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2024年11月 1日公開

西武合流初日から外崎選手の弱点を見抜き徹底指導をして見せた仁志敏久コーチ

自らが置かれた状況をしっかりと理解し言葉にもできる西川愛也選手

自らが置かれた状況をしっかりと理解し言葉にもできる西川愛也選手

キャンプ中に語った西川愛也選手のコメントが素晴らしかった。「実力で出た104試合じゃない。他球団なら1軍にすらいないかもしれない」、というコメントがそれなのだが、これをしっかりと自覚することは意外と難しいし、しかもこれをしっかりと自覚し言葉にできる西川選手は、プレー面以外でも今季は大きく成長したと言えるのではないだろうか。

今季の成績は打率.227、本塁打6、打点31、盗塁8、出塁率.263という成績だった。このあたりの数字に関しては一軍レベルで言えば平均未満となるわけだが、しかし今季の西川選手は得点圏打率が.347と素晴らしかった。今季チャンスでは79回打席に立ち、72打数25安打、1本塁打、23打点という成績だった。

今季の通算打率が.227で得点圏打率が.347なのだから、どれだけチャンスに強かったかがよく分かる。今季は後半戦からは三番を任される試合が続いたわけだが、もし一番二番でもう少しチャンスメイクできていれば、西川選手はもっと面白い存在になっていたのではないだろうか。

秋季練習でも徹底的に扱かれていた西川選手は、今ライオンズの打者陣の中では最も成長が期待されている選手の一人だ。今季に関しては確かに実力で掴んだスタメンの座ではなかった。だがチャンスでの強さと後半戦での成長をそのままの勢いで来季に繋げることができれば、来季は実力でスタメンの座を手にすることができるだろうし、レギュラーと呼ばれるようにもなるだろう。

今季の西川選手の打率が.227で留まった理由は、やはりボール球に手を出すことが多かったからだろう。もしくはボール球とまでは行かなくとも、早いカウントでボール臭い難しい球に手を出すことが多かった。そのため3ボールまで行くことが非常に少なかったのだ。

例えば今季345回打席に立った佐藤龍世選手は、45回3ボールまで持っていっている。一方西川選手は335回と佐藤選手とほぼ同数打席に立ち、3ボールまで行ったのは僅かに19回のみと佐藤選手の半分にも満たなかった。来季西川選手が打率を上げられるかどうかはスウィングスピードのアップと、早いカウントで難しいボールを見送れるかどうかにかかっていると言える。

そしてライオンズには佐藤龍世選手だけではなく、栗山巧選手というずば抜けた選球眼を持つ選手もいる。彼らから選球眼をアップするためのコツを学ぶことができれば、西川選手が不動のレギュラーとなる確率は飛躍的に上がるだろう。

また、西川選手は上述の通りチャンスではよく打っていたわけだが、走者がいない場面での打率は.177と非常に低かった。選球眼が良くなれば走者なしの場面でヒットだけではなく、四球で出塁してチャンスメイクすることもできる。もし来季も四番五番の前の三番を打つことになるのであれば、一番二番でチャンスメイクできなかった時は三番の西川選手がチャンスメイクする役割を担う必要がある。そしてそのためにも西川選手にいま最も必要なのが選球眼の向上ということになりそうだ。

ライオンズ合流初日から外崎選手の弱点を見抜き徹底指導をして見せた仁志敏久コーチ

ライオンズは秋季練習を終えて今は秋季キャンプに突入しているわけだが、若手選手に混じって南郷で徹底的に鍛え直しを受けているのが外崎修汰選手だ。通常秋季キャンプはベテランは免除され、所沢で自分のペースでトレーニングに励むことが許されるわけだが、しかしこの秋の外崎選手は南郷送りとなっている。

キャンプ初日から仁志敏久コーチから股関節の使い方を指導され、そして昨日も西口文也監督から股関節を使えていないから軸脚が不安定になっているという指摘を受けている。筆者は野球のプロコーチで、プロ野球選手の動作改善サポートも多数行ってきたわけだが、スポーツではとにかく重要なのが股関節なのだ。

股関節というのは下半身と上半身の繋ぎ目であり、ピッチングでもバッティングでもモーションの中で股関節が機能していないと、下半身の力がすべて股関節で止まってしまい、その結果上半身だけでプレーしなければならなくなる。外崎選手の好不調の波が大きいのにもここに原因があり、無意識に股関節を上手く使えている時は面白いようにヒットを打つのだが、股関節が不安定になってくるとあっという間に不振に陥ってしまう。

そして外崎選手が股関節を上手く使えていないということを、ライオンズへの合流初日、秋季キャンプの1日目で見抜いた仁志コーチの指導スキルは筆者が考えていた以上に高そうだ。最近2年で打撃コーチを務めた嶋コーチ、高山コーチの指導力には2年間疑問符が付きっぱなしであったわけだが、仁志コーチは初日から選手の弱点を指摘し、そこを論理的に修正できるようサポートしてくれている。

ちなみに鳥越裕介ヘッドコーチは日本シリーズの解説の仕事があるらしく、秋季キャンプに合流するのは日本シリーズ後ということになっている。また、立花義家打撃コーチに関しても韓国での指導期間がまだ少し残っており、それを終えてからの秋季キャンプ合流という予定だ。

この二人が合流するまでは打撃指導に関しては仁志コーチが中心となっていくわけだが、日本代表コーチやベイスターズの二軍監督を務めてきた実績はやはり伊達ではない。そして現役時代は打率3割にこそ一度も届かなかった仁志敏久選手ではあるが、通算では1591本のヒットを放ったジャイアンツの名核弾頭だった。さすがにこれだけの実績を持っている仁志コーチであるため、ライオンズの若手打者たちも今後は緊張感を持ってもっと打撃コーチの話に真剣に耳を傾けるようになるのではないだろうか。

野球の練習というのはただ数をこなすだけではダメだ。目的を持って理論的に練習に取り組まなければ、バッティング練習がバットを振るためのただの筋トレにしかならないこともある。そもそもライオンズの打者陣は、OBたちが嘆息するほど練習量が減っている。この練習量を常勝時代同等に戻すためにも鳥越コーチ、立花コーチ、そして仁志コーチの厳しい指導には大きな期待を寄せていきたい。

正直なところ筆者は、今季の歴史的大敗を喫したライオンズを西口監督に託すにはまだ早すぎるのではないだろうかと考えていた。だがこれだけ強力なコーチ陣を集められた今の状況を見ると、ライオンズは来季からでも今季とはまったく違う姿を見せるのではないかという期待が膨らんでくる。仁志コーチの近年のライオンズでは見られなかった理論的指導を見ていると、不思議と自然にそう思えてくるのである。

THE埼玉西武ライオンズガゼット筆者/カズ
筆者 2010年1月よりパーソナルコーチとしてプロ野球選手のサポートを行うプロフェッショナルコーチ。 選手の怪我のリスクを正確に分析し、怪我をしないフォームに変える動作改善指導が特に好評。 このブログではプロコーチ目線でライオンズについて冷静に、そして愛を込めて書いていきます!
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