のまま主力打者の座を担い続けるべきだ。かつての野村克也捕手のように。
昨季までの森捕手のバッティングは、ボールの面をバットの面で叩いて弾丸ライナーを打っていくというスタイルだった。だが今季はこのスタイルを少し変えていくようだ。具体的にはバットにボールを乗せる感覚でボールにバックスピンをかけ、マグナス力によって飛距離をアップさせていくスタイルを目指しているらしい。つまりは中村剛也選手と同じスタイルだ。
森捕手は2019年の23本塁打が自己最多となるわけだが、打球にバックスピンをかけられる打ち方にシフトチェンジしていければ、これまでは大きな外野フライに終わっていた打球が次々のスタンドインしていくようになるだろう。すると40本塁打という数字も見えてくるかもしれない。
さらに付け加えると、打球にバックスピンをかけられる打ち方というのは、変化球が沈んでボールがバットの下に入った時、トップスピンをかけやすくなる。すると球足の速いゴロがあっという間に内野手の間を抜けていくようになる。
身長が高くなく、さらに重心が非常に低いフォームで打つ森捕手のストライクゾーンの上下の幅に非常に狭い。投手としてはストライクゾーンが狭くなると非常に辛くなり、ボールが先行し出すとどうしても真ん中に集まりやすくなる。
そのような状況を作ることのできる森捕手は、他の打者以上に甘いボールだけを待ちやすい状況で打席に立つことができる。その結果安定したミート力を維持することができ、2019年に首位打者を獲った時のようにヒットを量産しやすくなる。
そこにさらにボールにスピンをかけられる技術が加われば、打率を残しながらも長打力をアップさせられるようになり、近い将来、三冠王を目指せるような数字を残すこともできるのではないだろうか。
近年ライオンズでは山川穂高選手が三冠王という言葉を使ったことがあるわけだが、筆者個人としては山川選手よりも、森捕手の方が三冠王に近いのではないかと考えている。
野村克也捕手は30歳になるシーズンに三冠王に輝いた。そして森捕手は今季まだ26歳で、これからいよいよ全盛期に突入していくような年齢であり、捕手としても打者としても今後さらに進化していくことができる。
だからこそ筆者は今思うのである。森友哉捕手は捕手として近い将来三冠王になるような選手になるだろう、と。