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2024年10月12日公開

10年で7回最下位に沈んだ頃のベイスターズのようになってしまった昨今のライオンズ

他球団と比べまったく練習をしなくなったライオンズナイン

他球団と比べまったく練習をしなくなったライオンズナイン

筆者は以前、まだ三浦大輔監督が現役だった頃の勝てない時期のベイスターズのキャンプ、そしてAクラスの常連だった頃のライオンズのキャンプに同時期にお邪魔したことがある。その時強く感じたのは、ベイスターズの練習量が非常に少ないということだった。

特に投手陣は顕著で、ベイスターズの中で最も走ることができたのが大ベテランとなっていた三浦大輔投手で、その他の投手は5kmという距離でさえまともに走ることができていなかった。基本的に筋トレで体を作ることに主眼を置き、心拍数や肺活量、走るという全身運動がほとんど蔑ろにされていた。

そのためその頃のベイスターズというのは、10年間で7回最下位に沈むようなチームだった。もし最優秀防御率を獲得した頃の、まさに全盛期の三浦投手が他球団でプレーしていたならば、キャリアハイが12勝で留まることはなかっただろうし、通算172勝という数字も軽く200を超えていただろう。

今のライオンズは、筆者が見たその頃のベイスターズのようだ。投手も野手も筋トレ信奉者が非常に多く、心拍能力を高めるためのトレーニングや、投げ込み打ち込みの数も圧倒的に不足している。だがこれは筆者の個人的主観に基づく感想ではない。赤田将吾コーチも「選手が全然練習をしてくれない」と実際に愚痴を溢しているため、今のライオンズの選手たちが練習をしないというのは紛れもない事実だ。

もちろん練習をしないと言っても、まったく練習をしないという意味ではない。並レベルの最低限の練習量、つまりやらされる練習をこなす程度の量は行っている。だがそれで活躍できるようになる程プロの世界は甘くはないし、実際にここ2年のライオンズの選手たちのプレーの質を見れば、他球団の選手たちと比較をすると練習量が十分ではないことは誰の目にも明らかだ。

だがこれはライオンズだけの問題ではない。例えば他球団には不調の選手が居残り練習を課せられても、美容院の予約があるからと言ってそれを拒否する選手さえもいる。そして今オフは昨季までにチームを三連覇に導いた名将中嶋聡監督が勇退することになったわけだが、その原因も現在のバファローズの選手たちが動いてくれない、というものだった。

例えばイニングの攻守交代時にダラダラと歩いて戻ったり、中嶋監督が猛抗議をしている最中に選手がダグアウトで談笑したりといった具合だ。中嶋監督は決して「山本由伸がいないから勝てない」と考えたのではなく、あくまでも「今のバファローズナインの慢心では勝てない」と考え、ユニフォームを脱ぐ決断をされたのだ。

今季のバファローズとライオンズの状態は非常に似ていた。だが根本的な部分で唯一異なっていたのが、バファローズナインには三連覇という慢心がそのような怠惰を生み、ライオンズナインの場合は戦い方を知らないためにアマチュア時代のノリで野球をやっていたという点だ。

筆者が最も尊敬する野球人は三原脩監督であり、この場でも三原監督の言葉を幾度も紹介してきた。そして渡辺久信GMが退団を発表した際、その渡辺GMも三原監督の、「アマは和して勝ち、プロは勝って和す」という言葉を用いることで残していくライオンズナインを最後まで鼓舞しようとした。

だが残念ながらライオンズナインは笛を吹いても踊ることはなく、今季もただただ同じミスを最初から最後まで繰り返し続けた。そして松井監督から渡辺監督代行にスイッチした際、ライオンズナインは異例とも言えるシーズン中のチームバッティング練習を課せられたわけだが、果たして何人の選手がこれを恥ずべきことだと感じながら取り組んでいたのだろうか。

すっかり腑抜けてしまった若獅子は今すぐ千尋の谷に落とすべし

さて、プロ野球は球団数を増やすべきだと言われて久しい。これは楽天球団が誕生した際の球界再編問題時にも遡る話であるわけだが、古田敦也選手会長が先頭に立ちストライキを実行することで球界再編、つまり球団数を減らすという決断がなされることは防がれた。この出来事以降特に、プロ野球は球団数を逆に増やすべきだと言われ続けている。

しかし筆者個人の意見としてはプロ野球のエクスパッション(14球団、16球団構想)には反対だ。その理由は今季のライオンズを見ればお分かりいただけると思うが、僅か12球団しかないのにも関わらずライオンズの若手選手たちのプレーのクオリティは非常に低く、しかもそれはライオンズだけには留まらないからだ。

むしろ、今の選手たちのプレーの質を見る限りでは球団数を減らすという判断もまったくの愚策とは思えないほどだ。筆者個人は球団数を減らすべき、とまでは考えていないが、しかし球団数が減ったとしても仕方がないと思えるほど現代の若手選手たちのプレーのクオリティは低い。

もちろん全部が全部ではないし、高卒でも大卒でもスター選手に引けを取らない努力を続けている選手もいる。だが少なくともライオンズの若手選手の中にそのような選手は見当たらない。例えば駆け出しの頃の栗山巧選手のように、毎日誰よりも早くバットを振り始め、誰よりも多く、誰よりも遅くまでバットを振り続けるような選手が見当たらないのだ。

例えば蛭間拓哉選手は栗山選手の愛弟子とも言える存在であるわけだが、蛭間選手を見ていると、もしかしたら40代の栗山選手と同じ量の練習をすることで満足しているのではないだろうか、と見えてしまうことがある。だがプロ入り間もない若い選手が40代の選手と大差ない練習量をこなすだけでは、当たり前だがスター選手へとのし上がることはできない。

蛭間選手は、40代となった栗山選手の2倍3倍以上の練習量をこなすことによって、初めて駆け出しの頃の栗山選手に追いつくことができる。アスリートというのは競技の種類にかかわらず、20代前半までしかできない練習というものがあり、それを死に物狂いで日々こなしていくからこそ、24〜25歳あたりで開花することができる。日本には「若い時の苦労は買ってでもしろ」という言葉があるわけだが、それをまったくしていないのが現代の若獅子たちだ。

すっかり腑抜けてしまった若獅子たちの目を醒まさせるにはいくつかの方法があるわけだが、やはり獅子であるからには千尋の谷に突き落とすのが一番手っ取り早い。秋季練習、秋季キャンプではとにかく過酷な練習を課し、それに付いて来れれば来季は期待を持てるし、付いて来れないのであればトレードや現役ドラフトなどでどんどん放出してしまうべきだ。そのような血の入れを行うためにも、西口文也監督はこの秋は選手たちを厳しい目で篩にかけていかなければならない。

だがそれは西口新監督も十分に承知していることで、西口監督は鳥越新ヘッドコーチに対し、「自分以上に選手を厳しく鍛え上げて欲しい」というコメントをしている。西口監督も厳しさを持った指導者ではあるが、それ以上に厳しくという注文を出しているところを見ると、恐らくライオンズにとってこの秋は地獄の秋となるのだろう。

渡辺久信GMにはできなかった断行を期待したい飯田光男球団本部長

一昔前までは、ライオンズというチームは12球団の中で最も練習量が多いチームだった。そしてその練習量や練習スタイルに関しては、広島カープがライオンズをロールモデルにしていたほどだ。ちなみに一昔前というのは細川亨捕手が正捕手を務めていた頃の話で、それほど遠い過去の話ではない。

細川氏自身も、すっかり練習をしなくなってしまった今のライオンズの姿に驚いている一人だ。やはりライオンズには厳しい練習を自発的に行っていた時代を知る、細川亨氏と同時期に活躍した指導者が必要だ。それも現役時代に圧倒的な成績を残しているコーチが望ましい。その訳は昨日のコラムでも書いた通り、ライオンズの中にはコーチの現役時代の成績を見て話をする者がいるからだ。

例えば野村克也監督に「名捕手」と言わしめた細川氏がバッテリーコーチになれば、どんな厳しい練習を課したとしても文句を言える捕手などいはしない。そして細川氏の捕手としてのスキルを目の当たりにすれば、ライオンズの捕手陣もいかに自分たちのレベルが低いのかを思い知ることになるだろう。そもそも筆者に言わせれば、古賀悠斗捕手はまったく日の丸を背負うレベルの捕手ではないわけだが、しかし日本代表に加わったことで古賀捕手にもやはり少なからずの慢心はあったのではないだろうか。

西武球団はコンプライアンスを重視するあまり、それに雁字搦めにされて弱体化して行ったという側面も持つ。だがライオンズがここまで軟弱になってしまった今、コンプライアンスばかりを声高に叫ぶことはもうやめるべきだろう。もちろん体罰や暴言というのは必要ないわけだが、しかし選手が立ち上がれなくなるほど厳しい練習を課すことができる指導者は絶対に必要だ。

だが今厳しい練習を課したところで、若獅子たちはあっという間に根を上げて立ち上がれなくなるだろう。それでもそこから何度でも立ち上がってくれば期待を持てるし、もう一度立とうとしないのであればどんどん切り捨てていくべきだ。それこそくふうハヤテやオイシックスの、ファームで死に物狂いで12球団入りを目指す選手たちとの大量入れ替えを考えてもいいだろう。

さて、来季以降のライオンズはGM制度が取り外され、渡辺久信GM就任以前と同様に、球団本部長がGMの職責を担う形に戻る。つまり飯田光男球団本部長兼編成統括がGM職を務めるということだ。飯田球団本部長には前田康介氏や鈴木葉留彦氏のように選手の心を逆撫でするようなことはせず、渡辺GMが築き上げたスタイルを踏襲しつつも、渡辺GMにはできなかった選手たちに対する非情宣告をできる球団本部長としての活躍を期待したい。

渡辺GMは人情派のGMであり、ドラフトなどで獲得した選手を本当に大切にするGMだった。だがその反面思い切ったトレードができなかったという弱点もあったため、飯田球団本部長には渡辺GMができなかった大胆なトレードもどんどん仕掛けていってもらいたい。そして新任コーチたちと共に、すっかり負け癖が付いてしまったライオンズの血の入れ替えを断行してもらいたい。

ライオンズの問題は外国人打者の不調だけではなく、根本的には上述したような笛を吹いても踊らない若獅子たちに問題があった。そもそもライオンズというチームはかつては純和製オーダーでも十分に戦うことができていた。だが今それがまったくできなくなったのは、まさにその若獅子たちがすっかりアマチュア化してしまったからだ。

そしてそのアマチュア集団をプロ集団に変えるためにも、西口監督と新任コーチたちに課せられる使命は重い。そして飯田球団本部長には西口監督らが野球だけに集中できるように、今まで以上の引き締め役としての働きを期待したい。それこそ役割を果たせない選手たちがトレードに出されることに怯えるような厳しい決断も今となっては必要となるだろう。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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